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~迷子12~
それにしても早い、いや、早すぎる。しがみついていないと振り落とされてしまう。狼の毛をグッと握り、必死でしがみつく。スピードはどんどん上がっていく。小さな狼たちはついてこれずに小さくなっていく。この早さはまるで風、涼やかなそよ風ではなく、荒々しく吹き荒れる暴風。毛を掴んでいる手が限界に近づいてきた。振り落とされる。そう確信した時狼が不意に立ち止まる。なぜ立ち止まったのか…その原因を探るため、顔を上げる。
驚いた…目の前に広がる景色は、お城だ。それにかなり大きくて立派だ。狼が城を築くなど聞いたこともない。ここは本当に私のいた世界とは別の世界なのだろうか。ますます不安が増していく。私はとんでもないところに迷い込んでしまったのではないだろうか。まだそうと決まったわけではない。自分を落ち着かせるため、自分に言い聞かせる。こんな非現実的な事が起きるわけがない。これほどまでに知能を持った狼だ。人間を欺き、隠れることだって出来るだろう。そう信じるしかない。