~迷子11~
不安もあるが、今は信じるしかない。おじいちゃんも言っていた。人の好意には、感謝の気持ちを持って甘えなさいと。それに食べるのであればわざわざこのような回りくどいやり方をしなくてもいつでも捕食できる。今私が食べられていないのが、信じても良いという何よりの根拠になる。
私の答えを聞いた狼が顔を近づけてくる。目の前で見るとすごい大きさと迫力だ。暗くてよくわからなかったが、間近で見るととても綺麗な狼だとわかる。銀色でとてもつやつやとした体毛、目は黄金色をしている。明るいところで見ると見とれてしまうだろう。
そうか。よかった。では、私の背に乗れ」
そう言うと狼は私が乗りやすい位置まで姿勢を低くする。緊張と恐怖、その二つの感情が残っているが、今は腹をくくるしかない。勢いよく狼の背に飛び乗る。被毛は驚くほど柔らかく、とても触り心地がいい。犬で例えるのならばポメラニアンだ。長くふわふわとした被毛、大きさ、見た目からは全く想像もつかない。あまりの意外さにクスッと笑ってしまう。さすがは狼だ。私の行動を見逃さなかった。少しむすっとしたのか一度首を振る。そして立ち上がり一気に走り出す。それを見た小さな狼たちも立ち上がり後を追う。