ぬーりーかーべー
もしも目の前に突然血塗れの男の顔が現れたら、普通の人は驚くだろう。
「……」
しかし生憎と俺は普通の枠からはみ出してしまっているわけで、目の前のそれを見て最初に思ったのは「またか」ということだった。
授業が終わり昼休みになるなり現れたのは、ニヤニヤと笑みを浮かべながらこちらを見てくるおっさんの生首。
何故血塗れの癖に凄みもせずに人を小馬鹿にしたように笑っているのか。
喧嘩を売っているのだろうか。
「望月ー? 飯食わねえの?」
「……いや。食べるよ」
クラスメイトの男子、半藤の声に答えながら左手で軽く払うと「ああ~ん」と気が抜けるような声を出しながら吹っ飛んでいくおっさん生首。
そのまま窓まで飛んでいくと、突如飛来したカラスに捕まり「ひぇあー!?」と悲鳴をあげながら連れ去られていった。
……カラスって幽霊見えるのか。というか結局何しに来たあのおっさん生首。
「望月っていつも弁当どこで食ってんの? やっぱ彼女のとこ?」
「違う。というか……」
付き合ってない。そう言いかけてやめた。
先日の件以来、俺と七海先輩は付き合っているという誤解が学園中に広がっている。
事実無根のそれを何度も反射的に否定しそうになったが、それを否定すると俺の立場が非常に悪いものとなるわけで。
服が乱れて全身ぬるぬるになったのは俺も同じなのに、何故俺が犯人だと思われるのか。
これが男女差別か。
「そうなん? まあその方がいいかもな。あんまりベタベタしてたら日向先輩のファンに殺されるぞおまえ」
「何だその物騒な連中は」
へらへら笑いながら他人事のように言ってくださる半藤を睨めつけて、さっさと教室を後にしてふしぎ発見部の部室へと向かう。
七海先輩はモテる。
面倒見がよく社交的な性格のためかその人気は男女からともに高い。そしてその人気が異性なら恋になるのも、まあ単純といえば単純だが思春期なら当然のことなのだろう。
では俺も七海先輩に恋慕を抱いているのかと言えば、そんなことは全くない。
同じ見鬼という仲間に見做されたためか、七海先輩は俺を遠慮なく振り回してくれるのでむしろ苦手意識すら持ちつつある。
そういう意味では月紫部長の方が余程一緒に居て落ち着くかもしれない。
例えその言動が変人だとしても。
・
・
・
「君にそう言ってもらえるのは嬉しくもあるが、ここにわざわざ食事に来る時点で君も大概変人だと思うぞ」
何となくクラスメイトの視線が気になりこうして部室に弁当を食べに来たわけだが、そこには既に月紫部長が居た。
俺の愚痴にそんな評価をくれると、玉子焼きを口にしてもぐもぐと咀嚼する。
ちなみに食事中のためか黒マントも学帽も外しており、今の見た目は黒髪美人な大和撫子といった感じである。
普段の月紫部長になら変人と言われてもお互いさまで気にしないのだが、今の姿で言われると結構心にぐっさりときた。
一体俺のどこが変人だというのか。
「生首相手に平然としているのもそうだが、今も後ろをまったく気にせずに食事をしているだろう」
「……」
言われて後ろを見れば、そこには肩の少し上で髪を切りそろえたおかっぱの女子生徒が背中にはりつくように寄り添っていた。
この子はストーカー……ではなく、この部室に一定確率で出現する地縛霊のような何かだ。
元々は月紫部長や七海先輩すら存在を忘れるほどひっそりと隅っこで体育座りしていたらしい。しかし初めてこの部室に来た時に俺が発見してしまい、久しぶりに存在を認識されたのが嬉しかったのか俺に憑りついてきたというわけだ。
月紫部長が言うには無害なので放っておいてもとり殺されたりはしないらしい。
俺は俺で対処とかできないので全力でほったらかしにしている。
「まあ慣れというか。生きてる人間のほうが恐いですよね」
「それも一つの真理ではあるが、君の場合慣れるのが早すぎる。大物なのか、それとも単に神経が太いのか」
呆れたように言うと食事を続ける月紫部長。
とりあえず会話が途切れたので俺も食事を再開するが、ふと背後が気になり視線を向ける。
「……」
相変わらず生気のない目で俺の背中にはりついている斎藤さん。
その顔を見ていてなんとなく思い付き、弁当の中からコロッケを一切れ箸でつまみ、その口元に持っていってみる。
「……」
反応なし。
そりゃそうだ。幽霊が食事なぞするはずが――。
「……(パクッ)」
食った!?
「さて。君は予想以上に肝が据わっているようだし、ちょっとした助手のようなものをしてもらおうか」
幽霊がコロッケを食うという衝撃に固まっている俺を尻目に、食事を終えたらしい月紫部長が弁当箱を片付けながらそう切り出してくる。
え? 今の異常事態スルーするの?
斎藤さん(幽霊)に食べられたコロッケは一体何処へ消えたの?
「……助手ですか?」
「ああ。また市内で妖怪絡みと思われる怪奇事件が起きてな。私一人でも十分な案件ではあるが、君に場数を踏ませるには丁度いいだろう」
何故に場数を踏まされねばならないのか。
もしかして俺は将来妖怪バスターにでもならされるのだろうか。
まあこっちから行かなくてもあっちから来るから、慣れておいた方がいいのは事実なんだろうけど。
「数日前から、家に帰ろうとして何故か遭難するという事件が多発している。遭難した人はいずれも道端で倒れているのを発見されているが、何故家に帰ることができなかったのかは覚えていないらしい」
「単に帰宅中に気絶したわけではないんですか?」
「ああ。いずれの被害者も自宅に帰ることができず、かと言って他の場所にも行けなかったということは覚えているらしい。それと被害者の一人は『何かに通せんぼされた』とも言っている」
「……ぬりかべ?」
通せんぼする妖怪といえばそれだろう。
かのゲゲゲな妖怪アニメのおかげで有名な妖怪のひとつでもある。
「塗壁。野襖。道塞ぎ。似たような妖怪は多いが、いずれもそう危険なものではない。しかし今回の件は被害者がいずれも気を失うまで追い込まれており、見逃すには数も多い。そこで私たちの出番というわけだ」
「はあ。なるほど」
そう返事はしてみるが、いったいその情報はどこから来て、どういった経緯で出番が決められているのだろうか。
月紫部長は堂々と退魔師と名乗っていたし、退魔師の相互補助組合でも存在するのだろうか。
「では放課後君の教室に迎えに行くので、準備しておくように」
「頼みますから待ち合わせは学外でお願いします」
これ以上妙な噂を流されてたまるか。
そう思い反対意見を出した俺に、月紫部長は不満そうな顔をしつつ了承してくれた。
・
・
・
時は流れ夕暮れ時。
被害者の証言から実際に被害にあったと思われる時刻に合わせ動き出した俺たちではあるが、昼と夜の狭間のこの時間帯というのは中々に雰囲気がある。
幽霊の正体見たりとは言うものの、この薄暗さではその正体すら満足に見ることができない。
「黄昏(誰そ彼)。彼方より来たるは人か妖か。この時間帯が逢魔が時と言われる所以だな」
そう説明をしながら颯爽と歩く月紫部長。その後ろを付いていきながらも、今更ながら恐怖心というものがわいてきた。
かと言って何が恐いのかと冷静に考えても、それが何なのかは判然としない。
見えないものに対する本能的な恐怖。ただそれだけのものだろう。
「そういえば七海先輩は呼ばなかったんですか?」
「あまり大人数で歩いているとあちらも怖気づくかもしれないのでな。万が一私たちが完全に術中にはまり迷った際の救助要因という意味もある」
なるほど。
そう納得しながら周囲を見渡すが、閑静な住宅街にこれといって不審なところはない。
迷わせる類の妖怪は分岐路に出ると言われているが、今のところ目に見えた変化はない。
本当にそんな事件があったのかと疑いすら抱くほどだ。
「ああ、忘れていた。これを君に渡しておく」
「……? 何ですかこれ?」
不意に月紫部長が手渡してきたのは、拳二つ分くらいの長さの木刀だった。
というかどっから出した。それなりに短いとはいえ、ポケットに入るような大きさじゃないぞ。
「それは御守刀のようなものだ。魔除けとしての意味合いが強いが、霊的なものへの攻撃にも使える。祝詞や真言は幾つか教えたが、今の君には咄嗟に出るものではないし効果も期待できないだろう。いざとなったらそれで殴れ」
「……ありがとうございます」
望月時男は除霊(物理)を覚えた!
いやまあ確かに信仰心の欠片もない俺がうろ覚えの祝詞唱えるよりは、よっぽど効果ありそうだけど。
「それでは……む?」
説明が終わり前を向いたところで、月紫部長が何かに気づき声を漏らした。
「どうしまし……た?」
つられて前を見れば、なるほどそこには異常が広がっていた。
いつの間に現れたのか、行く手を阻むように真黒な巨大な壁が出現していた。
いくら見上げても先は見えず、左右を見渡しても民家を突き抜けて広がっている有様。
かといって反対側に進もうと振り返っても、そこにはやはり壁があり道を塞いでいる。
壁は眼前にしかない。だというのに四方八方を囲まれている。
そんなよく分からない状況に俺と月紫部長は陥っていた。
「まさか初日から遭遇するとは。手間が省けたというべきか」
「何ですかこれ? 壁が移動している気配はないのに、視線を向けた先に必ず壁がある。認識が狂って酔いそうなんですけどって!?」
視線を月紫部長に向ければ、何やら両手で印を組み壁へと向き合っていた。
「――オン・アミリティ・ウン・ハッタ!」
そして唱えられたのは何かの真言。
瞬間放たれた光が障害を薙ぎ払うように拡散するが、そのまま壁に吸い込まれるように消えてしまう。
「……予想はしていたが効果はないか。やはりこの壁は物理的なものではないようだな」
「幻ということですか?」
「ああ。さて、この手の妖は煙草でもふかしていればいつの間にか抜けているものなのだが、生憎と私も君も未成年だ。どうしたものか」
そう言って壁を睨めつける月紫部長。
この人にどうにもできないのなら、俺にできることなどそれこそ限られている。
本当にどうしたものか。
「おっかな。何しよんこの嬢ちゃん。普通脱出しようと試す前に壁ぶっ壊そうと思うか?」
「……」
何か聞こえた。
そう思い月紫部長の様子を窺ってみるが、相変わらず壁を見つめていて異常に気付いた様子はない。
「ほやけど術は解けとらん。まあどない優秀な祓い屋でも、経験つんでない青二才は搦め手に弱いけんなあ」
青二才は男だ。
そんなつっこみを内心で入れつつ視線だけ動かして、さっきまで何もいなかったはずの場所にそいつを見つけた。
「狸……?」
月紫部長の真後ろに、直立二足歩行の狸が居た。
大きさは一般的な狸と変わらず膝くらいの高さしかないが、その眼には明らかに知性の光がある。
しかし真後ろをとられているというのに月紫部長が気づかないということは、この狸が言う通り完全に術中にはまっているということだろうか。
にも拘らず俺が気付けたのは、俺が目ではなく脳に由来を持つ見鬼だからか。
異常を察知することに長けている。つまりその気になれば、俺は幻術の類からも抜け出せるということだろうか。
「それにしても……ピンクか」
……ん?
「おとろしい顔して可愛い下着履いとんね。足も引き締まっとーし中々……」
よし。こいつやっちまおう。
そう決意した俺は無言で短木刀を右手に握ると、にやけながらスカートの中を見上げているエロ狸目がけて振り下ろした。
「ぎひゃあ!? こ、このガキ!」
どうやら完全に油断していたらしく、短木刀は狸の首筋にいい感じで入った。
しかし仕留めるには至らなかったらしく、悲鳴をあげた狸はこちらを憎々しげに振り返り、小さな手で印を組む。
「何しよんやこのガキ! どないしてうちの術から逃れたんかは知らんけど、うちの本気の化かしからはッ」
「そこか!」
「グホォッ!?」
そして何やら新しく術を使おうとしたらしいが、突然体を反転させた月紫部長のトゥーキックが横っ腹に突き刺さり、そのまま吹っ飛んでいく狸。
おー壁を突き抜けた。やっぱり幻術か。
「……月紫部長。気付いてたんですか?」
「いや。邪な視線は感じていたが、君が攻撃するまで何処にいるかまでは分からなかった」
視線には気づいていたらしい。
それは退魔師としての察知能力なのか、それとも女の勘か。
ともあれ今回もトドメは月紫部長にとられてしまったらしい。
もっとも、あのエロ狸の所業を考えるにこの後の方が大変だろうが。
・
・
・
「この! 調子にのるなや! うちを誰やと思とんねん」
幻術も解かれ、月紫部長に金縛りをかけられて身動きができない狸。
それでも口が達者なのは肝が据わっているのかそれとも自棄なのか。
ともあれ抵抗できないのは間違いないらしく、口では偉そうなことを言いながらも目は不安げに揺れまくっている。
「これが不動金縛りだ。霊などを縛るのに有効な術だが、人間にも効くので悪用はしないように」
「分かりました」
そう返事はしてみたものの、見せてもらった手順などすぐ忘れてしまいそうだ。
あとから紙に書いて渡してくれたりしないだろうか。
「あとはこの狸の処遇だが」
「やめい! まがるな!」
「……まがる?」
「伊予か讃岐の方言だな。もしかして八百八狸の残党か?」
「は? 時代錯誤なんは恰好だけにしときや嬢ちゃん。隠神の大将が封じられてどんだけ経っとると思てんねん」
「アッハッハ。望月。狸汁は食べたことはあるか?」
「ひぃ!?」
お気に入りの大正ルックな恰好をけなされ、笑顔でぶちキレる月紫部長と血の気がひいてる狸。
とりあえず狸汁は臭そうなんで遠慮しておきたい。
「で、おまえは何だ? 衝立狸か?」
※衝立狸
夜道で突然大きな衝立となって人の行く手を遮る徳島の妖怪。
あまりに多くの人に恐れられたため石碑に封印されたが、その石碑は盗まれ現在は行方不明となっている。
「ふん。うちをそんなセンスのない名前で呼ばんといてや」
「否定はしないか。ならおまえには新しい名前をやろう」
「!?」
そう言って月紫部長がにやりと笑うと、狸はこれまでの比ではなくあからさまにビクリと狼狽えて見せた。
「望月。こいつに相応しい名前はないか?」
「いきなり言われましても」
何でこんなエロ狸に名前などつけなくてはいけないのか。そう思って狸を改めて見ると、何やら必死に目で訴えていた。
なるほど。こいつにとって名前を付けられるというのは非常に不都合なことらしい。
それを確信した俺がゆっくりと頷いて見せると、狸は涙すら流して安堵の笑みを浮かべた。
「亀太郎で」
「待てやこのガキャア!?」
まるで裏切られたかのように悲痛な声をあげるエロ狸。
仕方ないよね。俺に月紫部長に逆らってまでおまえを助ける義理ないし。
「亀太郎?」
「出歯亀の語源になった覗き魔の名前です」
「なるほど。こいつにはピッタリだな」
そう言って満足げに頷く月紫部長。お気に召したのは何よりだが、結局この名付けに何の意味があるのだろうか。
「では望月。亀太郎の金縛りを解くので、何か命令してみてくれ」
「はい?」
ますますもって意味が分からない要求に首を傾げる。
だけどまあ月紫部長の指示だからとエロ狸改め亀太郎へと向き直り、手を翳しながら命令を下した。
「おすわり!」
「ハッ!」
「ふせ!」
「ふん!」
「三回回ってわん!」
「うー……わん!」
「……」
俺の命令に従い、おすわりの後に伏せをして、次いできっちり三回ぐるりと回転し大きな声で鳴く亀太郎。
命令したこっちもびっくりだが、当の本人もわんと鳴いた姿勢のままだらだらと汗を流している。
「……まさかこれほど効力があるとは」
「えーと、どういうことですか?」
何やら一人で納得している月紫部長に問いかける。
亀太郎の方も何が起きているのかは理解しているらしいが、今は絶望に崩れ落ちているので役に立たない。
「妖怪に名を付けるという行為には大きな意味がある。曖昧な現象と化している存在に方向性を持たせ、本質を知ることで恐怖を克服するという意味。そしてそれとは別に、名によって存在を縛るという意味もある。まあ逆に曖昧な存在が確立されることにより強力になる妖怪もいるから一概には言えないが」
「……じゃあこいつは?」
「名付け親の君に逆らえん。とはいえ、ここまで完全に従属させられるとは思わなかったが」
そう言うと足元の亀太郎を見下ろす月紫部長。
一方の亀太郎は両手で頭を抱え、この世の終わりかのように絶望している。
「それで望月。こいつの処遇だが」
「……そうですね」
みなまで言わずとも、その視線で分かった。
俺に命令しろと。
「亀太郎。今後人に悪さをしたり迷惑をかけるな。以上」
「……へ? そんだけでええん?」
俺の言葉に拍子抜けしたように目を丸くして言う亀太郎。
それだけと言っているが、人に悪さをするなとは化け狸にはアイデンティティ全否定ではなかろうか。
「嫌ならこの場で狸汁に……」
「とんでもない! ありがとうございましたお坊ちゃん! ほんなら、うちはこれで!」
最後まで言わせず畳みかけるように別れを告げて姿をくらませる亀太郎。
必死だな。まあ月紫部長ならマジでやりそうだけど。
「ご苦労望月。場合によっては懲らしめる必要があると思っていたが、君の名付けが上手くいったおかげで楽にすんだ」
「お役に立てて幸いです」
とはいえ、何が原因で名付けが上手くいったのやら。
亀太郎という名があのエロ狸の本質をついていたということだろうか。
「では今日はこれで解散にしよう。今回は君のおかげで円滑に事が進み助かった。ありがとう」
「……どういたしまして」
面と向かって礼を言われて、何だか照れ臭くなって顔をそらす。
そんな俺を見て、月紫部長は楽しそうに微笑んでいた。
・
・
・
「おはようございます坊ちゃん!」
「……」
次の日。
朝起きて郵便受けに新聞を取りに行こうと玄関を開けたら、風呂敷を背負った二足歩行の狸が待ち構えていた。
「……おはよう。どうした?」
「そう警戒せんといてください。これおすそわけです。受け取ってください」
そう言って背負っていた風呂敷を渡してくる亀太郎。
一体何なのかと中を見てみれば、筍と土筆がどっさりと。
土が少しついているということは、こいつが自分で採ってきたのだろうか。
「別にそんなに媚びなくても命令したりしないぞ?」
「いやいや。これは純粋な感謝と好意ですけん。じゃあ、あの嬢ちゃんにもよろしく言っといてください」
そう言って手を振ると去っていく亀太郎。
あんな堂々と二足歩行して周りに驚かれないのだろうか。まあ化け狸だし周りに認識されないように化かすくらいはできるのかもしれないが。
「筍はともかく土筆ね」
月紫部長の名前とかけてるのだろうか。
そんなことを考えながら新聞を取り、風呂敷を下げて家の中へと戻った。