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悪魔之小噺

作者: 藤珠月

 こりゃこりゃどうも、はじめまして。

 え、私が誰だって?

 面白いことを言いなさる。

 あなたが私を呼び出したんですよ?


 私、悪魔でございます。


 なんだって?私が本物の悪魔かって?

 失礼言っちゃいけません!

 ちょっと黒っぽい肌に、頭には可愛らしいツノ。ほらほら、尻尾もありますよ。

 この格好を見れば誰だって分かるでしょう!


 え、分からない?

 往生際の悪い人ですねぇ。


 あ、まだお亡くなりになってはいませんでしたね。

 大変失礼ござんした。


 へぇ、これでも分からないんで?

 しょうがない、ここまで言ってもお分かりにならないようなら、私が悪魔である証明を、お見せいたしやしょ。

 人間が知らない私たちの素顔を、ちょいと語らせてもらいまひょ。




 悪魔といえば何色でしょ?

 ほら、やっぱり「黒」って言いますよねぇ。

 そういうイメージを人間の皆さんはお持ちのようですな。

 これだから、一度できたイメージは怖い。振り払うのは大変でござんす。


 まだキリスト教ができた頃はねえ、私は美しい菫色とか、紺色だったんですよー。

 あの時がいちばん綺麗だったなぁ。はぁ。


 で、ビザンチン時代に、頭がいくつもある怪物にされました。

 そりゃあもう、プライドが傷つきましたよ。

 へ、悪魔にもプライドがあるのかって?

 当たり前じゃないですかぁ。

 もう、ずたずたのぼろぼろでございます。


 そのあとしばらくして、人間みたいな姿に戻されたこともありました。

 尻尾と長いツメといっしょにねぇ。はぁ。

 この頃だったかな、黒い姿になったのは。


 そんでもって、その頃の修道士や画家たちが、よってたかって私の体をいじくりまわしたんでございます。

 相当暇だったんでしょうかねぇ、あの人たち。

 私の腹や尻に顔をつけて、愉快な格好にしてくれましたよー。


 余談ですがね、ここで私たちと同じ目にあったのが、魔女の皆さんですよ。

 絵画のなかの魔女は裸でいることが多いんです。

 どうしてか、分かります?

 分かんないですかぁ。


 あのですねぇ、女性の悪徳のひとつ「淫乱」を表すため……という口実。

 これはねぇ、あくまでも口実ですよ。

 これによって、画家が躊躇なく女性の裸を描くことができたというわけでさぁ。

 そういうことですよ。


 彼らによると、魔女は裸一貫でザルに乗って、サバトに行くんだそうで。

 なんと素晴らしい想像力だこと。

 私としては、その能力をもっと別の場所で使ってもらいたかったですね。


 あれ、どこまで話しましたっけ?

 ああ、修道士の尻の話ね。

 こほん、さてと。

 

 ルネッサンスの時代は、皆さん楽しそうでした。

 はあ、羨ましいことです。

 でも私はねぇ、サテュロスとかいう古代ギリシアの怪物の姿を混ぜられてねぇ。

 そうだ、この時ですね。頭にツノがついたのは。


 言ってる意味わかります?

 はあ、分からない。

 しゃーないなぁ。

 ちょっとは自分の頭で考えてくださいよー。


 つまりはこういうことですよ。

 私はキリスト教徒から見た「異教徒」=教会の敵の代表に選ばれちまった、こういうわけでさぁ。


 あ、もしかしてあんた、キリスト教徒?

 え、違うの。そっか。


 ほんじゃあちょっと言っておきますがね、悪魔も神さんが作ったんですよ?

 自分の自由意思で「善でないもの」「存在しないもの」を選んだ天使。

 善が部分的に欠如した存在。

 それが悪魔なんでございます。


 ま、とりあえず「人間に不都合なもの」「害をあたえるもの」が悪魔なんだと理解しておいてもらえればよろしい。

 そういう人間の自己満足から生まれた存在なんでっさ、私たちはね。

 

 こんな感じで現代まで来たわけですがね、ここ最近に思うんですよ。

 みんな、私の姿を描いているようにみえて、自分の姿を描いてるんじゃないか、ってね。


 私はあくまでも悪魔ですからね、人間のやってることなんて知ったこっちゃありませんよ。

 「自分の正義」を貫くためにお互い殺しあったり、「進歩」と銘打って自分の住んでいる星を壊したり。

 悪魔はあんなこと、しませんよ。


 とどのつまり、怖いのは悪魔だけじゃないのでさぁ。

 ま、とりあえず「人の振りみて我が振り直せ」とでも言っておきましょうかね。




 さあてと、あなたのお願いとは何でしょう?


 ……あら、寝ちゃってらぁ、この人。

『悪魔のダンス~絵の中から誘う悪魔~』視覚デザイン研究所編

上記作品を参考にして書きました。

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