正室VS側室
テレビはよく見ますか?
どんな番組を見ますか?
「風俗嬢って、新聞、ニュース見ないよね」
と、揶揄されることがしばしばありますが、
そうですね。
確かにフウカもニュースよりも、ドラマが好きです。
ドラマもいくつか見るのですが、
現代もののドラマ以外にも、
何十年、何百年も前の
王朝ものの歴史ドラマも好きです。
そしてこの王朝ものの歴史ドラマを見ていて、
最近思います。
「風俗嬢も一緒だな」って。
王朝ものの歴史ドラマでは、
王様の正室と側室がしばし対立し、
王様の寵愛をめぐって、
ドロドロ、ネチネチした争いを繰り広げるパターン、
ありますよね。
フウカがよく見るパターンも、まさにそんな展開です。
王様には正室がいるのだけれど、
えてして政略結婚が多いため、
王様と正室はどうにも相性が悪い。
そんな折、新しい側室が現れ、
側室は王様の寵愛を一心に受け、
王様のお子を体内に宿す。
正室は側室へ嫉妬の炎をもやします。
側室への嫌がらせは留まるところを知らず、
とどのつまり、側室の命までも亡きものとさえしてしまう。
可憐でいたいけな、善良な女性である側室と、
嫉妬に煮えたぎる悪女としての正室。
「何も側室の命まで狙うなんて、そこまでしなくても…」
「正室、性格悪すぎ。良い家柄の出身だから、甘やかされて育って、
なんでも自分の思い通りにことが運ぶと思ってるんだ。
ワガママお嬢さんなんだよね」
と、以前のフウカは正室に批判的でした。
「以前」のフウカは。
「今」のフウカは、正室の心情が、なんとなく分かります。
というか、切々と、共感するところがあります。
側室に王様の寵愛を失い、
そして側室に男の子が生まれようものなら、
その王室、その国での権力のトップとしての地位を奪われ、
転落していく側室と、
風俗店でトップとしての人気を誇っていたNo1嬢が、
他のキャストの子にそのトップの座を奪われ、かみしめる屈辱とが、
なんとも重なるんです。
先に一つだけ申し上げると、
フウカは、我が職場風俗店「パッション」のNo1キャスト
ではありません。
「パッション」No1キャストは、
フウカも常日頃尊敬してやまない先輩キャストさんです。
なので、フウカは完全なる正室の立場ではないのですが、
でも、今までフウカに遊びに来てくれていた常連さんが
他のキャストの子に移ってしまうのを見るのって、
本当につらいです。
他のお店では分かりませんが、当店「パッション」では、
今まで自分に遊びに来てくれていたお客様が、
他の女の子に遊びに来ていることが、
毎回ではないですが、時によっては
分かってしまうシステムになっています。
自分以外のどの女の子についたのかは、
分かるときと分からないときとありますが、
(たいていは新しく入った新人の子に移っていくようです)
それが分かってしまったときは、
本当に自暴自棄になります。
足を運んでくれた回数が
多ければ多いお客様であった時ほど口惜しく、
そのお客様自身へ怒りがこみ上げますが、
何の落ち度もない、その女の子のことも、
もちろん憎たらしくてたまりません。
それに加え、お店にある程度在籍し、出勤していると、
①「誰が人気嬢なのか」が、HP等々で分かります。
他にも、②その日のお店の込み具合や、
どのキャストの子が、その日お客様をたくさん接客しているのかも、
だいたい分かります。
例えば①「誰が人気嬢なのか」については、
HPでの各キャストの子のプロフィール欄など、
宣伝の仕方に微妙な違いがあるんです。
お店側が、在籍してる子を悪く書くことは決してありませんが、
例えば次のA~D,いかがでしょうか?
A…おっとり癒し系ガール
B…フェロモンたっぷりお姉さん
C…リピート率トップ正統派美女
D…激カワキュートガール
微妙なニュアンスの違い、分かりますか?
お店側が在籍している女の子、どの子であっても、
悪く書くことは決してありませんので、
A~DのようにHPで宣伝されていたら、
そのお店のNO1キャストは、まずCの子と見て間違いないでしょう。
あと、HP内に
「指名率ランキング」と大々的にランキングページもあったりしますので、
これを見れば、誰が人気No1嬢なのか、明らかです。
(とはいえ、お客様によって、好みは千差万別なので、
No1の子を指名したからと言って、
必ずその子で100パーセント満足できるとは限りません。
ただ、大きなハズレは避けたい、というようであれば、
そのお店のNo1の子を指名すれば、
7割方は満足できるのかな、とは思います)
そしてこの「指名率ランキング」は
毎月統計をとるので、月によっては、
No1の子とNo2の子が入れ替わったり、
新人の子が突然ランキングに登場する
(つまり、それまでランキング内にいたキャストの子が、
ランキング外になってしまう)
ということもあり、キャストの女の子側も、
毎月ハラハラ、どきどき、ランキング結果を見守っている、
というのがお察しいただけるかと、思います。
なお、「指名率ランキング」の他に
「本指名数ランキング」というところもあります。
つづいて、②その日のお店の込み具合や、
どのキャストの子が、その日お客様をたくさん接客しているのか
については、
お店の構造上、分かってしまったりします。
というのも、受付は別として、その先女の子がお客様と一対一で
接客させていただくお部屋は、個室ですが、
この個室って、特別壁が厚い、というわけではなく、
共同通路での他の女の子とお客様の話声や、
下手すると、隣の部屋の接客中の、
プレイの真っ最中の激しい声なんかも、聞こえてきます。
防音装置完備の、超高級店の風俗店なら、
話は別でしょうが。
なので、そんなあれや、これやを総合すると、
「今まで自分に来ていたお客様が他の子へ移っていく様子や、
先月までは自分がNo1嬢だったのに、今月はランクが落ちちゃった。
自分は落ち目なのかな…。
今日は、自分はフリーのお客様(ご指名ではないお客様)が
ポツリ、としか来てないのに、
他のキャストの子たちの声は、部屋の外から、たくさん聞こえるなぁ。
あぁ、自分、やっぱり落ち目なのかなぁ。
ずっとこんな感じだったら、どうしよう…。
他のキャストの子、自分のこと、転落していく情けない姿、
嘲笑ってるのかなぁ…。
スタッフさんだって、
そろそろこの子も潮時かな、って考えはじめてるのかな」
と、側室を僻み、王室の女性トップの座を失う正室の心情が、
少なからず、共感する部分があるんです。
とはいえ、ここまでなら、まだイイ方なんだと思います。
ランキング落ちや、自分の心の中でのみの、
落胆や、他のキャストの子への嫉妬で済む場合は。
なんとも気の毒なのは、ネット掲示板で
叩かれる場合です。
→次話「トップの座」へ続く