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魔の二月にも関わらず…


さてさて、前回のエッセイ「魔の2月」の続きになりますので、

まずは、簡単にですが、前回の内容をまとめてみました


==============================

前回の内容のまとめ


「2月」って、風俗業界ではお客様の足が遠のく「魔の月」です。

一年で一番売上が落ちる月なので、当店「パッション」では、

様々な値引き価格でお客様を呼び込みます。



が、あまりにも衝撃的値引き価格になってしまうこともあり、

そんな時は、正直、ショックです。



「覚悟を決めて、このお仕事してるのに、その対価が、これだけ?」

「私って、ここまで値を下げないと、価値のない女なの?」

「ここまでしないと、稼げない自分って一体…」


と、自己嫌悪に陥ることもあります。



でも、お店の事情も考えると、時には破格の値引きがあっても

仕方ないのかもしれません。



それにこの状況がいつまでも続くわけではありません。

2月を乗り切れば、不思議と、またお客様のご来店は増えます。

もう少しの辛抱…。



と、そんな2月を、なんとか前向きに乗り切ろうと、

気持ちを切り替えようとしていた矢先、



思いがけないお客様との出会いがありました。

==========================





お客様は、Tさんというお名前なのですが、

衝撃価格まではいかなものの、ちょっとお値引価格。


「パッション」には初めてご来店の、フリーでのお客様です。



※「フリー」とは…

お客様が来店時に「この女の子と遊びたい」といったご希望がない場合です。


「特に気になる子がいるわけじゃないから、どの女の子でもOK」

「すぐ遊べる子で」といった状況が多いようで、



そうすると、お店側で、その時接客していない女の子をご案内する、

というシステムです。


逆に「この子と遊びたい」「前回と同じ子で」という強い希望がある場合は、

予めご予約していただき「本指名」という形のご案内となります。



さて、話は戻り、「フリー」でご来店になったTさん。



お値引価格なので、フウカ、ちょっと気が沈み、

また初めてお会いするお客様なので、

「優しい…までは望まないけど、話やすかったり、接客しやすい雰囲気の

お客さんだといいなぁ…」



と、どんよりしつつ、緊張しつつお出迎えしたものの、



Tさん、思いの外、フウカを気に入ってくださったようです。



というのも、接客時間終了間際でした、

「延長できる?」と、延長希望をお申し出になったんです。



「え?」



 不意打ちでした。


まさか、初めてお会いするお客様で、しかもフリーだし、お客さん自身も「パッション」は初めてだし、それに「魔の2月」なのに、「延長」をお申し出になるなんて…



フウカ、思いよらず、ぽかんとしていると、

Tさん、寂しそうに苦笑いします。


「あ、イヤだよね、こんな客、延長したくないよね。いや、いいんだ…」

「そ、そんなこと、ないですよ!!」

「ほんと?」

「ほんとです!!」


フウカ、危うくTさんのお申し出を無下にするところでした。

と、書くと、金の亡者のような、がめつい表現になってしまうので、


もう一言、付け加えさせていただくと、Tさんに恥を、というか、

イヤな思い、というか、バツの悪い思いをさせずに済みました。







最近しみじみ思うのは、確かに「このお客さんは苦手、パス」

といったお客様は、正直、います。


でも、そんなお客様でも、決して安くはないおカネを払って来てくださってます。



なので同じ断るにも、最低限お客様がイヤな思いをしないよう、

上手く断るのが、風俗店の女の子としてのマナーなのかな、

と思ったりしています。


あ、これについては、また回を改めて、書かせていただきたいな、と思います。




と、話は戻ります、

Tさんから思いがけず延長のお申し出をいただいた、フウカ。



なので、まずお部屋の電話でフロントにコールし、

このまま延長できるのか、確認をとります。



前もってご予約が入っていたり、

今しがた次のお客様が決まったりした場合は、延長はできませんよね。



「…というわけなんですが、延長はできますか?」

受話器をにぎり、尋ねるフウカに

「延長できます…」

フロントからは、即座に色よい返事が返ってきます。



すぐにOKが出るなんて、やっぱり、魔の2月だな、

と、ちょっぴり複雑な思いのフウカではありましたが、



「延長大丈夫みたいです」

「そっか、やったね」


Tさんも喜んでくださり、フウカもなんだかホッとし、

延長タイムに入ったところで、




またもや驚かされました。


「おれ、こういうものなんだ」


と、Tさん、背広のポケットから、なにやらごそごそ、

ご自身のお名刺を出すんです。


「…」



名刺には、「T中マサル 〇〇会社 部長」

と、ご勤務されてる会社名、役職まで記載されています。



「うそ、個人情報ばればれですよ!

いいんですか? フウカみたいな風俗の子に渡しちゃって」



 今までに本名を教えてくださるお客様は、何人かはいましたが、

会社名・役職まで載っている名刺を下さる方は、本当に稀です。



「そーだなぁ、会社にイタ電は困るかなぁ…

あ、俺の名前、マサル。マサちゃんでいいよ、覚えてね」


フウカの心配はよそに、Tさん、

ご丁寧に自分のニックネームのリクエストなさいます。




と、そのようなわけで、

初めてお会いしたTさんでしたが、



フウカの接客にとても満足していただけたみたいで、


延長や、お名刺までくださって、

本当に思いがけず、嬉しいお客様でした。




魔の2月だというのに、

本当に、こんな展開もあるんだなぁ。




思い起こせば、特にこの仕事を始めたころ、

フウカ、まださっぱり、常連のお客様に恵まれない頃、



「やっぱり、この仕事は自分には向いてないんだ、

いつやめようか、いつやめようか」



と、幾度となく考えたことはあるのですが、

でも、そういう時に限って、

今回のような嬉しいお客様に出会うことができ、励まされ、



危ういところを、なんとか綱渡りしてきたように思います。



この業界の醍醐味、というのでしょうか。




こういうこともあるので、

このお仕事、辞められないのかもしれません。





フウカ


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