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草原の王子  作者: 胡子
9/12




乳母を伴って大都に戻った灯也は、どこまでも堕ちた。


どんな慰めも励ましも彼には届かなかった。


親しい人々は心を痛めた。










それは静かな月の明るい晩であった。


未だ心を深い暗闇にさ迷わせる灯也に、乳母は心を決めて語りはじめた。










灯也様。







貴方は至倶那様と共に戦うことを望んでいらっしゃいましたが、至倶那様の真のねがいをご存知でしたか。






至倶那様はわたくしどもにまつりごとの事は一切口にされませんでしたが、この乳母めに一度だけお話しをして下さったことがありました。







我が草原の国は、血生臭い戦が絶えぬ、呪われた貧しい国。







流された血はさらに血を呼び、血は呪いとなり鎖になります。







至倶那様は遥か昔から続いてきた不毛な鎖を、断ち切りたいとおっしゃっていました。







そして、新しい時代を築きたいと。







頑なに草原の隅で己を閉ざすのでは無く、広い大陸に吹く新しい風に手を広げる、そんな時代を。







民は王の奴隷では無く、己が己の主である、そんな国を。







壊し、奪うのではなく、

創り、育てたいと。







灯也様。







至倶那様が最後まで案じてらしたのは灯也様です。







灯也様を遠い地へやったのは忌まわしい鎖から守るため。







そしていつか、共に新しい国を創るためだったのですよ。







灯也様。







至倶那様は灯也様に、無念を継いで欲しいことでしょう。







ええ、貴方しかいません。






灯也様。







妾が、一人墓まで持って行くつもりだった秘密をお話しましょう。







貴方の母上は卑しい女などではありません。







遠い西方の、さる亡国の高貴な姫君でいらっしゃいました。







至倶那様は姫君を深く愛しておられました。







姫君も同様に。







ああ、それなのに。








あのような恐ろしい行く末を誰が想像出来たでしょう。







ですが、姫君は最後の最後に幸せに満ちて亡くなりました。







愛する御方の子をその胸に抱けたのですから。







灯也様。







貴方の本当の父上は―――









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