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草原の王子  作者: 胡子
8/12






降りしきる、冷たい雨の中。









一面の焼け野。









闇に沈む崩れた城。









おびただしいしい骸。









幽鬼のように座り込む民が一人…二人…。










灯也は茫然と立ち尽くしていた。









灯也様。









消え入るような声に振り向けば、ぼろを纏った老婆がふらふらと立っていた。





よく見れば至倶那の乳母であった。





彼女は駆け寄る灯也の胸で泣き崩れた。










至倶那と王の関係は修復不可能にまでなり、後はおぞましい骨肉の争いが続いたのだ。









きっかけは、王の酒に仕込まれ続けた毒。





口を割ること無く自ら命を断った薬師。





それは狂気のはじまり。





草原はどす黒い血に濡れ、さらに血で洗われた。





最後、至倶那は城に火を放った。





冷たくなった父と兄弟と共に。





欲望と憎悪で膨れた、血よりも朱い紅蓮に包まれながら。





炎は空を三日三晩焦がした。













まるで天人のように、美しく微笑んでおられました。



穏やかな、澄んだ瞳をしておられました。



そしてわたくしに、最後の命令だ、生きよ、とおっしゃいました。



あいつを頼む、と。






灯也様。









灯也はむせぶ乳母を抱えてへたりこんだ。








全てが夢であって欲しい。








決して叶わぬと知っていても、祈った。










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