六
想像以上に大都は壮大で美しかった。
帝国の庇護を受け、すべての国に開かれた独立都市《大都》は、学問と芸術の都であった。
少年は圧倒されるばかりだった。
だが驚いてばかりもいられない。
灯也は学院の門を叩いた。
この学院の歴史は古く、大陸中から将来を担うべき若者が集まっていた。
灯也は休む間もなく知識を吸収した。
性根の悪い学友から面と向かって、田舎者、蛮族、と蔑まれる事も多々あったが、彼は全く相手にしなかった。
草原からは何の便りも無かった。
しかし、灯也は悲しまなかった。
早く。
もっと早く。
剛くならねば。
やがて灯也は頭角を顕した。
文武を兼ね備えた彼は、さながら一匹の竜であった。
学院の教授は帝国屈指の学者で、この野生味溢れる少年に一目置くようになった。
さらに少年の実直さ、勤勉さを知ると益々気に入ってしまった。
少数ではあるが、信頼に値する友人もできた。
草原から来た稀人は、自分の力でしっかりと根を張ったのだ。
大都で迎える何度目かの春。
灯也は悪い噂を耳にした。
『草原の国で戦が起きている』
親しい人達が手を尽くして調べてくれたが、辺境の国の確かなしらせは杳として知れなかった。
灯也は幾日も眠れぬ夜を過ごした。
ある朝、友人の一人が血相を変えて部屋に飛び込んできた。
悪いしらせであった。
灯也は周囲が止めるのも聞かず、大都を飛び出した。
一路、故郷へ。
草原の国へ。