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草原の王子  作者: 胡子
6/12




出立は、初冬の早朝だった。


空は鼠色の厚い雲に、草原は銀色の霜に覆われていた。


小さな荷物と馬、道案内の痩せた従者だけが灯也の供であった。


誰にも告げず、見送られるはずもなく、彼等は静かに城を出た。


灯也は黒く沈む城を振り返った。




初めから、此処に自分の居場所は無かったのだろうか。




灯也の心は鉛のように重かった。





草原の西に緩やかな大河がある。


大都へは河に沿って進み、さらに山脈を二つ越えなければならない。


河が近くなるにつれ、草原に自生する背の高い植物ではなく、地を這う芝が多くなってくる。


芝は初夏に小さな釣鐘の花を付ける。




ここには、兄上にせがんで、よく連れてきてもらった…。




今は冬。


それでも花を探すように、灯也は茶色くすすけた河原を見回した。


その時、遠くもと来た草原に、一頭の馬がこちらを向いて佇んでいるのが目に入った。


背に誰かを乗せている。




あ。




顔は判別できない。


でも。


灯也の目の奥に熱いものがこみ上げた。




行ってきます。




灯也は心の中で呼びかけた。



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