表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
草原の王子  作者: 胡子
2/12




灯也トオヤの母は身分の低い女だった。


王のなさけを一夜受け、そして彼女は自分の命と引き換えに灯也をこの世に産み落とした。


幼子に向けられたのは、蔑み、妬み、嘲り。


灯也にとって、城は巨大な牢獄だった。


無関心の方が有り難かった。

父のように。


父は気まぐれで相手をさせた卑しい女と、その腹から生まれた息子の事など、どうでもよかったのだろう。


灯也の存在は黙殺され、黙認された。


灯也は城の一番下層の使用人達と生活を共にするしか生きる道は無かった。







ある日、一人の青年が現れた。


青年に気付いて、灯也を汚物が入った桶に鍬で押し込んでいた男の手が止まった。

周りで下卑た笑い声を上げていた大勢の男女の動きも止まった。


恐ろしいほどの静寂の中、灯也の小さな啜り泣きだけが流れていた。


さんさんと降り注ぐ光よりも眩しく、青年は壁画から抜け出た神人のように美しかった。


そして狂暴な程の怒りに満ちていた。


人々は彼の双眸が凍てついた蒼い炎できらめくのに恐怖を覚えた。


青年は真っ直ぐ桶に歩み寄ると、両手を伸ばし灯也を抱き上げた。


見るからに高価そうな服が容赦無く汚れたが、青年は全く気にしていないようだった。


青年は弱々しく泣き続ける灯也を胸に抱いたまま、無言で広場を後にした。


その姿が消えてもなお暫く、人々は金縛りにあったかのように静止していた。


それが国の第一王子、至倶那シグナだった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ