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草原の王子  作者: 胡子
11/12




国士はまだ若い青年で、帝国始まって以来の高成績で試挙を通ったとか。


そのまま内府へと推挙されたが、何故か彼はこの辺境への赴任を熱心に希望したと言う。






変わり者の国士は、草原に小さな町を造った。




道を調え、畑を耕した。

政を開放し、法を正した。

自ら働き、汗を流した。




変わり者の国士は、徐々に人々から愛されるようになった。






その頃になると、長い間放浪していた草原の国の民も帰ってきた。


国士は彼等を温かく迎え、住居と職を与えた。






国士はたまに、暇をみては馬で草原を駆けた。




風に流れる漆黒の髪と、少し褐色がかった肌。




それは、彼に草原の国の民の血が流れていることを示していた。




豊かな草波を飛び越えるたび、彼の瞳は透き通るような蒼に輝くのだった。










齢百を越える老人が、穴があくほど国士を見つめて言った。




老人の父親は、昔草原の国の城に出入りしていた商人であったらしい。







昔、父の仕事に連れられて行った城で、貴方によく似た青年に会ったことがある。


特にその瞳は忘れようにも忘れられるはずが無い。


貴方のときに煌めく蒼い瞳は、確かにあの時の王子そのものじゃ。







興奮気味に喋る老人に国士は笑って答えた。







あなたの話からすると、王子に似ているのは私ではありません。


祖父です。


私の祖父は草原の国の出身です。


私は孫の中でも特に彼の若い頃に似ていると言われています。


祖父は今の私よりずっと若い時分から帝国で暮らし、そこで亡くなったのですよ。


他人の空似というものではないでしょうか。




異国で生きることは苦労も大いにあったことでしょう。


しかし彼は微塵も感じさせず、とても朗らかな人でした。


私たちは祖父が大好きでした。


祖父は、私たちに繰り返し草原の話をしてくれました。




空が高く、

青い草波がどこまでも続く、

美しいところだと。




受け継がれてゆく血に、記憶も刻まれてゆくのでしょうか。




彼が語る故郷に。


草原に。


私も恋い焦がれました。




祖父のねがいは、この草原に新しい時代を創ることでした。




彼の夢が、私の夢になりました。




そして今、私はここにいます。




彼の肉体は滅びましたが、内なるほのおは今も私と共に在るのです。









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