10/12
九
新たに草原の王となったのは、元側近であった。
密かに諸国に手を回し、内乱を操っていたとか、いないとか。
正后の座についたのは、たった一人生き延びた元妾妃であった。
だがその世は長くは続かなかった。
正后と若い男の不義に逆上した王が、正后と刺し違えたのだ。
王の座をめぐり、再び草原はどす黒い血に濡れた。
戦はだらだらと何年も血を垂れ流し、結局は誰も勝たなかった。
それ以降、疲弊しきった草原に、王を語る者は現れなかった。
五年。
十年。
二十年。
そして五十年。
…
…
気が遠くなるほど幾つもの季節が廻った。
その間、草原を属する国は面白いほどころころ変わった。
しかし元々、益の無い土地である。
滅びた日そのままに、草が伸び荒れるまま捨て置かれていた。
…
…百年。
やがて帝国が東に勢力を伸ばし始め、数十年後にその手は辺境の地にまで届いた。
こうして東方全土に長い安定期が訪れる。
それから更に幾年月。
ずっと打ち捨てられていた草原に、帝国から初めて国士が派遣された。




