1/12
序
昔。
大陸の東。
二つの山脈を抜けた先に、
小さな草原の国があった。
穀物の実りは少なく、
王族間の血生臭い争いが絶えぬ
貧しい国であった。
近隣国は『蛮族』と鼻で笑って一様に言った。
『わざわざ攻め込み領土にする価値もない』
と。
小さな草原の国は
血生臭い戦が絶えぬ
呪われた蛮族の国。
しかし、青々とした草原はしなやかに波打ち、
そこから見上げる天は瑠璃よりも澄んで高く、
美しかった。
昔。
ここに国があった。
草原の国、
最後の王子の話をしよう。