セルール国妖精魔法学校[3]
今回は神の魔法の恐ろしさが判明します。リアの初魔法です。
校舎に入った二人は、職員室に向かった。今は授業中らしく、他の生徒は誰もいなかった。
「失礼します。」
ガラガラと扉が開く。
「はい...て、イオくん。また帰省してたのかね?」
背の高い先生だ。白くなった髪を短く切っている。
「?こちらの子はだれだね?」
「えっと私の友達で、リアと言います。入学希望者です。」
「ふむ。私はセルダンという。よろしくたのむよ。」
「よろしくお願いします。」
頭をさげた。
「イオ君、リア君を校長室に連れていってやってくれないか?今は忙しくてね。」
イオは頷く。
「わかりました。さあ、行こ。」
「うん。」
「健闘をいのる。」
そういってセルダン先生は戻っていった。
「失礼しました。」
校長室は職員室の二つ上の階にあった。
「「失礼します。」」
今度は僕も言う。心の中と、イオ達と話す時は僕を使っている。
他の人がいる時は私にしている。
「イオさんか。今日はお友達を連れてどうした?入学希望者なのかな?」
校長先生は40後半くらいの男性で、所々に白髪があった。
「はい。私の友達で、リアといいます。」
「リアといいます。魔法はあまり分かりませんけど、よろしくお願いします。」
「こちらこそ。本校は魔法を学ぶ場所だから、詳しくなくても大丈夫だ。」
そして校長は立ち上がる。
「だったら早速試験だ。何、そう心配そうな顔はしなくていい。クラスを決めるテストだから。」
「それでは私は...」
イオは扉に歩きかけた。
「まあまあ、まちたまえ。君の友達は不安そうではないか。今回は許可するから、一緒に居てやってくれ。」
「ありがとうございます、先生。」
「礼はいい。さ、外へ出ようか。」
試験会場は近くの草原だった。3人は飛んで向かった。
「テストの内容は至極単純。あれを割るだけだ。」
校長が指を指す方向には、大きな板状の形をした水晶があった。板とはいっても、人間の爪先から首辺りまでの幅がある。
「魔水晶...」
「そのとおり。あれにはとても強い魔力があってね。半端な魔法では傷ひとつつかなくて、傷をつけてもしばらくすれば魔力で傷がなおる。ちなみに、あれを実際に破壊した生徒は皆無だ。」
皆無...
「別にこれは破壊を求めているのではない。あくまで魔法力を確かめるものだ。それぞれの魔法には個性があるからね。各自にあったクラスに入れる。これが一番よいのだよ。さあ、試験開始だ。」
「すみません、どうやって魔法を使うんですか?」
それを知らない事には手も足も出ない。
「ああ、わるかった。魔法はイメージだ。まず心のなかで発動させる魔法をイメージするんだ。どんなものでもいい。風の刃で切り刻んでもいいし、武器を出して壊してもいい。次にそれに込める魔力を決めるんだ。同じまほうでも魔力の差で威力がかわるから。後はそれを言葉にするだけだ。言葉は教えてあげるから、まずはイメージをするといい。」
いくらあの水晶でもさすがに力を込めて魔法を放つ訳にはいかない。神の魔力は未知数だからだ。だから込める魔力は1%未満にした。
(後は破壊に何を使うかだけど...雷でいっかな。)
そう思い、魔力をほんの少しこめて、言葉を聞こうとした、その瞬間の事。
まるで無数の流星が落ちてきたかのような衝撃。
突然の爆発。凄まじい爆風だった。
「うわぁ!」
もう駄目...て、あれ?
しばらく待っても衝撃は何も来ない。
よく見ると、周りにバリアがはられていた。
「大丈夫か!?」「リアー!!」
爆煙の外で二人は叫んでいる。
「なんとか、大丈夫です。」
二人はすぐに風の魔法で煙をとばしてくれた。
「良かった...」
イオが言うと、校長は
「リアさん、君はどれだけの魔力を込めたんだ!?確かにあれは強い魔力を持っているが、それを遥かに上回っていた...!」
魔水晶があった場所には、半径40mほどの焼け焦げた、底がわからないほど深く、大きな穴が空いていた。
当然、水晶など欠片すら残っていなかった。
「それにまだ言葉は教えていなかった筈。しかも落雷の後のバリアをはる速度...詠唱の時間なんて、とてもなかった。」
つまり神は無詠唱の力を持っていたのか。
「君は無詠唱で魔法を発動させたのか!?あり得ない。妖精には無理だ。いや、全ての生物にも無理だろう。一体何者なんだ!?」
「校長先生...」
「...いや、悪かった。詮索は良くないな。しかし魔法が初めてだとは思えない...これ程の実力ならば最上級クラスは楽だろう。しかし、さっきも言った通り、魔法はイメージ、コントロールが大切だ。無詠唱なら余計にコントロールの特訓をしなければ。よし。取り合えずは最上級クラスに入るといい。詠唱の授業の時や放課後には私が特訓を手伝う。」
「ありがとうございます。校長先生。」
「よし。今日は帰るといい。すぐに騒がしくなるだろうからな。」
「はい。ありがとうございました、先生。」
「さようなら、先生。」
「ねぇ、あれってどのくらい魔力を込めてたの?私は半分辺りまで小さな穴を開けるのが限界だったけど?」
飛翔しながらの帰り道、イオはきいてくる。
「あれは、その、1%未満にしたんだけど...」
女神の力は三人分。その膨大な魔力の中の1%未満だった。三人の女神は一人だけでもとんでもない力を持っていた。だからもう少し魔力を込めていたら、学校そのものが吹き飛んでいただろう。
「うそ!?あれで!!?やっぱり神様だ!私達は絶対に足元にも及ばないよ。いいなー、無詠唱。」
「でもあれはあれでたいへんだよ?考えたことが現実になっちゃうから。それに1%未満でも相当な魔力量だし、コントロールが凄く大変。」
「そうだけど、でもすごいよ。」
ふとイオが立ち止まる。
「無詠唱は、一部の特殊な神様だけの力だからさ、もしかしたら3人の女神の力も使えるかも知れない...」
「え!?」
「あ!?そうだった!?リアは思った事が現実になるんだった!」
「だから話題を変えるよ?」
ここでそれを聞いたら大変な事になる。
「う、うん!」
そういって笑う。
「入学、おめでと!」
いやぁ、恐ろしいですね。神の力。次回の内容は未定ですが、がんばりたいと思います。
間違い等があれば連絡をください。