File No.7 裏切り者は死す
すると、加江田がいかつい男性の方を向いて話しかけた。
「僕たちは、シンジケートの元メンバーでした。しかし、あなた方の思想の話を聞いて、とても素晴らしいと思い、リベルタスに強い尊敬の念を抱いたんです。それで、たまたま通りかかった時に、リベルタスのメンバーの方々が攻撃されているのを見て…これは助けなければと思い、加勢しました」
加江田はそう言って、穏やかに微笑んだ。
「君もそうか?」
リーダーが宇佐美に視線を向けて尋ねた。
「えっと…」
「あ、えっと、この人は俺の彼女でして、たまたまここでデートしてたんですよ」
加江田は、唐突に真っ赤な嘘を吐いた。
「え? あ、はい…そうです」
宇佐美は戸惑いながらも、適当に相槌を打った。
「そうか。リベルタスに憧れて助けに来たというわけか。素晴らしい。喜んで二人を歓迎しよう」
男性がそう言うと、周囲にいた大勢のメンバーたちが拍手を始めた。
パチパチパチパチ
「まずは、せっかくだ。歓迎会を開こう」
そう言って男性は、向こうにあるボロボロのテーブルへ二人を案内した。
二人が席に着くと、メンバーの一人が、コンビニで買ってきたような安い食べ物とビールをテーブルに並べた。
ー食べちゃ駄目…ー
宇佐美は直感的に理解していた。
しかし…
ーって、おい!?何てめえ、バクバク食ってんだよ!?ー
横を見ると、加江田が何の躊躇もなく食べ物を頬張っていた。
宇佐美は思わず目を見開いた。
やがて男性も席に着いた。
「まず、俺の名前は黒沼マイケル。リベルタスのリーダーだ。よろしくな。君たちの名前も聞かせてくれ」
「私の名前は…」
宇佐美が口を開こうとした、その瞬間…
「ああ、俺の名前は川本鈴太。無職です。彼女は馬場留似香、同じく無職です。こちらこそ、よろしくお願いします」
加江田はフライドチキンを頬張りながら、平然と嘘を重ねた。
黒沼は目を丸くし、感心したように笑った。
「川本、お前…度胸あるなあ。普通の人間なら、俺の顔を見ただけで震え上がるもんだ」
「いえ、俺たちはリベルタスを尊敬していますから。名前を隠す理由もありません」
加江田はそう言って、軽く笑った。
「嬉しいな。そういう度胸のある人間は、うちに必要だ」
半沢は満足そうに頷いた。
「一方で、馬場は大人しいな」
「はい…緊張していて。すみません」
宇佐美はぎこちない作り笑いを浮かべた。
「何も緊張することはない。私たちは、日本を自由で平等で、そして軍事的にも強い国にする、その一つの目標に向かって動いている」
黒沼は静かに続けた。
「そのためのルールは三つだ。
一つ目、目標に向かって全身全霊で努力すること。
二つ目、仲間同士で傷つけ合わず、すべてにおいて協力すること。
そして三つ目、これは特に大事だ」
黒沼が言葉を切ると、二人は思わず唾を飲み込んだ。
「裏切り者は、死す」
その瞬間、二人の顔からみるみる血の気が引いたのだった。




