File No.2 傷つけられたプライド
「何で…ですか?」
井中は、絶望的な声で言った。
「ああ、公安部の人員が不足していてな。それで、捜査一課の中から選ぶことになった。君が一番適任だと思って、君を選んだんだ」
渡邉は、どこか嬉しそうに言った。
「嫌…」
「君に拒否権はない。これは警視総監の命令だ。今、公安部は君を必要としている」
井中の言葉を遮るように、渡邉が言った。
「え?ちょ、待っ…もう最悪…」
井中は、途轍もない絶望を滲ませて呟いた。
「いいじゃないか。僕にとっては、羨ましい話だぞ」
渡邉は、相変わらず楽しそうだった。
ーああ、終わった。
王様気取りしていられた日々は、もう二度と戻らないー
井中は、心の中でそう呟き、深く絶望していた。
その後、井中は荷物をまとめ、渡邉と共にエレベーターで公安部本部の14階へと移動した。
そして、本部の中へ足を踏み入れた。
すると、年配の女性捜査官・厳花正子が、鋭い目つきで井中に声をかけた。
「こんにちは、井中さん」
しかし、井中は怪訝そうな目で厳花を見つめるだけだった。
次の瞬間、厳花が突然怒鳴った。
「返事は!?」
「こ…こんにちは…」
井中は怖気づき、か細い声で答えた。
「よろしい。では質問だ。公安部が、あなたを選んだ理由は何?」
唐突な問いに、井中は一瞬言葉に詰まった。
「理由は…俺が天才だから…」
「自惚れるな!」
厳花は即座に言い放った。
「ここでは、お前は天才でも何でもない、ただのド素人だ。警視総監がお前を選んだ理由はたただ一つ、利用しやすいから。それだけだ」
その言葉は、容赦なく井中のプライドを踏みにじった。
すると、井中の顔はみるみる鬼の形相に変わっていった。
「何だとーーー!!!」
井中は、ついに堪えきれず、激昂してしまったのだった。




