File No.14 極秘作戦
「え?そんな、いいの?」
小丸は戸惑いながらそう聞いた。
「ああ、別にいいぞ」
加江田は平然と言った。
すると宇佐美が、慌てて加江田を止めようとする。
「ちょっと、加江田さん。そんな取引が認められるわけ…」
「や、やる!」
「え?」
小丸が即座に取引に乗ると、宇佐美は思わず言葉を失った。
「よし、それじゃあ決まりだな」
加江田は満足そうに言った。
「いや、第一公安部の極秘情報を、一般人、しかもリベルタスのメンバーに教えるなんて、おかしいじゃないですか」
宇佐美は心配そうに食い下がった。
「大丈夫だ。こいつなら信頼できる」
加江田はあっさりと言った。
「…はあ、分かりました。でも責任は、あなた自身が取ってくださいね」
説得を諦めた宇佐美は、ついに折れた。
「はいはい。じゃあまず、今日のリベルタスの役目が終わったら、一度警視庁に来てくれないか。別に逮捕するわけじゃない。重要参考人として、だ」
加江田は小丸にそう頼んだ。
「分かりました」
その後、三人のリベルタスとしての役目が終わると、
「ありがとうございましたー」
と挨拶をして、倉庫を後にした。
すると…
「川本。お前、いつも馬場と一緒なのに、今日は珍しくチビもいるじゃないか。どうした?」
黒沼が意地悪そうに声をかけてきた。
「いえ、今日は三人で飲もうという話で…」
加江田は苦笑いで答えた。
「そうか。でも明日もあるんだから、あんまり飲みすぎるなよ。じゃあな」
「失礼いたします」
三人はそう言って、その場を離れた。
そして車に乗り込み、東京へ向かった。
やがて警視庁に到着した。
「さあ、降りて」
宇佐美に促され、小丸は車を降りた。
「ここが…警視庁…怖いなあ」
小丸は怯えたように呟いた。
「大丈夫。あなたは重要参考人よ。むしろ重宝されるわ」
宇佐美はそう言って、小丸を安心させた。
「行くわよ」
三人は中に入り、エレベーターで公安部本部の十四階へ向かい、小丸を取調室へ案内した。
「まず、俺たちはリベルタスの全メンバーの個人情報が記されたファイルを探している。その場所を知っているか?」
加江田が尋ねた。
「ああ。それなら、大阪支部の地下シェルターにあるパソコンの中だよ。でも管理室の警備はめちゃくちゃ厳しい。盗むのは、無理に近い…」
「だからこそ、作戦を立てる。小丸、大阪支局には行ったことがあるか?」
加江田は話を遮って言った。
「ある。というか、一カ月前、そこに従属させられていたから」
「じゃあ、地図を書いてくれ。できるだけ細かく」
そう言って紙とペンを渡すと、小丸は描き始めた。
しばらくして、描き終える。
「だいたい、こんな感じだね」
「分かった。基本構造は横浜の倉庫と同じで、長四角の広い空間。地下シェルターへ通じる階段は、正面奥だな」
その言葉に、小丸は首を振った。
「でも、慰労会みたいに人が多い場所で、目立たずそこへ行くのは怪しい。だから行くとしたら、右隅にある研究室から通じる道しかない。でも研究室は警備員がいて、大阪支局のメンバーしか入れないんだ」
「…支局のメンバーに変装する、か」
「そう。結局それしかない。僕、団服を持ってるから加江田さんに貸します。ただ一着しかないので、研究室に行けるのは加江田さんだけだよ」
「分かった。で、研究室に入ったらどうする?」
「中に入ったら階段を降りて、右、左、右、右、最後に左へ曲がる。突き当たりの扉で、四桁のパスワードを入力する」
「そのパスワードは?」
「事務室の局長、赤崎のデスクのどこかに、メモが隠されてるはず。一カ月前、同じメンバーが悪ふざけでデスクを荒らしてたときに、メモらしきものを見たって言ってた」
「事務室は外から見える構造か?」
「はい」
「じゃあ宇佐美さん、タイミングを見て事務室に入って、パスワードのメモを探してくれ」
「やるわ。でも加江田さん、リーダーでもないのにリーダーぶって、正直カッコ悪いわよ」
宇佐美はニヤリと笑って言った。
その瞬間、加江田は露骨に顔を赤らめた。
「い、いいだろ…別に…」
「バカみたい」
「なんだとー!」
加江田が声を荒げると、小丸は微笑ましそうに言った。
「お二人、仲が良くていいですね」
「え?」
二人は同時に小丸を見た。
「だって、こんなふうに言い合える関係、僕にはすごく羨ましいから」




