File No.12 号泣
すると宇佐美は、途端に口を開き、加江田を庇うように言った。
「リーダー。彼は、陥れようとしてやったのではありません。助けるために行動したんです」
「は?どういうことだよ?」
黒沼は苛立ちを隠さず、宇佐美に問い返した。
「今朝、すべての証拠を絶対に見つからない場所に隠しましたよね?」
宇佐美は落ち着いた口調で続けた。
「つまり、捜査が入っても証拠は見つからない。実際、何も見つからなかった。その状況で、わざわざ捜査官の立ち入りを拒む理由はありません。もし拒めば、かえって怪しまれるだけです。川本はそこまで読んだうえで、この行動に踏み込んだのです」
説明を聞き終え、半沢はしばらく黙り込んだ後、納得したように言った。
「理由は分かった。だが川本、次からは二度と独断で動くな。いいな?」
黒沼はそう言って、加江田に釘を刺した。
「…はい。分かりました」
加江田は不服そうに、ぼそりと答えた。
宇佐美は「ふぅ」と小さく息を吐き、胸を撫で下ろす。
それからしばらくの間、二人はリベルタスの下っ端として、爆発装置の開発を手伝うふりを続けていた。
「川本、ニトログリセリンの薬瓶を持ってこい」
「馬場、ペンチだ」
「川本、火薬の袋もだ」
「はい、分かりました!」
二人はへとへとになりながら、ひたすら命令に従い続けた。
そして一週間後、二人は突然、半沢に呼び出された。
「川本!馬場!」
「はい?何でしょう?」
二人は顔を見合わせ、不思議そうに答えた。
「明日、リベルタスの大阪支部に出張に行ってくれないか?」
黒沼は二人に頼んだ。
「え? いいですけど、何でですか?」
加江田が不思議そうに尋ねた。
「明日、大阪支局で慰労会が秘密裏に開かれる。せっかくだから、我が偉大なるリベルタスの祝典に参加してもらおうと思ってな。君たちと、もう一人の下っ端に参加してもらいたい。それに、大阪支局長の赤崎ジョンソンへの挨拶も兼ねている。ぜひ一度会ってみてほしい。きっと感銘を受けるはずだ。どうだ?」
「…まあ…いいですよ」
二人は内心では気が進まなかったが、仕方なく引き受けた。
その日の昼、明日大阪へ出張する予定の加江田と宇佐美は、横浜駅前のマークドナルドという店で、ボサボサ頭にタレ目の若い男性、小丸翔太と一緒にハンバーガーを食べていた。
すると突然、小丸が泣き出した。
「もうこんな生活やだあ!!」
「大丈夫ですか?」
宇佐美は、心配そうに聞いた。
しかし彼の号泣は一向に収まらなかった。
思わぬ展開に、二人は困り果ててしまったのだった。




