File No.1 突然の異動
この物語を、陰でこの世界を支えてくれている全ての人々に捧げます。
殺人事件の現場となった寝室に、背の高い若い男性、井中蛙介警部が立っていた。
彼はしばらく死体を見つめた後、突然こう言った。
「ああ、もう分かりました。犯人は、あなた、草薙美智子さんですよね?」
その場にいた全員が驚いた。
「なぜ、そうだと分かるんだ?」
警視の渡邉大輔が、不思議そうに尋ねた。
「だって、犯人は、夜の犯行の際に携帯電話を使って明かりを取っていたと考えられます。なぜなら、片手でなければ、こんな角度からナイフを突き立てることはできないからです。そしてこの家で、携帯電話を所持していたのはただ一人、美智子さん、あなただけです。つまり、犯人はあなたです」
その瞬間、美智子は現行犯逮捕された。
井中蛙介は、数々の難事件を解決してきた、まさに天才だった。
「やっぱ井中はすげーな」
「さすが天才カエルだなあ」
周囲の刑事たちは皆、彼を尊敬し、憧れていた。
井中は有頂天になっていた。
ー最強の地位を手に入れた。もう二度と、捜査一課を離れたくないー
そう願う程だった。
しかし、人生には何が起こるか分からないものである。
それは、彼自身の身にも降りかかった。
ある春の日の朝、井中が出勤すると、渡邉が突然声をかけてきた。
「井中、すまないが…明日から公安部に異動してくれ」
井中は、一瞬、言葉の意味を理解できず、呆然と立ち尽くした。
そして次の瞬間、こう叫んだ。
「えーーーっ!?」
彼は、途轍もなく驚いたのであった。




