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金色のひまわり亭にいらっしゃい♪ きのこ鍋っ子、腹ぺこちゃん  作者: 門戸
◆パンダル・ササタベーナ先生の会食◆
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60. 会談は、難航するもよう

・ ・ ・



「……ごぶさたしています」



 つなげた卓子の向こう側席から、静かに見つめてくるササタベーナの視線がある。


 それを動じずに受け止めつつ、しかし感情のわからない平らかな表情にて、若い医師はぼそりと言った。



「医療にたずさわる人が、とにかく忙しいと言うことは知っています。だからこうしてここに来てくれただけでも、もう私は本当にありがたいと思う。お母さんとは、もう少しやりとりしてくれたら嬉しいけれど」


「……オーレイは、元気にしていますか」



 少しだけ視線を伏せて、フィン医師は問うた。



「ええ、元気ですよ。キュリちゃんも」


「よかった~」



 野太い声で囁くように、医師の横の用心棒エアンがほっこり言った。手に持つ白湯さゆの湯のみが、異様に小さく見えている。



「俺は、戻るつもりはないんです。あいつにおっかぶせるようで申し訳ないけれど……。俺はいなくなったもの、と。皆にはそういう風に、考えてもらいたいんです」



 振り絞るようにして、フィン医師は言った。


 ふは~、……ササタベーナはぐにゃりと頭をうなだれて、知的なため息をつく。



「御方グラーニャからも聞いたけど。いちど決めたら譲らないところは、やはり変わってないのですね。君は……」


「すみません」


「……私個人としてはね。そういう君の突っ張りを、応援したいんです。けどね、旅立っていった時に皆が君にかけた期待と応援とは、どうなります? ……普通のお宅であれば、そういう方向転換もありだと、受け入れられもするでしょうけど。場合が場合だし、難しいですよ」


「その辺もわかっています。……エアン」


「はいはい、若様」



 横の用心棒は、持っていた革かばんから布包みを取り出した。フィンはそれを受け取って、ずいーとササタベーナの前に差し出す。



「何です、これ?」


「国費でティルムン留学させてもらった費用を、一生かけて返済しようと思って。とりあえず今いっぱいいっぱいの一割分くらいを、現金でかき集めてきました。すいませんが、持ち帰ってもらっていいですか」


「うええええっ、ちょ、ちょっとおおおおおっっ」



 こんな大金、触ったこともないササタベーナである!


 びりびり雷撃でも受けたかのように、布包みからぱっと手を離して身を震わせた。



「困りますよッ」


「でも他に、どうやって返金したらいいのかわからないんです。エノ軍は全員に給与現金払いだし、こっちの金融機関に口座を作ったけどフィン・ナ・シオナ名義だし。小切手を送るのもどうかと思って」


「……いや。名義はどうでも、一度口座を作っちゃって機能すれば、送金すること自体はできると思いますよ~??」



 ササタベーナの横で、ロランが冷静に言及する。



「エノ軍下のテルポシエで、そのお名前ですでに身分証を取得されてるんでしょう? 個人間のやりとりであれば、他のイリー諸国の金融機関とも互換性はもちろんあります。実際僕も、ここ何年かにテルポシエの人から古書を買い取ったり、売ったりしていますから」


「あ、そうなんですかロランさん? それじゃあ以降の分は、小切手で送って……。振出人を母にしたらいいですかね」


「ちょっとー、事務的にさくさく話を進めないでくださいってば」



 ササタベーナは慌てかけた。


 と、そこへふわーんと良い匂いが漂ってくる……。



「お待たせしました! 本日の日替わり鍋・山。≪谷きのこ満喫汁≫でございます」



 明るく華やかに言いつつ、エリンがお盆にのせてきたどんぶり鉢皿を、一同の前に置いてゆく。


 一緒についてきたミオナは、慎重に学者先生の分を置いた。


 大丈夫かい? とササタベーナが問うた視線に、東部系の少女は小さく、こくっとうなづいた。



――ナイアル君は、お巡りさん呼びに最寄り派出所に走ってるし! 代役、がっつりこなすの!!



 玄関先で、山賊にいきなり頭をわしづかみにされた時は、あんまりおっかなくってつい泣いてしまった。


 けれど間を置かずにナイアルが助けてくれたし、ぎゅう抱きしてくれたし、ついでにお前は偉いぞうと頭てっぺんにぶちゅう・・・・としてくれたので、今のミオナはどっちかと言うとやる気にみち満ちているのである。



「たいへん熱くなっていますので、どうかお気をつけください。お代わりもございますので、お気軽に申し付けてくださいね」


「今すぐ、ぱん籠をお持ちしますっっ」



 はんなり女将とけなげ少女が行ってしまうと、ササタベーナはす~と静かにため息をつく。鉢から立ちのぼる湯気がゆれた。



「……とにかく、いただきましょうか」



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