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41. おしゃれ都会に鴨ねぎ、カモーン!

・ ・ ・ 



 やがて午後四つの時鐘が鳴るころ、一行はガーティンロー大市に到着した。


 派手な臙脂えんじ色外套を着た衛兵役のガーティンロー騎士に身分証を見せ、市壁のそばにある公共厩舎に馬車を入れる。


 ナイアル父は仕入れ先へ行き、副長は死神隊長とともに馬の世話をする。(※方向感覚を必要としないから、ダンも生きものの世話はできる。)


 外に出たところでは、獣人と料理人とがでこぼこと並んで突っ立っていた。



「ほんじゃあ皆、いくぞー。大将、離れんとついてきてくださいよー?」


「ナイアルさん! 待ち合わせ場所のガーティンロー市庁舎がどこにあるのか、知ってるんですか~?」


「うむ、アンリ。俺はここにはたびたび来ているからな。主要な施設くらいは、だいたい知っている」



 そう言いつつ迷いなき足取りにて、ナイアルは門前大路を歩き出した。


 アンリとビセンテ、ダンはその後ろをもそもそと追う。



――うわあ、赤い街並みだなあ……! 遠目に見ても、赤い屋根の建物が目立っていたけど。中に入ると、もうその辺あかい花ばっかしだ~!



 自身の好きな色も赤であるアンリは、ナイアルの背後できょろきょろしながら感心した。ここへ来るのは初めてなのである。


 実家にいた頃、テルポシエに出張してくるガーティンロー商人や貴族たちに給仕をしていたから、この国の人びとがどんな性質を持っているのか多少知ってはいたが。


 ばりっと目につくガーティンロー騎士の臙脂えんじ色外套と同様、イリー人にしては、はっきり派手な色の衣を好んで着る者が多い。婦人は老若ともに、きらびやかな細工ものを身に着けるのが大好きだ。


 そもそもガーティンローの主要産業は、領内で豊富に産出される貴石なのである。


 磨き上げと加工、装飾の仕上げまで、美しい石にかかわる企業と職人工房が首邑みやこに集中していた。


 翠玉すいぎょく瑠璃るり柘榴石ざくろいし、さまざまな水晶に縞瑪瑙しまめのう琥珀こはく……。


 多岐にわたる原石が地中から掘り出され、磨き上げられて各所へと運ばれてゆく。イリー都市国家群のみならず、遠くティルムンや北部穀倉地帯にも輸出されて、ガーティンローの貴石商は莫大な利益を得ていた。そこに基盤をおく当地の経済は潤って、ガーティンローはオーランに次ぐ、イリー屈指の富裕国なのである。


 いま四人が行く大路にも、その潤沢な経済背景……お金持ちっぷりがふんだんに表れていた。


 広い石だたみの舗装路はよくよく維持されて、どこまでも平らか。両脇に軒を連ねる大型商店や事務所の門構えは、強固かつ装飾絢爛な石壁をそびやかしている。長方形の花壇が街路樹の間に配置されて、赤い花があふれ咲いていた。


 ガーティンロー市民は、赤が大好きなのだ。自分たちの中を流れる熱い血潮と生命の色! ガーティンロー商人たちが商売にかける、情熱そのものの色とも言える。


 大路の広さ美しさで言ったら、戦前のテルポシエの方が上手うわてだったのだが、それはつめたさを伴う均整の美であったのかもしれない。ここまで熱っくるしい……いやいや、生気あふれる勢いではなかった。


 どっちみち、エノ軍占領下の十数年間にテルポシエの街は少々すさんだ。


 それでも高貴族の気どりと、その機嫌とりがなくなった分、住民……庶民たちは気楽と思っているふしがあるけれども。


 ナイアルはしゃかしゃか歩いて、ガーティンロー大市の中心部へと近づいてゆく。



「はッ! お城ですね!?」



 背の高い建物をいくつも過ぎ越した後、いきなり広くひらけた前方の景色に、アンリはつい声を上げた。


 堀の水辺が遊歩道となっている。その向こうに、真っ赤な宮城きゅうじょうが輝くようだった。みやぎではないぞ。



「きれいなもんですねー! 赤い石材を使っているんでしょうか?」


「これこれ、アンリ。おのぼり丸出しで感嘆してはいかん。田舎者とみなされ、すりの格好のかも・・にされてしまうぞ」


「え~? そんなの、ティー・ハルで返り討ちですよ。かもはねぎしょって、おとつい来やがれって言うかぁ」


「ほれ、衛兵のガーティンロー騎士がわんさかいるから、びしッとしとけ」



 市の外側からも見ることのできるテルポシエ本城と比べると、ガーティンロー城の規模は小さい。しかし目にあざやかな赤い存在感は、豊かなガーティンローの国力を見せつけるようだった。



「でもって、市庁舎が見えてきたぞ」


「おおう、フリガン侯との待ち合わせ場所らんでぶー



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