表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/66

28. 獣人&料理人、でこぼこアクション

 ぎりーん!! 


 単独、格子柵のわなから脱出した獣人ビセンテは、目の前の男たちにするどく眼光がんを飛ばす。



「げえっ、出て来やがった!」



 そこではけむり玉の煙幕に巻かれた≪木の子の会≫の男たちが、ようやく要員を補充して計八人になったところだった。



「囲って捕まえろ!」



 三人がビセンテに向かってきた。


 獣人の後ろではナイアルとアンリ、ダンの三人がびしばし柵を打って蹴って、どうにか脱出口を広げようと奮闘している。


 ※ダンが通れる大きさにしないといけないのである。ついてく専門の隊長を、置き去りにするのはよくない。



 ≪木の子の会≫の男たちはそれぞれ、長短の棒を手にしていた。山仕事をする人が使うような、ごついやつだ。それを真ん中の一人が、ビセンテの胸に向かってするどく突き出す!


 ずっっっ。


 しかし棒は、逆にビセンテの左脇に抱きとられた。間髪入れず、獣人は左脚を折ってひょいと上げる、ばこん!


 ビセンテの左膝が棒の中央部分を打ち、ずるっと手放した持ち主のあごを、握り部分が直撃した。



「ぎゃっっ」



 たまらず、男はのけぞるようにして後ろへ下がる。


 それに一瞬気を取られた右側の男に向かって、ビセンテはふわりとかがんだ。


 しゅぱーん!!



「うわああっ……」



 ああ見事すぎる足払い、男は慌てて体勢を立て直そうとしたが……もう遅い。


 一人目から奪い取った棒で、ビセンテはこの男の棍棒をぐきっと封じた。かろうじて均衡を保っていた男の右脚ひざを、無造作にがくっと蹴りつける。


 ぐっしゃん!


 二人目は勢いよく石床に叩きつけられて、白眼をむいた。


 その隙に、とビセンテの背中に向かって大きく棒を振り上げた三人目の男は、なかば勝利を確信していた。同僚ふたりよ済まぬ、お前らの尊い犠牲により俺がいまこいつを討つっ――



 ずどーんっっ!!


 きらっと閃光のごときすばやさで、振り向いた獣人。そのままの勢い回転にて繰り出されたうしろ回し蹴りを、あき空きの右脇腹に叩きこまれて、男はぼよんと左方向へすっ飛ばされていった。


 ぴたり!


 獣人の≪黄金の右脚≫が、その蹴入ったところで宙に停止している……左足いっぽん立ち。


 からん、とビセンテは奪い取った棒を放った。



「いいぞビセンテ! ここまでにのしてきた外のやつら同様、相手はただの雇われ山男だが。かすられもせずに三人同時制圧はさすがだ」



 ぞろぞろ、とことこ、のしのし……。脱出口をこじ開けて、ようやく出られたナイアル・アンリ・ダンの三人がビセンテの背後につく。



「し・か~し! その向こうで中剣を構えている第二波、こちらは少々ちがうようですね!」



 不敵な笑みをてかり顔に浮かべて、まだまだ燃えている柵を背にアンリは言い放った。



「そういうこったな。城の用心棒、流れの傭兵つうところか」


「くっくっく。どっちみち、悪に加担していることに変わりはありません。俺とティー・ハルが、がっつり焼き目を入れてやりましょう」



 がちッ! アンリは背中に手をまわし、相棒の平鍋を握った!



「大将。今回も引き続き、殺したらだめっすよ。なぎなた刃はつけないで、普通の長槍使用でたのんます」



 ナイアルに言われて、ダンはちょっとしゅんとした。


 すんごく映える自己流つけ刃おぷしょんなのに、最近ぜんぜん出番がない……。まぁここ狭いし、壁とかにつっかえて刃こぼれすんの嫌だから仕方ないか、と死神隊長は自分に言い聞かせた。



 すっ!


 きのこ城の傭兵が一人、端にいるアンリに向かってきた。


 隙のない動きで一撃二撃……と目くらましのように中剣をひらめかす。


 みかけ愚鈍そうな(ひどーい)料理人は、しかし動じずに、ふいふい的確な間合いを保ってそれをよける。そして、がきん!


 首筋への中剣一刀を、平鍋ふちで力強く受けた!


 剣どうしで言ったらつばぜり合いと言うのだろうが、一方が鍋の場合なんと書けばよいのだ!?


 ぐぐぐぐ……。しかし互いの武器を境に迫り合った傭兵とアンリ、料理人の頬のてかりが激しすぎて、傭兵は思わず目を細める。まぶしい。


 と、その時!



「ぎゃああああ、しまったああああ」



 すっとんきょうな絶叫とともに、アンリはがくっと力を抜いた。


 拮抗していた力をいきなり失って、傭兵はぎょっとするも本能的にいったん退くことにする。


 ぱっこーん!!!


 そこに平鍋の底がひるがえって、ちょうどびんた・・・を張るように傭兵の側頭をはたき倒した。どさッ!



「やぁだぁ、山きじの脂がちゃんと取れてな~~い!! ごめんよティー・ハル、さっき慌てて洗っちゃったからねえ……」



 脳震盪を起こした傭兵を、みじかめの足でぐいっと横にのけて、アンリは平鍋の心配しかしていない。


 そこへ、隙をついたつもりで躍りかかってきた別の傭兵がいると言うのに! ああ、危ない料理人っ……。



「燃えよ、ーーっっっ」



 だがしかし、中剣の上段一撃が振り下ろされたその刹那。敵傭兵の顔面に、鍋底がめりこんでいた……どさり。



「焼き目ぇーッッッ」



 ぺかぺか焼きたて頬を輝かせながら咆える料理人の脇では、ナイアルががら・・の悪そうな傭兵と対峙している。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ