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27. まずは隊長のガジェット攻撃をくらえ!

 がしょーん、かしょーーん!!!


 四人の前後に、廊下の天井から柵が落っこちて来た。出るに出られない木格子である!



「げえっ、何じゃこりゃッ」


「おおお~う!? 古城や遺跡にありがちな、ひみつのからくり仕掛け! 何ということでしょう、≪第十三遊撃隊≫はわな・・の中に閉じ込められてしまいましたーッ。さすがの野生児ビセンテさんも、文明的な策略は毛先で感知できなかったとみえますッ」



 かっかっかっか……。


 アンリの熱くるしい実況中継に、乾いた足音が割り込んで来た。



「妙なのが入り込んで来たと思ったら。お前、やはり間諜であったか」



 廊下の曲がり角から現れたのは、≪木の子の会≫かしら役の老人である。手に手に武器と燭台とをたずさえた、屈強なる四人の男たちがその周りを囲んでいた。



「にしては、やたら簡単に引っかかったのう。どこの手の者だ? 誰ぞを取返しにきた、採集人の身内どもか」


「……」



 ナイアルは答えずに、柵の向こうの老人をぎょろ目で見据えている。



「まあ、同じ穴のうさぎだな。お前らも全員、地下のきのこ栽培場で使役させてやろう。終身刑だ……くくくくく」



 ふはははは……実に悪役らしく老人が含み笑いをするその裏で、ナイアルはぼそりと背後のダンに話しかけた。



「……どうっすか、大将。想定訓練の十九番で、行けそうっすかね?」


「たぶん」


「よし。……さがれ、ビセンテ!」



 くいっ! 獣人が後ろに、変わってナイアルが前方の格子に向かい踏み出した。


 その手から投げられた小さな何かが、木材を組み合わせて作られた格子の隙間を通り、老人と配下のほうへと飛んで行く。


 ぼふっっ!!



「うわっ」


「わああっ!?」



 老人の配下たちの足もと、石床に勢いよくぶつかった≪けむり玉≫は、またたく間にもくもくと厚い煙幕を立ち上げる。


 多様性を視野にいれた武器・援護器具の改良を常時おこなっている、隊長ダンの自信作。たまご殻の中に灰とクマホコリダケの粉末を詰めた、めくらまし道具である! いまアンリが、張り切って頬をぺからせた。



「はい、ここで説明しときましょう! クマホコリダケと言うのは、食用にならず毒性もないきのこの一種です。生がわきの状態で強い圧力を加えると、胞子をまき散らして爆発するという特徴で知られています! こどもは遊びやいたずらに活用していますが、うちの隊長は敵をかく乱するためのひみつ道具にしているのですッ」



 そのけむり爆発を満足微笑で確認しつつ(こわい)、ダンは自分の革鎧の脇から細い素焼きびんを取り出し、すばやくふたを取った。


 かちかちかちかちッ、ものすごい速さでアンリが火打ち石をぶっ叩く!



「着っ火ぁぁぁッッ」



 石、およびアンリの熱くるしいてかり頬から、火花が飛び散る。ダンの手中のびん口に突っ込まれた布に、その火が乗り移った……ぼうッ!


 死神隊長は長ーい腕を振りかぶる。高ーいところより、その炎のついた瓶を柵に向かって叩きつけた。思いっきり!


 がちゃん、ぶわあっっ!!


 火炎びんの爆発は、ばかにできない衝撃とともに木の格子にぶつかった。くわっと燃え広がる赤い炎を前にして、ナイアル・アンリとダンはさっと一歩ひく。ビセンテだけがずーっと後方、もう一方の木格子にまで後退していた。



――ふふふふふ、瓶の中身はすっごい高い濃いりんご蒸留酒。よくはずむぅ。



 ぎんぎら業火に、ダンの充血双眸が照り返して……わりと恐怖ほらー!!



「うわあっ。何だこりゃ、火事だ!」


「あいつらがやったのか!?」


「とにかく水を持ってこいっ」


「いやかしら、厨房離れの井戸はむこう側っすよ!」



 ≪木の子の会≫の面々は、予期せぬ四人の抵抗にだいぶ焦っているらしい。


 木の格子柵がどんどん燃えさかってゆく中で、≪第十三遊撃隊≫はその瞬間を見極めつつあった。



「ナイアルさん! もうそろそろ、いいんじゃないですかね~! あの下の方とか!」


「そうだな! ゆけ、ビセンテっ」



 一瞬、反対側の柵に背中をもたせかけてから……炎に向かって、ビセンテはとび出した!


 がっしゅーんっっっ!!!


 両足そろえての跳び蹴り、≪第十三≫最強打撃力を誇るビセンテのかかと・・・を食らって、焼ける木の格子柵はぎしぎしときしむ。


 しかしさすがに一撃破壊とはならなくて、ビセンテはすたっと跳ね返ってから着地した。


 ばふばふーッ!! 獣人の股引ももひきすそにうつりかけた小さな火を、ナイアルが脱いだ迷彩外套ですかさずはたき消す。



「うおぅらああああッッ」



 炎に照らされ全身まっかに染まった料理人が、火消しのごとくに手斧で同じ箇所に打ち込みをかけた。ばきいいいっ。


 いや違った、打ち込んでいるのは腰にこっそり装備しておいた肉切り包丁である! なんだかもう、ほとんど斧なのだが。


 ずどん! そのあと代わって、ダンも山刀で打ち込んだ。こういう力まかせの攻撃に、自慢の手作り長槍を使いたくはない!



「ビセンテ第二撃、いけえっっっ」



 ナイアルの声に重なるように、ひゅーんとビセンテが後方から跳んだ。


 燃えさかる炎に包まれた木の格子柵、そこに再び炸裂する獣人かかと×2!


 ばりりりりりッ。


 この猛攻に、格子柵は敗北するしかなかった。


 ビセンテの身体は柵を突き抜け、格子の間にあいた穴の向こうへ。


 しゃがみ込むようにしなやかに着地した瞬間、ぎりーん!! 獣人は男たちに、野生の眼光がんを飛ばす。



「おおおおう、単独脱出に成功したビセンテさん! 次回、獣人の華麗なる殺陣たてが展開されますので、みなさんどうぞお楽しみにッ」


「これアンリ! 実況中継しとらんで、とっとと脱出口を広げんかッ」



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