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7 勇者カインの没落1(仕込み)

ギルド長室の前で立ち止まり、


入室の許可をもらっていた。



おいおい、さっさとしてくれよ。


こっちは疲れてるんだよ。



わりと早くに扉は開かれた。


すると、


まず、目に入ったのは大きな膨らみ。


手のひらで掴みきれないであろうそれが、


歩く度にかすかに震えている。


まず目についてしまったのは、それだったが、


ほかも素晴らしい。


腰や尻はもちろんのこと、


どこか紫がかった髪、


ぽってりと膨らんだ柔らかそうな唇、


垂れ目の端にあるホクロ…じゅるり…。


おっと、いかんいかん、


今、ギルド長に手なんか出したら、


俺の身が破滅してしまうかもしれない。


けどいずれは…などと妄想していると、


やたらと色っぽいギルド長が、こちらへとだいぶ近づいていた。


「おお、来たか来たか、


ようこそお越しを、勇者様、聖女様。」


どこか老齢な話し方をするギルド長になんとか平静を保ち、返す。


「ああ、ギルド長、お出迎えご苦労。」


「な〜に気にするでない。


こちらこそ、勇者様をお呼びしてしまい申し訳ない。


儂としては、光秀の報告だけで、


問題はないと言っておいたのじゃがな。


っと、何をしておる。


さっさとお茶をお出しせんかっ!


ささ、どうぞこちらへ。」


ん?となにか引っかかりを覚えつつも、


促されるままに、


来客用ソファにアンナと二人腰を下ろすと、


秘書が急いで、冷たいお茶を持ってきた。


「いえ、お構いなく。」


「いや、そうおっしゃらず。


長旅だったじゃろう?


喉が渇いておられると思うのじゃが、ささ、どうぞ。


氷も入っていて喉越しが最高ですぞ。」


アンナと顔を合わせ、


「それでは。」


と、二人同時に飲み干すと、生き返ったような気分になった。


その様子にどこか嬉しそうなギルド長は話を切り出した。


「さっきも言ったように、儂としても報告は、


光秀のやつのだけで問題はないと判断したのじゃが…。」


「ん?光秀の?」


その瞬間、サアっと血の気が引く。


「み、光秀はどのような報告をなさったのですか!」


アンナが俺が聞くより早くに聞く。


それに俺も耳を傾けた。


ギルド長は資料を手に取り、読み上げる。


「別に、普通のことじゃよ。


スケリトルドラゴンの襲撃に遭い、


光秀はギルド救援のため、先んじて撤退。


勇者様たちも撤退しようとしたが、


できずに交戦。


生存者は不明ということらしいの。以上じゃ。」


そこには、勇者の判断ミスも、


考えてみれば当然のことだが二人を見殺しにしたことも書かれてはいなかった。



ギルド長の言葉に俺とアンナはそっと安堵の溜め息を吐く。


どうやら光秀のやつ、気を利かせたらしい。


今回のことは水に流して、


パーティーに戻してやってもいいと考えていると、


ふと頭がぼんやりとしてきた。


「あれ?」


視線を向けるとアンナはすやすやと眠っていて…。


「どうかしましたかな?勇者殿?」


どこか楽しそうなギルド長の声が聞こえてきて…。


そこからの記憶はない。



気がつくと俺は馬車の中にいた。


対面には見覚えのある屈強な男と。


「久しいな、勇者。」


「む?光秀?ここは?」


「ああ、馬車の中だよ。」


馬車?


見に覚えがない。


俺は確かギルドで…?


なぜだかわからないが記憶がはっきりとしない。


考えるのをやめて、光秀に尋ねる。


「馬車とはどういう?」


そう俺が聞いているにも関わらず、


光秀は話し始めた。


「くくっ、コードネーム光秀って、面白いよな?


前世でこんな名前付けたら、一発だってのに。


こっちでは誰も気が付かないんだぜ?」


くくと笑う光秀にカインはポカンと口を開く。


印象が違いすぎる。


戦いの事以外、基本言葉を発せず、


しつこく話しかければ帰っては来るが、


煩わしげで一言二言で会話は終わってしまったというのに…。


「ん?どうしたよ、勇者。


俺が喋っているのがそんなに珍しいか?


俺は元来おしゃべりなんだよ。


でもよ、()()のボロ出すわけにはいかねぇから、


基本どんなときも無口キャラを演じてんだわ。」


「任務ってなんの…?」


光秀の顔が楽しげに歪む。


「決まってんだろ、


そりゃあ…っと、話はここまでだ。」


馬車が止まった。


どうやら目的地についたようだ。


俺の疑問には答えず、光秀は馬車を降りていく。



「そんじゃあ、あとは任せるぜ、おっさん。」


誰かに光秀が肩に乗せたが、すぐさま手は払われた。


「ちっ!」


聞こえてきたのは、盛大な舌打ちと、


離れていく光秀の笑い声。


「失礼する。」


簡潔な言葉とともに、


光秀のかわりに馬車に入ってきたのは、


この国の将軍にして、最強の男、


ランスロット・ミゲルナだった。



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