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23 割れたので、新しい仮面を買いに行く

アレンが城に仕掛けられた罠に落ちてしまった。


その位置は確か、リズベットも踏んでいたし、


問題などなかったはずだったのにそれは起こった。


急にそこが扉のように開き、そして下へとまっすぐに…。


とっさだったせいか、リズベットだけでなくカレンも手を伸ばしたが、


間に合わなかった。


カレンが取り乱し、すぐに助けを呼びに行くことを提案したが、


リズベットは魔力のパスが繋がっていたため、


アレンの無事を確認していたので、


それは早急だと判断し、この場で待つことを提案した。


「…かしこまりました。」


カレンはなにか言いたげにしていたが、


すぐにリズベットの言うことに従った。


アレンがいなければ、カレンはリズベットの命令に従順なのである。


それからしばらく、何が起こるわけでもなく、


ただただ時間のみが過ぎていった。


日が暮れ始め、


カレンが痺れを切らし始めたときに、それは起こったのだ。


下の方からなにかが駆け上がるような音が聞こえたと思ったら、


アレンが落ちた辺りが吹き飛んだ。


煙が舞い上がり、


それが消え去ると、


そこには…。


「ただいま、リズベット、カレン。」


私達が帰還を待ち望んでいた少年がいたのだった。


アレンはラミアスから下ろされると、


カレンに飛びつかれ、


縋りつくように泣かれてしまったり、


それが終わったと思うと、リズベットにギュッと抱きしめられたりと、


心配されて申し訳ないと思う反面どこか暖かくて嬉しかった。



「ところでアレン、そちらの方は?」


すると、アレンとラミアスの目が合った。


アレンだけでなくラミアスもどうしようという顔をしていた。


リズベットには知られてしまっているため、


ラミアスの正体を明かそうが問題はないだろうが、


カレンは別だ。


彼女にはまだアレンの能力を明かしてはいない。


理由としては、彼女には死霊魔術を使っていないため、


口封じができないからだ。


彼女は公爵家の人間のため、


もしアレンのことを問い詰められれば、


口を開かざる負えない。


そんなことでカレンを苦しませたくない。


そのため、本当に誰にも知られてはいけないことは明かさないでおいてあるのだ。


だから、彼女がラミアスであると知られるのはまずい。


なし崩し的にアレンは自分の能力を話さねばならなくなるだろうからだ。



それにラミアスはこの国で誰も知らないものがいないほどの英雄なのだ。


そのため、もし復活したなど知れれば、


かなり目立つことになるし、


最悪、神格化すらあり得る。


そんなことはラミアスも望んではいまい。


アレンはどうにかせねばならないと頭を悩ませ、


無難な答えを出すことにした。


「彼女はミアだ。


僕と同じようにあそこに落ちてしまったらしく、


同じように助けを求めていたそうなのだ。」


アレンはとりあえず、嘘で誤魔化すことにした。


すると、ラミアスは察したのか、


アレンに合わせてくる。


「ああ、そうだ。


私はミアという旅の者だ。よろしく頼む。」


手を差し出し、握手をするミアとリズベット。


ミアはカレンにも同じようにと思い、


手を差し出すと、


カレンはそれを握るのだが、


言葉にはどこか棘があった。


「もしかしてミアさんはこのまま行動を共になさるつもりで?」


「ああ、駄目か?」


カレンのそれにはまったく意に介した様子なく、


キョトンとした顔で答えるミア。


「…駄目ではありませんが、


アレン様に確認は取ったほうがよろしいのでは?」


カレンがなにやらリズベットにサインを送っている。


「…ええ、それはそうね。」


これはカレンなりのライバルが増えないことへの抵抗だったのだが、


それは当然ながら、アレンには通じない。


「アレン?私がいては迷惑か?」


おそらく知っている人がいないため、


心細いのだろう。


どこか寂しげな様子で聞くミアにアレンは優しく微笑む。


「そんなことはない。


ミアがいてくれて、僕は嬉しいよ。」


すると、ミアは嬉しさを抑えきれず、


アレンに抱きつき、頬擦りをするのだった。


その横ではカレンが大きく肩を落とし、


リズベットがそんなカレンを慰めていた。


アレンはそこでカレンがどうやらミアのことを気に入っていないことを知り、


仲良くなるにはどうすればいいかと考えたが、


答えは出なかったので誰かに相談しようと心に決める。


まずはリズベットにでも聞いてみることをしよう。



アレンたちは日が落ちていることもあり、


すぐさまその場を後にするのだった。



古城での出来事をギルドに報告したあとに、


アレンは自分が仮面をつけていないことに気がついた。


幸い認識阻害をかなりのレベルで使っていたため、


誰にも気づかれなかったようだが、


このままでは危険すぎる。


急いで手を打たなければ…。


ミアのことを二人に任せると、


アレンは新しい仮面を買うために、


とある店へと向かった。



アレンの視線の先には、どこか禍々しい置物や絵、


さらには怪しいつぼや不気味な大きな仮面などが飾られている店があった。


どこか怪しい雰囲気のこの場所。


そこがアレンの目的地だった。


その店は【呪術用具販売店アムール】。


店のキャッチコピーは、


「愛ある呪術をあなたとともに。」


…明らかになにか間違っている気がするが、


アレンはこれには触れないことにする。


チリンチリン。


扉を開き、中へと入ると、


黒いローブを羽織った女性が店の棚の確認をしていた。


女はドアベルの音に気がつくと、


不気味な笑いをして、こう言った。


「イヒヒヒっ!


今日は店仕舞いよ、また明日来なさい。」


淀みなく言葉が出てきた。


だいぶ慣れたのだなとアレンは思った。


「イルミナ、僕だ。


アレンだよ。」


すると、イルミナという女性は顔が見えないようにされたローブを取り、


綺麗などこか色気のある黒髪を外に出し、


どこか愛嬌のある笑みを浮かべて、


アレンのもとにやってきた。


「アレンくん、久しぶり〜。


元気にしてました?


もう、アレンくんだったのならすぐに言ってくださいよね。


少し恥ずかしかったですよ。


うん、アレンくんなら、閉店しちゃったけど大丈夫。


で、なにがほしいのかな?


仮面?それとも私の自信作?」


「それって、どっちも仮面なんじゃ…。」


「ぶっぶー、ハズレ〜。


最近は仮面以外も作ってます〜。


外に飾ってる絵だって最近私が描いたんだから…


ところで気に入ってもらえたかな?」


思わず禍々しいとか思ってしまったアレンだったが、


それを口に出すのは憚られて、言葉を濁す。


「あっ、ああ…あれね…うん、まあ。」


「そっかそっか〜、よかったよかった。うふふ♪」


どうやら好意的に受け止められたようだ。


イルミナは嬉しそうに笑っている。


イルミナの変わりように驚く人もいるだろうが、


彼女の性格は本来こうなのだ。


優しく、人と話すのが大好きな女性。


それがイルミナなのだ。


なぜそんなイルミナがあんな格好をしているのかというと、


それはひとえに彼女がひどくお人好しな点にある。


困っている人がいると放っておけないのはもちろんのこと、


頼まれると店の商品を割引してしまうこともしばしば、


更には人に騙されることもままあったため、


妹のカミナが心配をして、


あんなふうな誰も近づいたり、頼ったりしないような姿にメタモルフォーゼさせたのだ。


イルミナにそんな対応を客が求めていると言うと一発だったらしい。


実際、呪術師は変わり者が多い。


イルミナがしていたような格好の者も多く、


前に開いていた店でも良く見かけていたため、


それを受け入れた。


その結果、現在、イルミナに危険なことはなく、


平穏無事に店を営んでいる。


しかし、そうは言っても、この人懐っこさだ。


どうしてもあんなふうな対応ばかりしていれば、


ストレスがたまる。


そのため、


偶然それを知ってしまったアレンがカミナに頼まれたこともあり、


暇を見つけてはここに顔を出していたのだが、


ここ数日は、スケリトルドラゴンなどのこともあり、


ここには来ていなかったのだ。


そのせいか、今日は仮面を選び終えたあとに、


夕食に誘われた。


「あっ、そうだ。


今日カミナが帰ってきたの。


よかったら、上がってご飯食べて行ってほしいな。」


カミナは普段、王都の方で冒険者をしている。


定期的にここに顔を出しているのは知っていたが、


スケリトルドラゴンの件が起きる少し前に帰ってきたばかりだ。


もしかしたら、なにかこの近くであったのかもしれない。


Sランクの呪術師が必要な依頼でも。


アレンはどこか胸騒ぎを感じたため、


イルミナの誘いに乗ってみることにした。


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