最終話:新たな日々が、始まります。
そういやプ○キュアの中には
モフモフキャラが変身アイテムに変身するのがあったね(ぁ
「…………以上が、我々が立てた『SS計画』こと、セイクリッドセイヴァー計画の全てです」
かつて、謁見の間において、私は全てを陛下にお話しした。
この『ワルド=ガング王国』……かつて別の大陸で勃発した戦争から逃れてきた我々の先祖と、すでにこの大陸『アヴァンデラ』に我々より先に住んでいた先住民族が出会い、そして多少の諍いこそあったものの、お互いの人種を代表する聖職者が互いに平和になるための知恵を出し合い、そしてそれをキッカケとして和解し、共生を始めた末に生まれた王政の国家の元首に……この大地の霊脈や、その化身と言える精霊の力を利用して生み出す超人戦士計画の全てを。
三百年前の、山脈の〝孔〟の発見がキッカケとなって誕生した、学者による組織を前身として生まれた、私が所属する『アウロラーナ』はここ数年、ずっと、時間が経つにつれ少しずつ強さを増し、さらには状況に応じて変質していく異相獣に、より深い決定打を与える手段を考え続けてきた。
そして辿り着いた答えが、セイクリッドセイヴァーだ。
だがこの超人戦士は、思春期の少女……精神的成長度合いがまだまだ不安定ではあるものの、時には大人顔負けの成長をする可能性に満ちた少女しか変身できないという、まさかの事実がここ最近の研究で判明した。以来私は……戦闘時の高度な連携が可能なほどに仲が良い五人組の少女を、変身装置を開発する前から探し続け……そして、すでに見つけ出している。
彼女達にはまだ、戦う覚悟が完全にできていないだろう。
だが、時間がそれを許さない。この三百年の中で、多くの〝孔〟を塞がれ、相手も焦っているのか……より進化した異相獣が、この世界にやってきているのだ。
今の内に戦力を整えなければ、我々はこの戦争に負けるのだ。
選ばれた少女達には悪いとは思う。
恨むならば……恨んでくれても構わない。
たとえ君達に殺されたとしても、文句は言わない。
だがせめて、この目で……何者かが空けた〝孔〟が全て塞がれ……全ての、人間に化けた異相獣が駆逐されるところを……。異相獣を駆逐し……この世界が平和になった瞬間を見せておくれ。私の妻の……かつて聖女として戦いを挑み死んだ妻の願いを叶えておくれ。
「なるほど。確かにそれならば〝孔〟や異相獣にも対抗できるやもしれんな」
陛下は私の意見を聞き、吟味し、納得してくださった。
「だが、選ばれし少女の中には余の息子の婚約者がいるではないか。ならぬ、レラ嬢だけは……もしも究極形態へと進化したら、戦いの後に必ず死ぬとされるセイクリッドセイヴァーに彼女を変身させるのはッ!!」
「…………しかし、彼女達以外に変身適正を持つ者はッ」
「六人目の戦士を生み出せ」
私の意見に対し、陛下はトンデモない事をおっしゃった。
「六人目の戦士を生み出すのだ。究極形態にならずとも、相手を圧倒する方法が、もしもあるとすれば……質より量を重視する。これしかなかろう」
※
「ランドルフ司祭、やりました! 私達の生み出したセイクリッドセイヴァーの初戦は彼女達の勝利です!」
陛下にそう言われてから、数日後……つまりは現在。
私は『アウロラーナ』で、六人目の変身適性者を見つけ出せないまま……陛下が「死なすな」と命令されたレラ嬢と、その四人のご友人の戦闘を、超巨大魔晶板を通じて見ていた。
私の思った通りだ。
彼女達の連係であれば、実力ならば……セイクリッドセイヴァーの力を、もしかすると究極の領域にまで引き出せるかもしれない。
だが、もしもそれをすれば……究極の領域に至った者から死ぬ。
そしてだからこそ、陛下は六人目の戦士を探せと命令したのだが……あの五人とうまく連携できる逸材は、この国に果たしているのだろうか……。
※
「え、ええっ!? 第二王子……え、だ、第二王子であらせられますか!?」
まさかの事実が発覚し、私は思わず裏返った声を上げてしまった。
と同時に、私は思い出す。
第一王子であるオスカル殿下のお茶会に招待された……まだ幼い時。城の上階の窓の方から視線を感じて、私は何度かそちらに視線を向けて……オスカル殿下と、とてもよく似た男の子と目が合った事を。
もしかして、当時父から聞いていた、オスカル殿下の弟君であらせられる、病弱な第二王子アルセス様ではないかと……なんとなく、当時は思っていたんですが。
「え、でも……あれ? アルセス様? 病弱だったとお聞きしましたが??」
「五歳になった時、俺はガーランド辺境伯様のお屋敷で療養し、さらには、無理がない程度に、ガーランド辺境伯様が直々に鍛えてくださり……いつの間にやら病弱ではなくなったんだ」
「そ、そうだったのですか。それは何よりです」
私はホッとした。
「まぁ、それはそうと……レラ嬢」
するとアルセス様は、真面目な顔を……オスカル殿下と同じくらい端正な、そのお顔を私へと向けて……私の心臓が跳ねた。
や、やだ私ったら。
い、いくらオスカル殿下に婚約を解消されたからと言って……王都で流行ってる婚約破棄ものの物語ように……アルセス様から、都合良く求婚されるなんて展開があるワケが……。
次の瞬間。
私はアルセス様に両肩を掴まれていた。
視線から、目が離せない。
思わず、顔が熱くなってしまう。
「レラ嬢……お前は……そして、お前の友人は……俺達が絶対に護るッ」
そして、アルセス様は……ただ、私にそう言って……私の回復魔術である程度、傷が治っているのを確認してから「それでは、俺はこれで。治療、ありがとう」と言ってから、すぐに他の重症者の所に行ってしまった。
…………………………え、それだけ!?
※
危なかった。
あのまま告白してしまいかねなかった。
俺がまだ病弱であった頃。
窓越しで初めて見かけて……その瞬間から、お前に恋をしていたと。
だが、今はダメだ。
未だに気絶しているクソ兄貴に婚約解消されてショックを受けているそんな時に告白してしまえば、俺が彼女の悲しみを利用して求婚したように周囲からは見えるし、俺としても、心の整理ができた彼女に……キチンとした返事ができる、そんな状態の彼女に改めて、告白したい。
だけど、それでも想いを抑えきれずに……ついつい、思わせぶりな態度をとってしまった。期待をさせてしまった。最近王都で流行っている婚約破棄ものの終盤で登場する、婚約破棄した令息とは別の令息とかのように。
後悔は、している。
上げて落とす真似をしたのだ。
女性に対して、これ以上ない恥をかかせた。
だけど……それでも、あの時の言葉に嘘はない。
実は俺は、教会関係者として、ランドルフ司祭の護衛として、謁見の間にいたのだ。二人の会話の全てを聞いていたのだ。そしてその時になって、初めて……ランドルフ司祭達が開発した超人戦士変身装置の危険性を、そしてその危険な目に遭わせる候補者の中に、レラ嬢とその友人がいる事を知ったのだ。
そしてそれ以来、俺は、将来的には彼女達を援護する役割を担うであろう、騎士団と魔術師団と聖女部隊を率いる総隊長として……彼女達が究極形態に至らぬように。彼女達が必要ではなくなるくらいに。より、みんなと強くなると誓ったんだ。
だが、結局。
異相獣は、彼女達の活躍によって倒された。
でも、俺は諦めない。
俺は……俺が率いる全部隊と一緒に、もっと強くなってみせる。
レラ嬢は……彼女の大切な友人は……絶対に、死なせやしない!!
※
「我が盟主よ。我々が立てた『ウルグド計画』に狂いが生じ始めました」
崩壊を始めている、我らが生まれしこの世界を繋ぎ止めるべく、永い永い眠りについた我が盟主に……私は報告する。
「向こうの世界の住民が、どうやら我々の放った先兵『アハト=ヴェーガ』を破壊できる戦士を誕生させたようなのです」
ああ、なんと忌々しい。
忌々しいが……これも私の計算の範囲内だ。
「ですがご安心を。アハト=ヴェーガはすでにあの世界に何体も潜伏し、日々進化を続けています。いずれはその戦士をも殺しうる個体が誕生するやもしれません」
※
アタシの屋敷で、初めて出会った時。
アタシは、一目であなたに恋をした。
けれど、あなたにはすでに好きな人がいて。
それが悔しくて、アタシは……何度もあなたに求愛した。
でもあなたは、好きな人への想いを忘れなくて。
でも、そんな一途なあなたも好きで……アタシも負けていられなくて。
でも、あなたは強くなって。
それですぐに、王都に戻ったね。
それでアタシは、辺境にまた残る事になった。
だけど、アタシは負けなかった。
あなたに追いつくために。あなたが好きな女性に追いつくために……アタシも、挑戦する事にしたよ。
「だから……王都で待っててね。アルセスお兄ちゃん」
令嬢特捜セイクリッドセイヴァーズ 序章・完