第3話:新たな戦い、始まりました。
「リサ、今日も君は可愛いよ♡」
「今日のお前は、いつもの百倍は可愛いぜ♡」
「また先輩とご一緒できるなんて、僕は幸せです♡」
「あなたの瞳に、乾杯♡」
見ているだけで、吐き気がする光景。
俺の知り合い共が、異相獣とかいうバケモノに代わった令嬢を前にして、相手がバケモノであるにも拘わらず甘い言葉を囁いているという……なんともまぁ滑稽な光景が、目の前にあった。
まぁ、バカヤロウ共が洗脳されてるからって理由も、もちろんあるだろうが。
けどだからと言って、目を逸らすワケにはいかない。
教会本部より放たれた『結界砲』により……元々学院の中庭であった、周囲の空間から断絶されたこの空間内に閉じ込められたバケモノ令嬢と、バケモノが駒や盾に利用するため、敢えて結界内に閉じ込めたその取り巻き共…………そしていつの間にか、彼らの周囲に顕現していた、バケモノ令嬢が呼んだオトモダチからはッ。
「弓兵隊および銃士隊はすぐに配置に就け!! 剣士隊、槍兵隊、聖女部隊を援護せよ!! エド!! お前は俺と一緒に来い!! バカヤロウ共を救出する!!」
「ヤーッ!!」
バケモノ令嬢が呼んだバケモノ共を、俺の部下達が足止めしている間に……俺は部下であり外国人でもあるエドと共に敵陣に突っ込む。
すぐにバカヤロウ共が「すぐ片付けてくるから、待っててねハニー♡」なんて、甘ったるい台詞をバケモノ令嬢に向けて言ってから、俺達に向かってくるが、俺達は厳しい訓練を乗り越えた、対異相獣部隊。
そう簡単にやられはしない!!
手にした衝撃棒ですぐにバカヤロウ共を感電させる事で無力化し、バケモノ共の大将にして、令嬢に化けているバケモノに対し、刃を向ける!!
『フン、殿下達が傷つく事を承知の戦術とは……なかなか乱暴なヤツよ』
するとそのバケモノ令嬢はなんと、渋い声をした男性のような声を出しながら、俺の突き出した刃を指一本で受け止めた!? なんてヤツだ! というか喋れるだなんて……新種と呼ばれるだけはある……だが!!
「かかったなクソッタレ」
すぐに俺はバケモノ令嬢から離れた。
一瞬訝しげな顔をするバケモノ令嬢。だが次の瞬間。俺がバケモノ令嬢の視界を塞いでいる間に、バカヤロウ共が自分の近くから……エドによって、遠くまで移動させられているのに気づき、全てを察したが……もう遅い!!
直後。
バケモノ令嬢に向けて強力な爆弾や、周囲に展開していた魔術師団による高威力魔術攻撃が放たれ、バケモノ令嬢の周囲の地形が変わるほどの大爆発が発生した。先に斬りつけられたりしていた、バケモノ令嬢が呼んだオトモダチは、爆発により吹っ飛んだ。だが、しかし……。
「ッ!!? 総隊長!! 目標、健在です!! 脱皮します!!」
俺の部下の一人にして、外国人でもあるリーが、縦横三十センチほどの大きさの魔晶板越しにバケモノ令嬢を見て絶叫する。
「ッ!!? バケモンが!!」
リーが告げた事実に、俺は思わず悪態をついた。
『やれやれ。お気に入りの皮がボロボロになってしまったじゃないか』
そして、バケモノ令嬢は……爆発によって破損した、かつてリサ嬢であった皮を脱いで……ついに本性を。不定形なる、巨大で黒い謎の生物としての姿を現した。
『代わりに、より有能そうな貴様の皮を使ってやろう』
そしてバケモノ令嬢……いや、そうであった巨大なバケモノは、俺へと勢いよく迫ろうとして……その腕が弾かれた。
突如、空の彼方から……まるで流星のように勢いよく飛んできた、五つの小さき光達によって。
『よぉし! 行っくズラぁ!』
『今日のオイラ達もぉ……パーペキパーペキじゃけぇ!』
『まったくあなた達は……いっつも考えなしに突っ込むザマスね。まぁそれでも、付き合うザマスが』
『せっかくの初陣だっちゃ。張りきるのも無理ないっちゃね』
『そしてせっかくついでに……我らの担い手によりお前、死刑確定ぜよ!』
ていうか、その小さき光達……なんだかクセのある喋り方だな!?
そしてその光達は……バケモノの腕を弾いて、俺が逃げる隙が生まれたのを確認するなり、すぐに俺の背後へと飛んでいった。
すぐにバケモノと距離をとり、改めてその光達が飛んでいった方向を見ると……なんとそこには、俺の知り合いを含めた五人の少女がいた!!
ま、まさか……教会地下の秘密施設『アウロラーナ』で、半年前から開発が進められていた超兵器が……。仲が良い五人組の少女にしか扱えないという、我が国の最終兵器がついに完成したというのか!?
「みんな、行こう!」
「この国を……守ろう!」
「へっ。燃えてきたぜ!」
「さぁ、始めましょうか」
「絶対に……討ち果たします!」
俺から離れた地点で、少女達が、俺に襲いかからんとしていたバケモノを見据えつつ……その手に飛んできた、白、青、赤、黄、緑の五色の、鳥のような形をした変身装置……おそらく俺を襲おうとしたバケモノの腕を弾いてくれたそれらを手にして、ついに彼女達は……俺達の国を救うため、過酷な運命へ、今、飛び立つ!!
「着装!!」「換装!!」「転身!!」「蒸、着!!」「実装!!」
…………なぜか掛け声がバラバラ……いろんな意味で心配になってきたぞ!?
※
私達が、アウロラーナにある転移魔法円……私達が受け取った、新兵器たる腕輪があった部屋の、一段高い床と一段低い天井のアレを使って、バケモノ令嬢であるリサさん……そしておそらくは、私の婚約者であった人……オスカル殿下もいるであろう場所に転移した直後、私達は周囲の空間の異様さに恐怖を覚えた。
出発前に、リサさん達のいる中庭に……異相獣や〝孔〟の研究により、これまた最近開発する事ができた結界を張ったと言われてはいたけど……その〝孔〟の中のような、未知の世界に来ちゃったみたいで……ちょっと怖い。
でも、それでも私達は……進むしかない。
もしかすると、ランドルフ司祭は言わなかったけど……彼でさえも把握ができていないような敵も、国内に入り込んでいる可能性だってあるんだ。年齢がどうとか言っている場合じゃないし、それに……私にしか救えない命があるのなら私は……私達は、たとえ、この手を血で濡らそうとも助けたい!!
「来て、レイアルード」
「来てください、アクエレーラ」
「来い! フィラメルダ!」
「共に行きましょう、ライアラーガ」
「力を貸して、クオーリオ!」
そして、私達は呼んだ。
ランドルフ司祭によれば、私達が嵌めた腕輪とセットにして、この大地を、日夜護っているとされる五大精霊と契約を交わして創り出した、彼らのそれぞれの現身でもある変身装置を!!
すると、空の彼方より。
結界の壁さえも楽に突破して……五つの光が飛んでくる。
『よぉし! 行っくズラぁ!』
『今日のオイラ達もぉ……パーペキパーペキじゃけぇ!』
『まったくあなた達は……いっつも考えなしに突っ込むザマスね。まぁそれでも、付き合うザマスが』
『せっかくの初陣だっちゃ。張りきるのも無理ないっちゃね』
『そしてせっかくついでに……我らの担い手によりお前、死刑確定ぜよ!』
そして彼らは……なんだか変わった口癖の精霊様達は、リサさんの皮を脱ぎ捨てた異相獣に、今まさに攻撃されようとしている者を守るかのように……異相獣の腕を弾いてから……私達のもとへ飛んできた!!
「みんな、行こう!」
「この国を……守ろう!」
「へっ。燃えてきたぜ!」
「さぁ、始めましょうか」
「絶対に……討ち果たします!」
そして、改めて私達は、戦う決意をして……精霊様の現身を腕輪に装着しつつ、ついに超人戦士へと変身する!!
「着装!!」「換装!!」「転身!!」「蒸、着!!」「実装!!」
なぜかみんなバラバラな掛け声!?
でも、これはこれで個性があっていいかなぁ。というか私以外のみんなに掛け声を強制しようとか思わないし……このままでいいかな。
……と、そんな事を考えている時だった。
なんと私達の体が……私は白、アオイ様が青、フラン様が赤、イーファ様が黄、そしてクリス様が緑……それぞれに加護を与えてくださった精霊様と、一緒の色に光り出して……そしてなんと…………私達の着ていた服が消えた!?
かと思えば、一瞬で私達の周囲に、見た事のない装備が顕現し、私達の身に自動で装着される!! な、なんてハレンチな変身!! で、でも体が光っていたし、一瞬で着替えられたし……問題、ないかなぁ?
そして、最終的には。
私達はほぼ一瞬で、精霊様を模した、シュッとしたタイプの鎧装に目元が隠れる仮面、そして残りの、口元以外の部分が……な、なんというか……体の線が一目で丸わかりな、伸び縮みする謎素材の服が装着された姿になっていたぁ!? ちょ、ええっ!? ナニコレすっごく恥ずかしいんだけど!?
『…………痴女か』
「「「「「誰が痴女だ!!」」」」」
まさか異相獣にツッコまれるとは思わなかったよ!!
そして私達は、その怒りのままに……異相獣と激突した。
変身完了と同時に、私達の体の中から力が溢れ出る。
精霊様……さらに言えば、この大地の霊脈から膨大な魔力が供給されるからだ。その力を、異相獣にぶつける。
拳や蹴りだけではない。
念じると、どこからか顕現する……それぞれが扱いやすい、長剣に短剣、槍や、東亞刀も使い、異相獣を攻撃。そして刻みつけた傷に、私は魔術により生み出した光線、アオイ様は氷でできた手裏剣を、フラン様は炎弾を、イーファ様は雷撃を、クリス様はカマイタチを与え、さらに異相獣を追い詰めていく!!
しかも、それぞれの攻撃には聖魔力も付与されているから……まさにランドルフ司祭がおっしゃっていた通りの、騎士と魔術師と聖女の力が合わさったかのような攻撃!!
さらに精霊様と同じく背中に翼が生えているから……反撃されても楽々回避!!
『グアアアアアアアアアアアアアアッッッッ!!!!』
異相獣が悲鳴を上げる。
足元もグラついてきた……あと少し!!
『よぉし! 最後は盛大にアレをブチかますズラ!』
『アレでオイラ達の今回の戦いは終わりじゃけぇ!』
『教会が創り出した最終兵器で、派手にたたっ斬るザマス!』
『張りきっていくっちゃよ!』
『最後の最後に……決めるぜよ!』
そして、今まで通りな攻撃を続けて異相獣に入れようとした時だった。
私達に力を与え続けている精霊様達がそんな会話を始めて……ッ!? あ、頭の中に精霊様の考えが! ま、まさかこんな兵器まであったなんて!!
「「「「「グラン=ラルーガ、顕現!!!!」」」」」
精霊様の思考に沿って、私達は最終兵器を顕現させる。
頭上にそれぞれの武器を掲げて……五つの武器が光に包まれ、そして一つとなり……なんと五人で協力しなきゃ持てないような超弩級の剣に!?
そしてその剣の腹にある窪みに……私達は精霊様の現身たる変身装置を嵌める。
するとその超弩級精霊剣グラン=ラルーガの刀身が五色の光を纏って……私達はそれを、全力で振り下ろす!!
『グ、ギャアアアアアアアアアアアアアアア――――――ッッッッ!!!!!!』
異相獣は縦に真っ二つになって。
そして私達の初陣は大勝利に終わった。
※
私達の初陣が終わった後。
私達は騎士団と魔術師団、さらには先輩聖女様達こと聖女部隊の中に出た負傷者の治療のため、しばらくその場に留まった。
そして私が十人目のケガ人を……回復魔術が、より強力になるから、未だにあの恥ずかしい姿に変身したまま治している時だった。
「…………ん? あれ、あなた……えっと、ごめんなさい。その、前に会った事がありますか?」
私は、現在治療しているのが、どこか見覚えがある殿方だった事に気づいた。
部下と思われる方々から、総隊長と呼ばれている方だけど……あれ? どうも、幼い頃に会ったような気がして、言ってから恥ずかしくなる質問をしてしまった。
「ああ、全然会話をした事がないから印象薄いだろ」
すると総隊長は苦笑しつつ私に言った。
「小さい頃は第一王子と違って病弱で、なかなか部屋から出られず……残念ながら窓越しにしかアンタと対面できなかった第二王子。それが俺だ」
イメージ的には彼女達の装束はラ○ダーとセン○イとプリ○ュアを足して、三で割った感じですが……さらに言えば、某変身忍者に、某埼玉幼稚園児作品の作中の特撮作品に登場した、某鷲頭な敵(のちに洗脳が解けて味方になる)怪人の格好を足して二で割って……さらには剣なラ○ダーの中間フォームの翼を足した感じ……かなぁ(ぇ