昔一緒に遊んだ親友が女だと思ったら男だった話
恋愛系初挑戦!めっちゃ難しかった!
小学生の頃、あーちゃんという、いつも一緒に遊んでいた親友が居た。
名前は葵、少しタレ目の大きな瞳にふんわりとした肩位までの髪、その容姿は控えめに言っても美少女と言っても過言ではない程であり、幼いながら、いつも見惚れてたくらいだ。
通っていた小学校は違ったが、家は近所だったのもあり、放課後や休みの日は2人で遊ぶことが多かった。
そんな中、5年生になる直前、彼女から「みーくんあのね、大事な話があるの」と言われた。
聞いてみると、たどたどしく言葉にしてくれた。もうすぐ引越しして遠くへ行ってしまうらしい。
それを聞いて泣いた。それはもう泣いた。ギャン泣きである。
今まで仲良く遊んでいたのにあんまりだ、行かないで、と泣きじゃくり、それに釣られて彼女も大声で泣き出した。
夕暮れの公園で泣きじゃくり、そして泣き疲れて2人とも暫く沈黙していたが、ポツリと彼女はこう言った。
「離れ離れになっちゃうけど、いつか大きくなったら絶対会おうね」
そう言って笑う彼女の横顔はとても綺麗で。
夕陽に背を向けていたので顔には影が纏っていたが、それでも輝いて見える様な笑顔で。
それを見て、無言でしっかりと頷いた。
□
「いよいよね〜、久し振りに会うんじゃないの?」
夕食時。
中学の卒業式を終え、無事合格をした高校に入学するまでの休日を半分程過ごした頃、唐突に母親が明るい声でそう聞いてくる。
「え? なんのこと?」
「なんのことって……あぁ、そういえば言ってなかったわね、葵ちゃん、高校同じなんですって」
「葵……? あーちゃん!?」
初耳であった。驚きのあまり、椅子を弾き飛ばさん限りの勢いで立ち上がった。キッチンに立つ母親を見ながら立ち上がったので、思い切り脇腹をテーブルにぶつけ、悶絶する羽目になった。
テーブル中央の箸入れ(常に置いてある)がガチャンと音を立て倒れ、中身をぶちまける。
「なにやってんのよ……箸入れ、片付けときなさいよ」
「あぃ……」
涙目で暫く脇腹を押え、テーブルに突っ伏していたが、十数秒程で動けるようになったので、ぶちまけた箸を流し場に持っていき洗って、数少ない無事な箸(箸入れからぶちまけられなかった分)を2本持ってテーブルの席に着く。
既にテーブルには、夕食が置かれていた。
「うん、美味しい」
「あら、ありがとう、沢山食べるのよ」
今日の夕食は好物のオムライスである。母親曰く、ケチャップライスに一手間加えており、そんじょそこらのオムライスとは訳が違う……
「じゃなくてさ!」
脳内オムライス談義をやっている場合ではなかった。
「あーちゃんがウチの高校に来るって!?」
「あ、そう! そうなのよ〜! あんた達仲良かったでしょ?」
脳内に、幼い頃の記憶が駆け巡る。
泥だらけになるまで遊び回った記憶、笑い声、笑顔。
そして、あの日の記憶。
「そうか……約束」
忘れてなかったのか、と最後まで言葉に出さずに感傷に浸る。
果たしてくれた嬉しさと、記憶が薄れていた罪悪感でなんとも言えない感情になる。しかし、徐々に嬉しさの感情の方が大きくなっていき、結果自然と緩んでいく口元。
「嬉しいからってニヤニヤしないの。気持ち悪いわよ?」
「実の子供に向かってその言葉は辛辣過ぎじゃ?」
指摘されてもにやけを抑えられず、思わず口元を手で覆ってしまう。
彼女が──親友がこの町に帰ってくる。
「あ、ちなみに、明日駅に着くらしいから折角だし、迎えに行ったら?」
「それを早く言えや」
夕食をかき込んで(はしたないと怒られた)、急いで明日の準備をするのだった。
□
次の日の正午過ぎ。
駅前には朝の通勤ラッシュほどでは無いが、多くの人が行き交う。
待ち合わせ場所の駅前の銅像前で今か今かと彼女を待ちわびた。
(ちょっと時間早すぎた?)
約束の時間は13:00、スマホを見ると12:27と表示されている。
因みに、既に30分近くここに立っていた。
(流石に早すぎ……いやでも、15分前行動は待ち合わせの基本らしいし……いや、1時間前に来てたんだけどさ)
そう脳内で誰に向けてかも分からない言い訳を並べていると、駅の方から、ゴロゴロとキャリーバッグを引く音が聞こえる。
来た!? と思い、視線をスマホから上げるが、長身の男性が引いてたキャリーバッグの音だったので、違うな……と思い、視線をスマホに戻す。
……のだが、そのキャリーバッグの音はどんどん近付いてゆき、遂にはすぐ前で音が止まる。
「久し振り、みーくん」
多分、今までの短い人生の中で1番綺麗な2度見を決めた瞬間だったと思う。
□
ただ今、駅前から少し離れた、それでいて家への進路上にある良い感じのカフェでブレイクタイムと洒落こんでいる。
落ち着いた店の内装、耳障りにならないほどの程よい音量のジャズ、いい香りのコーヒー。
そんな安らぎの詰まった空間の中で1人、物凄く落ち着いてない人がいた。
「お、おと、おとと、男っ……!?」
「いやいや、落ち着いてよ」
落ち着けるわけが無い、女の子(美少女)だと思ってた相手が、実は男の子(美少女)で男だったのだ。
だめだ、脳内もパニクってる、よく分からないことになってる。
「て言うより、ずっと女の子って思ってたんだ、酷いなぁ」
そう言って、優雅にコーヒーカップを口に運ぶ。動作もくっそイケメンだな!
「いやいやいや、子供の頃、明らかに美少女してたじゃん!」
「美少女してたってなにさ? はぁ……俺って昔どんな格好してた?」
「え?……えっと、Tシャツにジーンズ?」
そういえば、スカート履いてるとこ見たことないな。
「じゃあ、俺って一人称なんて言ってた?」
「『僕』……って言ってたね」
ボクっ娘で無い限り、そんな一人称にしない……か。
そして一旦落ち着こうとコーヒーを飲もうとして……「あちっ」
「あはは、猫舌は相変わらずだね、みーくん」
コーヒーの熱さのお陰で、逆に冷静になれたので、その笑顔をじっくり見る。
少しタレ目の瞳、柔らかな髪の毛、記憶の中の『彼女』と目の前の『彼』が重なる。
……うん。
「おかえり、あーちゃん」
「ただいま、みーくん」
□
「ここの川辺って昔よく遊んだよね、懐かしいな」
そう言ってあーちゃんは、辺りを見回す。
土手を降りた開けた土地は、昔よく遊んでいた場所で、この時期は土手道の縁に植えてある桜が満開になるのだ。
記憶よりも高くなった背、低くなった声、それでも記憶と重なる君。
懐かしくなって目を細めたとき、少し強めの風が吹いて、思わず目をつぶってしまった。
「あ、髪に花びらが」
そう言って彼は、『私』の『長い髪』に手を添える。
「ありがと」
照れ気味にお礼を述べると、彼はニコリと微笑してキャリーバッグをゴロゴロと引き始めた。
歩みを進めて隣を歩く、さり気なく歩くペースを合わせてくれた彼を見て、男の子だったんだなぁと再度思う。
「あ、そうだ」
「なに?」
ふと、昔から気になってたことを聞いてみることにした。
「私は勘違いしてたから、あーちゃんって呼んでたけど、なんであーちゃんは私の事みーくんって呼んでたの?」
「あ、いや、その」
「?」
再会してから初めて見た焦った顔。彼は目を泳がせながら、こう答えた。
「怒らないで欲しいんだけど、初めて会った時……髪が短くて服装も男物だったから……男の子だと思ってたんだ……ごめん」
「なんだとこらー」
肩をコツンと握り拳で叩いて、その後2人で笑い合う。
「名前」
「ん?」
「渾名じゃなくて、名前呼びに変えない? 私、葵って呼ぶからさ」
「じゃあ、穂」
渾名から名前呼びになり、自分から言い出したのにも関わらず思わず頬を赤くしてそっぽを向いてしまった、なんとなく悔しい。
でも、顔を背ける前にちらっと見えた彼の顔は、赤みを帯びていたので、まぁ良しとしよう。
これからの高校生活が楽しくなりそうだ。
あとがき
ワレェ女じゃったんかァ!ってしたかったけど、ミスリードって難しいですね、若輩者のワシにゃあ無理じゃったよ!い、一応終盤まで主人公の一人称書かないようにしたり、色々頑張ったんですよ?
こういう系の話って男→男(実は女)パターンが常だから、逆転したら、女→女(実は男)ってなるのは自然の理だったなぁ、と書き終えて思ったけど後の祭りでした。
ついでにいうと、女主人公って心理描写むずくね?
男に女心は、多分一生掛けても分からないものなのかもしれません(謎のキメ顔)
私の小説(らしき物)が少しでも面白かったと思って頂けたら幸いです。
誤字脱字誤用何かしらありましたら、教えてくれると助かります。
ここまで読んでくれてありがとうございました。