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20話 花の国の夜明け

 

 花の国の1日は、日が昇るとともに始まる。

 太陽が空に登り、暗い空が明るんで、日差しが街を照らす時、住人たちは窓際に立ち、それを眺めるそうだった。


「プラン様。おはようございます。昨晩はゆっくりできたでしょうか?」


 コンコンとドアがノックされ、やってきてくれたのはリーネさん。

 時刻は夜明け前。僕は割り当てられた部屋の中で、そんな彼女と向かい合った。


 この国に滞在するにあたって用意してもらったのが、城の一室のこの部屋だった。

 大きなベッドが置いてある部屋の家具はどれも綺麗で、居心地が良すぎるぐらいだった。


「ふふっ、どうやら寝不足のようですね」


「は、はい。居心地がよすぎて、なかなか寝付けなくて……」


 僕の顔を見たリーネさんが、くすりと笑みをこぼしていた。


 昨夜は緊張で眠れなかった……。今までこんな部屋で過ごしたことはなかったから、ずっともぞもぞしていた。

 だけど、ベッドに潜り、目を瞑っているだけでも不思議と安眠した気持ちになっている。


「あのベッドにはリラックス効果がありますし、特別な植物を毛布に使用しておりますので、プラン様の【草取り】の能力があれば、入っているだけで睡眠と同等の効果があるのです」


 なるほど……。

 だから、こんなに体が軽いんだ。


「アリアさんは既に目を覚ましておられますので、プラン様も朝日を浴びるご用意をしようと思うのですが……既に準備はしておられるのですね。寝間着からの、お着替えをお手伝いしたかったのに残念です」


「……お、お着替え」


 僕は既に寝間着から着替えている。


 しかし、城にいる間、僕たちはそういう扱いをしてくれるらしい。国賓待遇で、着替えの手伝いとか、お風呂の手伝いとか。昨夜もそうなろうとしてたけど、申し訳ないから僕は自分でやることにした。


「まだ初日ですので、慣れませんものね。しかしいずれは、おまちしております」


 リーネさんはそう言うと、「楽しみにしてますね」と言ってまたくすりと微笑んでくれた。



 その後、僕はリーネさんに案内されて城の中を歩き始める。

 赤い絨毯が敷いている廊下には、花瓶が置いてあり、そこには花が飾られている。


 そんな廊下を歩き、向かうのはカレストラさんたちがいる部屋だ。


「あ、プランくん! おはよう……!」


「プラン様、おはようございます」


「アリアさん、カレストラさん、おはようございます」


 たどり着いた部屋の中にいたアリアさんとカレストラさんと、朝の挨拶をする。

 まだ夜明け前の部屋の中は薄暗いものの、アリアさんとカレストラさんの顔は明るくて輝いているようにも見えた。


「では、今日はプラン様たちが初めてこの国で迎える朝ですので、ご一緒に過ごせたらと思います」


「楽しみだよね!」


「うん」


 僕たちは窓際に立ち、窓の外に目を向ける。


 今、僕たちがここに集まったのは、一緒に朝日を見るためだ。

 花の国の住人にとって、朝日を見るというのは大切なこととのことだった。


 普段は、カレストラさんもリーネさんも、それぞれの部屋で一人で眺めるそうだ。

 だけど、今回は僕とアリアさんを誘ってくれて、せっかくなのでみんなで見ようということになったのだ。


 窓の外はうっすらと明るんでいて、街を囲む外壁の向こう側からはまだ太陽は昇っていない。


 しかし、徐々にその明かりが広がってきて、ついに姿を現した。


「きた……!」


 ゆっくりと、ゆっくりと。

 外壁の向こう側から、光が上がってくる。


 そして、眩しい光が街に差し込んだ。


 街の中を、建物を、城を、住人を、暖かく、穏やかに照らしていく。


 この国の人たちも今は窓際に立ち、同じようにこの光景を見ているだろう。


 隣を見てみると、茶色い髪が照らされたアリアさんの横顔、白銀色の髪が照らされたリーネさんの横顔、そして黄金色の髪を日の光に照らされたカレストラさんの横顔がある。


 そして、


「プラン様、おはようございます。今日も1日よろしくお願いします」


 カレストラさんは日の光に照らされながら、眩しいぐらい微笑んで「おはよう」を言ってくれるのだった。


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