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空想短編小説 三つの国とまんなか島

作者: たけじん

その小さな星には三つの大陸があり、その大陸にはみぎつ国、ひだりつ国、うえつ国に別れており、その真中にまんなか島があり小さな王国がありました。

そこではこの島でしか採れないとうきびを栽培し、それを他の国に売って王国を維持していました。

 三つの国はとうきびが全く採れませんので、まんなか島を自分の国にしようと企んでいました。

 さぁ、三つの国のいずれかがまんなか島を自分の領土にするのでしょうか?

はじめに

 その小さな星には三つの大陸があり、それぞれの大陸はみぎつ国、ひだりつ国、うえつ国に別れていました。

 その三つの国の真中に小さな島がありました。

その島はまんなか島といい、小さな王国があり約千人の住民が住んでいました。

まんなか島では唯一この島でしか採れないとうきびをたくさん栽培しており、そのとうさびを三つの国に売って王国を維持していました。

 三つの国はとうきびが全く採れませんでしたので、まんなか島を自分の国にしようと企んでいました。


第一章 みぎつ国

 まんなか島の東にみぎつ国があり、他の国よりもまんなか島に近いところにありましたので、みぎつ国のライト殿様はほかの国よりも一足先に幕府の老中をその島に派遣させ、王様に貢物を渡して「まんなか島のとうきびを今までの二倍買います」と申し出ました。

 まんなか島のマカ王様は「なぜそんなに買ってくれるのですか」といぶかし気に尋ねました。

 老中は「この島のとうきびで作る黒砂糖がなくては美味い料理や子供が大好きなお菓子を作ることができません。ですので大量に欲しいのです」と切実に訴えました。

 「分かりました。来年からみぎつ国に倍のとうきびを譲りましょう。しかし、人手が足りるかなぁ」と思案気な王様。

 老中は、ここぞとばかりに「人手が足りなければ、収穫の期間みぎつ国の人を応援に出しますよ」と助け船を出しました。

 このようにしてみぎつ国はまんなか島を取り込み、次第にみぎつ国の人は伐採期間だけでなく常時まんなか島に住むようになり、みぎつ国の人たちはどんどん増えてきました。

 みぎつ国の人が島の住民の倍以上に達したとき、みぎつ国の老中は、まんなか国の王様に「まんなか島は今日からみぎつ国の一つの藩になります。王様には隠居していだたき、これまでの苦労を労っていただきます」と王様の眼を見ずに告げました。

 

第二章 ひだりつ国

 まんなか島の西にひだりつ国がありました。

 この国は武人国家で、住民は常日頃から武闘訓練を行っていました。

ひだりつ国は、これまで武力によって周りの国々を滅ぼし自分の領土として大陸全体を一つの国ひだりつ国としました。

隣の国をどんどん征服すると次第次第に住人が多くなってきました。

 ひだりつ国のレフト皇帝は、増えすぎた住人のために更に領土を広げる必要があると考えました。

 この時、既にまんなか島はみぎつ国の領土になっていました。

 ひだりつ国のレフト皇帝は大臣をみぎつ国に派遣しました。

大臣はみぎつ国の大老に対し「まんなか島は独立した王国だったのに、みぎつ国が勝手に占領したようですね」と皮肉交じりで言いました。

 これに対し、大老は「まんなか島の人口の半分以上がみぎつ国の人間になったので、当然にまんなか島はみぎつ国の領土となったのです。ひだりつ国の方がほかの国を武力で占領したのではないですか」と反論しました。

 ひだりつ国の大臣は「お互いの過去のことを言ってもしようがない。ところで、まんなか島のマカ王様はどこにおられるのですか」と話をすり替えました。

「みぎつ国の田舎に隠居しています」と大老は答えました。

「お会いしてもよろしいでしょうか」と大臣。

「老中に案内させます」と大老はいぶかし気に告げました。。

 翌日、ひだりつ国の大臣はまんなか島のマカ王様に会いました。

老中がいない隙を狙って、大臣は王様にこっそり話しかけました。

「ここの暮らしはいかがですか」

「みぎつ国の人たちがいろいろと世話をしてくれて快適です。しかし、まんなか島の人たちが気掛かりです」

「みぎつ国の住人として生活しているようです」

「このままではまんなか島の文化が廃れてしまう」と王様は落胆しました。.

「まんなか島の文化を守るため、ひだりつ国が援助しましょう」と王様を安心させるように言いました。


 数か月後、みぎつ国の田舎で暮らしていたマカ王様は久しぶりにまんなか島に里帰りすることにしました。

 マカ王様がまんなか島に到着した時、ひだりつ国の軍隊がまんなか島に進軍し、まんなか藩のお城を制圧しました。

 マカ王様は、お城の前で「まんなか島はみぎつ国から独立し、ひだりつ国の庇護の下元の王国に戻ります」と宣言しました。

 ひだりつ国のレフト皇帝はまんなか王国の自治権を認め、みぎつ国からの干渉を防ぐため軍隊を常駐させることにしました。

 これに対してみぎつ国のライト殿様は大老に「ひだりつ国のやり方は王様を利用した占領だ。何としてもマカ王様を奪還せよ」と命じました。

大老は、各藩から腕の立つ武士を選りすぐり王様奪還隊を作り、まんなか島に派遣させました。

 みぎつ国の王様奪還隊がお城に籠っていた王様を奪還するためお城に入ったところ、ひだりつ国の軍隊が襲いかかりました。

王様奪還隊の武士は全員捕らえられてしまいました。

 この時からみぎつ国とひだりつ国が全面戦争に突入し、最終的にはみぎつ国がまんなか島から撤退しました。


 数年経ち、ひだりつ国のレフト皇帝は自治権を与えると言いながらも、まんなか王国の自由な文化がひだりつ国の思想と合わないことを理由にまんなか王国の住民に圧力をかけるようになりました。まんなか王国の人たちはひだりつ国の圧力にもめげず、まんなか王国の文化を守ろうとしました。

 しかし、ひだりつ国の軍隊はまんなか王国の文化を守ろうとする住民を逮捕し、ひだりつ国の刑務所に投獄しました。


第三章 うえつ国

 まんなか島から追い出されたみぎつ国のライト殿様は、幕府の筆頭大老にうえつ国のアップ大統領あての援助を求める親書を携えさせ、交渉に臨ませました。

 アップ大統領は親書を見て、国務長官にみぎつ国との交渉を任せました。

 「ひだりつ国はまんなか島のマカ王様を抱き込み、まんなか島を乗っ取ってしまったのです。長い間、まんなか島はみぎつ国の一つの藩だったのです」と悔し気に筆頭大老は訴えました。

 国務長官は「昔、ひだりつ国はうえつ国に侵入したことがありましたが退散させることができましたが多大の被害が出ました。みぎつ国の悔しさは良く理解できます。協力しましょう」となぐさめました。


 数日後、うえつ国の艦隊がみぎつ国の湾外に集結し、みぎつ国の軍艦とともにまんなか島に進軍しました。

 ひだりつ国も艦隊を派遣し、まんなか島の海域では砲弾が飛び交う大海戦となりましたが、数時間後、うえつ・みきつ連合軍がかろうじて勝利しました。

 しかし、まんなか島の島民は戦闘に巻き込まれ大半が死傷し、マカ王様はひだりつ国の軍隊に殺されてしまいました。

 こうして、まんなか島は再びみぎつ国の一藩に戻りましたが、島の半分はひだりつ国の侵入を防ぐためうえつ国の軍事基地となってしまいました。


第四章 みぎつ国の革命

そのようなおり、みぎつ国は世襲制で成り立っている幕藩体制が時代の流れに追いつかなくなり、各藩がそれぞれ独立する動きをみせ、幕府と対立しました。まんなか島でも、同じようにみぎつ国から独立しようとする気運が盛り上がりました。

 まんなか島の独立を主張する団体のリーダーはウージという30代の男でした。ウージは、ひだりつ国の刑務所に投獄されていましたが、みぎつ国が勝利したことにより解放されました。


その後、ウージはみぎつ国から独立を画策している三つの藩の独立運動家らと話し合いました。

黒い藩の運動家グーは「各藩の状況が異なっているので、それぞれに藩から独立を勝ち取るべきべきだ」と主張しました。これに対し、白い藩の運動家チョキは「自分の藩から独立するだけでは、お家騒動として幕府から藩の取り潰しにあうだけだ」と反論しました。赤い藩の運動家パーは「各藩の独立を同時並行的にやれば良いのではないか」と折衷案を出しました。

 ウージは「まんなか島は、今再びみぎつ国の一つの藩に戻り、まんなか島の住民は一応平穏を取り戻しましたが、ひだりつ国に王様を殺されたこと、うえつ国に島の半分を軍事基地化されています。これらのことはみぎつ国がまんなか島に進出し、みぎつ国の領土にした結果です。我々まんなか島はみぎつ国から独立するとともにうえつ国の基地をもまんなか島から撤退させる必要があります。

 各藩が協力してみぎつ国の幕府を壊滅させ、新たな政府を作る必要があります」と熱く語りました。


 数年後、各藩の活動家が連帯した革命隊がみぎつ国の幕府に総攻撃をかけ、ライト殿様の口から「すべての藩を解体する」との命令を出させ、ライト殿様を廃位させ、新政府を樹立しました。

 新政府はウージを大統領とするまんなか国となりました。

黒い藩の活動家グーは元の黒い藩、白い藩、赤い藩などを統合した青い州の知事に就任し、チョキ、パーはまんなか国政府の国務長官になりました。

 ウージ大統領は、まんなか国の住民に対し「新たなまんなか国は、元のみぎつ国の幕藩体制を民主制に変え、それぞれの州が自治権を持つ合衆国になりました。ですから、それぞれの州は自分の文化を大切にし、その発展に尽力してください。このような自由な体制を維持していくため我々は努力していきます。

 また、ひだりつ国とうえつ国にもこの自由な体制を広め、自由で平和な星としたい」と声高らかに宣言しました。


第五章 新制まんなか国が行ったひだりつ国・うえつ国との外交

 ウージ大統領は、チョキ国務長官をひだりつ国へ、パー国務長官をうえつ国へ派遣させ新制まんなか国との国交を樹立するための交渉に当たらせました。

 ひだりつ国に派遣されたチョキ長官は、ひだりつ国が旧まんなか王国のマカ王様を殺害したことに対する謝罪を要求しました。

 ひだりつ国の大臣は「あの時はみぎつ国から急襲を受けやむなく王様を殺害してしまったのです。大変申し訳なく思っております」と反省しました。これに対し、チョキ長官は「反省の弁をいただきありがとうございます。まんなか島民も心安らぐと思います。今やみぎつ国はなくなり、新たなまんなか国となりました。ですので、まんなか国はひだりつ国に対して賠償を要求することはしません。これからは、お互いの国や文化を尊重し、平和裏に交流を行うために国交を樹立したいと思います」と申し向けました。

 ひだりつ国の大臣は、まんなか国の長官の話をレフト皇帝に告げ、お伺いを立てました。レフト皇帝は「まんなか王国のマカ王様を殺害したことは大変申し訳ないと思っている。これはみぎつ国との関係から生じたものである。しかし、みぎつ国が革命により新しい国になったとしても、マカ王様が死んだことによりまんなか島の領有権は未だにひだりつ国にある。みぎつ国とその後を引き継いだまんなか国が占拠しているにすぎない。このことを認めるならば、国交を樹立することにやぶさかではない」と自己の理論を振りかざし、大臣に交渉するよう命じました。

 チョキ長官は、ひだりつ国の主張をウージ大統領に報告しました。ウージ大統領は「まんなか島をひだりつ国に渡すことはできない。とうきびを今までの倍以上ひだりつ国に渡すことで折り合いをつけよう」と指示しました。

 ひだりつ国は、その案を渋々了承し、まんなか国とひだりつ国は国交を樹立しました。


 うえつ国に派遣されたパー長官は、うえつ国の国務長官に対し「みぎつ国は新たなまんなか国となりました。これまで以上にうえつ国との交流を盛んにするため国交を樹立したい」と申し向けました。

 国務長官はアップ大統領に諮った後「旧みぎつ国との間には、ひだりつ国の侵入を防ぐためまんなか島の半分をうえつ国の軍事基地とした経緯がありますが、まんなか国になった途端この条約は破棄されました。この条約を復活しなければ国交を樹立することはできません」と否定しました。

 パー長官は「ひだりつ国とは既に国交を樹立していますので、ひだりつ国がまんなか国に侵入することはありません。ですから、軍事基地は必要ないのです」と反論しました。

 これに対し、うえつ国の国務長官は「ひだりつ国の性格からして国交を樹立したとしてもすぐに反故にされ、再び進出して来るのが落ちです。ですから、まんなか島の軍事基地を撤退することは考えられません。まんなか国もその方がよろしいのではありませんか」と撤退を強力に否定しました。

 パー長官は、本国のウージ大統領に交渉の状況を電話で連絡し指示を仰ぎました。ウージ大統領は「まんなか島のうえつ国の軍事基地の面積を今までの三分の一とし、残り三分の二はうえつ国とまんなか国との共同管理によるとうきび畑とする。収穫されたとうきびの半分はうえつ国のものとするという案で交渉に臨んで欲しい」とパー長官に指示しました。

 パー長官は、ウージ大統領の案をうえつ国の国務長官に示しました。国務長官は、その案をアップ大統領に説明したところ、アップ大統領は「その案に賛成するが、軍事基地は港湾に面した場所にすべきだ」と主張しました。

 うえつ国の国務長官は、パー長官に大統領の命令を示し「軍事基地は、軍艦が寄港できる基地としていただきたい」と要求しました。

 こうして、うえつ国とまんなか国との国交が樹立しました。


第六章 ひだりつ国の再侵略

 数年経ちました。この星のまんなか国、うえつ国、ひだりつ国の三国体制はは維持されていました。

 そんな中、まんなか国のまんなか島周辺の海底にはメタンハィドレイドが無限大にあることが分かっていました。これまでは、メタンハィドレイドからガスを抽出する技術はありませんでしたが、まんなか国の技術者がメタンハイドレイドからガスを抽出する技術を完成させることができました。

 まんなか国は、この地区の海上にガス抽出プラントを建設し、ガスを大量に生産し、自国の経済発展に寄与するとともにうえつ国とひだりつ国に販売することができ、まんなか国は飛躍的に発展し、ほかの国よりも裕福となりました。


 武闘訓練に明け暮れていた武人国家ひだりつ国は、人口増大により経済が低迷し次第次第に勢力が衰えてきました。ひだりつ国のレフト皇帝はまんなか国の発展に嫉妬し「かつてひだりつ国によってまんなか島のマカ王が独立を宣言し、それをひだりつ国が認めた時にまんなか島はひだりつ国の保護下となったので、それ以来まんなか島はひだりつ国にその領有権がある。ましてやマカ王が死亡したことにより。まんなか島の領有権はひだりつ国にある。いくらみぎつ国がまんなか国に変わろうとその権利は変わらない。であるから、まんなか島周辺の海底にある資源は当然にひだりつ国のものである」とこれまでの主張を繰り返し、大臣に命じてまんなか島沖合のガス抽出プラントに数隻の軍艦を秘密裏に進出させ、ブラントを乗っ取りました。これに対し、まんなか国とうえつ国の連合艦隊が現地に急行しましたが、既にブラントの技術者20人は捕縛され、プラントはひだりつ国の軍隊が警戒態勢を執っていました。

 報告を受けたウージ大統領はホットラインでひだりつ国のレフト皇帝に「まんなか島周辺のガス抽出プラントはまんなか国が建設したものであり、これを占拠することは許されない。まんなか国の技術者を開放しなさい」と語気を荒げました。

 これに対し、ひだりつ国のレフト皇帝は「旧まんなか王国のマカ王様が独立を宣言した時にこの島はひだりつ国の保護下になったので、領有権はひだりつ国にある。みぎつ国がまんなか国に変わっても領有権はそのままである。以前、とうきびをぶら下げられてまんなか国との国交を樹立したが、ガス抽出プラントがあればとうきびはいらない。国交は破棄する」と宣言しました。


第七章 全面戦争か?

 ひだりつ国との交渉が決裂したウージ大統領はうえつ国のアップ大統領と話し合いました。

 「ひだりつ国は依然としてまんなか島の領有権を主張しています。ガス抽出プラントができたらますますその主張が激しくなり、今回の行為に及んだようです。うえつ国のひだり国に対する見方は当たっていました」とウージ大統領。

 「こうなればひだりつ国と戦うしかない。まんなか島の我々の軍事基地に巡航核ミサイルがあるので、これを使おう」と興奮気味にアップ大統領。

これに対しウージ大統領は「核ミサイルは使わないでください。まずはプラントに捕らわれている技術者を助けることが優先です」と冷静に答えました。


 うえつ国の潜水艦が密かにプラント直下の海底に侵入し、隙を伺ってまんなか国の救助隊をプラント内部に潜りこませ、ひだりつ国の軍人と交戦し技術者20人全員を無事救出することができ、プラントはまんなか国の下に戻りました。

 このことを知ったひだりつ国のレフト皇帝は「こうなればまんなか国とうえつ国に大陸間弾道核ミサイルを打ち込もう」と怒りに震え命令を下しました。

 その後、ひだりつ国の軍事基地から大陸間弾道核ミサイル二基がそれぞれまんなか国とうえつ国の首都に照準が合わせられました。

 ひだりつ国のレフト皇帝からまんなか国とうえつ国の大統領あてに「まんなか島をひだりつ国の領土と認めないならば、両国の首都に核ミサイルを打ちこむ。回答期限は三日後の午前0時である」と最後通告をしました。


 ウージ大統領とアップ大統領は対応を話し合いました。

 アップ大統領は「やはりひだりつ国を叩いておくべきだった。こうなれば全面戦争に突入するしかない」と語気を荒げました。

 ウージ大統領は「まんなか国はひだりつ国との全面戦争を行うことはできません。ましてや、うえつ国はまんなか国のために戦う必要はありません。これからまんなか島の領有権の問題について、ひだりつ国のレフト大統領と話し合いをします」と覚悟を決めて発言しました。


第八章 火山の噴火と大規模地震の発生 

 その時、突然まんなか島にそびえ立つ火山から地鳴りを伴う巨大な噴煙が上がりました。と同時に大規模な地震が起こり、まんなか島はまんなか国の大陸に近い部分を残し海底に没してしまいました。まんなか島の住民の大半はかろうじて大陸に逃れることができました。当然、ガス抽出プラントは崩れ去り海の底に沈んでしまいました。


 ウージ大統領は火山の噴火と大規模地震の発生により、その対応に追われひだりつ国の最後通告どころではなくなりました。また、ひだりつ国は地震の影響をもろに受け、宮殿の屋根が崩れ落ちレフト皇帝や長官などの首脳陣はその下敷きになり死亡してしまいました。

 

 皇帝や長官を失ったひだりつ国においては、政府を支持する人々と政府に反感を抱いていた人々とが争いをし、国は大地震などの影響に輪をかけた無秩序の状況となっていました。このまま放置しておくと避難民がうえつ国に流入してくるので、うえつ国の軍隊が進駐し、うえつ国が占領政策を執り、結局旧ひだりつ国はうえつ国の領土となってしまいました。

 このようにして、うえつ国は二つの大陸を要する大規模国家となりましたが、火山の噴火や大地震により広大な領土となったうえつ国は瀕死の状態となりました。


 後日、ウージ大統領はホットラインでうえつ国のアップ大統領に「火山の噴火や大地震によりまんなか島がなくなってしまいました。まんなか国は甚大な被害を受けました。うえつ国はどうでしょうか」と話を振り向けました。

 アップ大統領は「今回の火山の噴火や大地震でうえつ国も大変な被害があり、国家存亡の危機となっています。また、ひだりつ国のレフト皇帝や首脳陣が死亡したことによりひだりつ国は内紛状態となり、避難民がうえつ国に流入する恐れがあったことからやむなく軍隊を派遣したのです。ですから、うえつ国は旧ひだりつ国を含めた広大な領域の復興を成し遂げなければなりません」と答えました。

 「二つの国が悲惨な状況になった今、これを切っ掛けに二国が力を合わせて復興をやりましょう」とウージ大統領は誘いかけました。

 アップ大統領も「二国が協力して復興をやりましょう」と快く返答しました。


 数年後、二国は協力してそれぞれの国の復興を成し遂げ、以前の街並みに戻り、それぞれの国民に笑顔が戻りました。


第九章 いっぽん国の成立

 復興の目処が経ったころ、二国の元首による会議が開かれました。

まんなか国のウージ大統領は、うえつ国のアップ大統領に「二国が協力して復興を成し遂げることができました。今や二国は一つの国と言っても過言ではありません。国名と国家元首を選ぶ国民選挙を行うことにしましょう。国名はどうしましょう」と振り向けました。

 「うえつ国とまんなか国との頭文字を取ってうま国としてはどうですか」とアップ大統領。

 「二つの国が一つの国になるのですからいっぽん国としてはどうですか」とウージ大統領。

 二国の元首は、うま国、いっぽん国のいずれにするかを国民投票にすることに同意しました。また、新たな国家元首の国民投票は、二国の元首がそれぞれ立候補することになりました。


 三か月後、それぞれの国で国民投票が行われました。

国民投票の結果は、国名についてはいっぽん国が七割の得票を得ましたが、国家元首については二元首の得票が拮抗しました。


 再び二元首による会議行われました。

「国名はいっぽん国となりましたが、国家元首が決まりません。どうしましょうか」とウージ元首。

「国家元首の任期は三年なので、これまでどおり三年ごとに交代しましょう」とアップ元首。


第十章 いっぽん国の内部分裂

 二年経ちました。今はウージが国家元首としていっぽん国の政治を行っていましたが、この間いっぽん国の住民はそれそれの地域でそれぞれの文化を花開かせていました。

 しかし、それぞれの地域でそれぞれの文化が発展すると他の地域の文化との軋轢が生じ地域間の紛争が発生するようになりました。


 ウージ国家元首は、いっぽん国の基本方針である地域の文化を尊重するという観点から勃発する地域間紛争を納めるため、国務長官を紛争地域へ赴かせ互いの主張を聞きました。


 マルイ州の知事は「我々はナガレ川を御神体として敬っています。下流にあるサンカク州はこの川の岸を治水対策として岸を堤防化しようとしています。許せないのでこの堤防を破壊せざるを得ないのです」と主張しました。

 これに対し、サンカク州の知事は「台風の季節になるとナガレ川が氾濫し、下流にあるサンカク州は毎年甚大な被害を被ります。ですから、ナガレ川の岸を整備し堤防化したのです。我々としてはマルイ州のナガレ川も堤防にしていただきたいと要望したのですが一掃されました」と説明しました。

 国務長官から両者の意見を聞いたウージ国家元首はマルイ州の知事に「御神体としているナガレ川とは何を指しているのですか」と質問しました。

 知事は何を言わんとしているのかといぶかし気に「ナガレ川そのものが御神体です」と憮然と答えました。

 「流れるナガレ川そのものが御神体なのですね」

「そうです」

「そうであれば、岸を堤防化しても御神体そのものは問題ないですね」

「そうです」

とのやり取りが交わされた後、ウージ国家主席は「下流のサンカク州は台風があるつど被害が出ているようですので、堤防の破壊行為はやめていたたい」と説得しました。

 マルイ州の知事は「良く考えてみると、岸を堤防化することは御神体である流れるナガレ川を守ることにもなり、台風の被害の軽減にも繋がるので、マルイ州のナガレ川の岸も堤防化することにします」と語り、サンカク州の知事と握手をしました。


 このようにしてウージ国家元首は国務長官を紛争地域へ赴かせて紛争の種を摘み取りました。国務長官は、最後の紛争地域に到着しました。


 シカク州ではいっぽん国になる前、旧ひだりつ国を占領した旧うえつ国領内に大量の旧ひだりつ国の住民が大量に移り住むようになり、以前から住んでいた住民との間に軋轢が生じ、州が分断されてしまいました。

 シカク州の知事は「シカク州は旧うえつ国出身者で構成されていましたが、いっぽん国になってから旧ひだりつ国の人々が大量に移り住むようになり、勝手に家を建てたり、山を切り開いて畑にしたりしていたので、シカク州を二つに分けて一方は旧うえつ国住民の地域、他方は旧ひだりつ国住民の地域としたのですが、旧ひだりつ国の人々は自分の土地を広げるため越境してくるのです」と状況を説明しました。

 これに対し、旧ひだりつ国の代表は「与えられた土地は我々の人口に比べて非常に狭いので、やむなく土地を広げたのです」と主張しました。


 国務長官から二人の話を聞いたウージ国家元首は二人に対し「皆さんはこの国がいっぽん国になった経緯をご存じですか」と問いかけました。

 シカク州の知事は「この星は以前三国体制で戦争状態になっていましたが、突然火山の噴火と大地震が発生し、一国が消滅し二国体制となりましたが、その後二国が協力して復興を成し遂げ、いっぽん国として統一されたのです」と語りました。

 旧ひだりつ国の代表は「そんなことは誰でも知っています。旧ひだりつ国は住民が溢れておりいっぽん国になる前から外の地区へ移動するようになったのです。しかし、シカク州は我々を一つの地域に押し込め差別していることが問題なのです」とシカク州の知事を責めました。

 これに対し、シカク州知事は「シカク州の人口が増えすぎるといろいろな問題が発生するので、とりあえず流入者を一定地区に住まわせ、徐々にシカク州の住民とする計画なのです」と説明しました。


 国務長官から二人の話を聞いたウージ国家元首は「旧ひだりつ国の人々は故郷を離れてやむなくシカク州に入ってきたのです。同じ国の中で避難民が出た場合、その避難民を救うことがいっぽん国の理念です」とシカク州の知事を諫めました。

 これに対し、シカク州の知事は「取り合えず避難民を一定の地区に定住させることは問題ないはずです」と反論しました。

 「州を分割して避難民と州の人々を分断することは、いずれ紛争の種を蒔くことになります。早急に州の分割を停止し、避難民を自由にしなさい」とウージ国家元首はシカク州の知事に命じました。

 シカク州の知事は「いっぽん国は地方の自治権を尊重すると言いながら圧力をかけている」と怒りをあらわにし、いっぽん国へ反旗を翻しました。そして、シカク州の州民は避難民を州から追いだしにかかりました。


 これに対しウージ国家元首は「取り合えず避難民をハッカク州で保護してください」と要請しました。

 ハッカク州の知事はその要請を受諾し、避難民はハッカク州に着きました。

 その噂を聞いた外の州にいた旧ひだりつ国の避難民は、こぞってハッカク州になだれこみました。

 人口が急増したハッカク州は、これ以上避難民を受け入れることはできないとして州を封鎖してしまいました。


第十一章 ジュウニ国の独立とナンジャ教の隆盛 

 このようにして、旧ひだりつ国の避難民に翻弄されたシカク州とハッカク州は連帯していっぽん国と対峙し、ジュウニ国として独立しました。

 再びこの星はいっぽん国とジュウニ国の二国並立時代となり、避難民はジュウニ国以外のいっぽん国の各州に広がりました。

 いっぽん国に避難した人々は、旧ひだりつ国の時代から宗教ナンジャ教を信仰していました。そのナンジャ教の理念とは、ナンジャ教の神を信じる者を増やしこの星全体に広げるならば、信者は天国に行けるというものでした。


 ナンジャ教はいっぽん国の各州に布教活動を行い次々と信者を増やし、ほとんどの州の住民がナンジャ教信者となり、ナンジャ教のコンジャ指導者は旧ひだりつ国のナンジャ教成立の地をナンジャ教の聖地としました。

 信者はいっぽん国のいろいろな州に住んでいても、心は聖地に向けられいました。ですから、いっぽん国は国の体裁は保っていましたが、人々の心はナンジャ国の国民でした。


  このようなおり、いっぽん国のウージ国家元首はナンジャ教のコンジャ指導者と会見を行いました。

 「ナンジャ教の勢いにはすごいものがありますね。何が人々を引きつけるのでしょうか」とウージ国家元首。

「ウージさんが我々避難民を保護していただいた結果です。ナンジャ教は旧ひだりつ国レフト皇帝の武闘精神に反発した人々が元々信じられていた土着の宗教を土台としたものです。ナンジャ教は唯一の神を信じ、この宗教を全世界に広めれば、信者は天国に行けるであろうとするものです。布教活動は集会などでナンジャ教の教えを広めるのです。決して暴力を行使することはありません。このような活動が支持を受けたのではないでしょうか」とコンジャ指導者は説明しました。

 「いっぽん国から独立したジュウニ国はどうするのですか」とウージ元首。

 これに対し「ジュウニ国は我々ナンジャ教を敵対視していますが、地道に布教活動を行い信徒を増やして行くしかないと考えています」とコンジャ指導者。


 ある日、ジュウニ国でナンジャ教の布教活動を行っていた信者3人がいました。

 集会に集まったジュウニ国の人々は「私たちはナンジャ教を信じることはできません。ジュウニ国で布教活動を行わないでください。今後も布教活動を行った場合には、実力を持って排除します」と語気を荒げました。

 ナンジャ教の信者は、この発言を無視して布教活動を継続しました。

ナンジャ教を信じないジュウニ国の人々は、これら信者3人を捕縛し、強制的にジュウニ国外に排除しようとしましたが、血気盛んな若者数10人が信者3人を殴打し死亡させてしまいました。

 これを切っ掛けにジュウニ国とナンジャ教との間で紛争状態となりました。


 ナンジャ教信者が多数住んでいるいっぽん国はジュウニ国から戦争を仕掛けられています。

 ウージ国家元首は「ジュウニ国はいっぽん国に戦争を仕掛けているわけではなく、いっぽん国に住んでいるナンジャ教信者に対してのものである。しかし、ナンジャ教信者はいっぽん国の市民であることから、彼らを守るためにジュウニ国と戦うしかない」と宣言しました。


おわりに

 このようにしてこの小さな星は再び争う星となりました。

 この小さな星では、これまでいろいろな国が勃興、衰退を繰り返し、くっついたり離れたりしながら、永遠に歴史を繰り返しています。

(完)




 

 


 


 

 


 


 

 

 

 


 


 

 

 


 


 


 

 


 



 


 


 




 

 


 

 








  

 

 、

  





このようにしてこの小さな星は再び争う星となりました。

 この小さな星では、これまでいろいろな国が勃興、衰退を繰り返し、くっついたり離れたりしながら、永遠に歴史を繰り返しています。

 あなたの星はどうですか・・・。



 

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