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6 予兆


 驚いたことに俺が助けた少女はこの街の貴族の名を口にした。


「あはは、嘘は良くないな。貴族の娘が俺のことを知ってるわけないだろ」


「嘘じゃありません。それにレストさんは街でもかなり有名ですよ? 私が知らないわけがないです」


 よくわからないが俺って有名人だったらしい。街の人が俺達家族の話をしていたのもだからかもしれないな。


「それは光栄だな。でも今の俺には関係がない。することがあるから」


「……もしかして復讐ですか?」


 スイネが尋ねる。


「さてどうかな。教会に復讐するとか貴族の娘に教えるわけないじゃん」


「ですが、目は口程に物を言います。レストさんの目を見ればわかりますよ」


 俺の眼をじっと見つめてくる。逆に俺もスイネの眼を見つめているが、なるほど確かに目は口程に物を言うらしい。


「止める気はないみたいだし、寧ろ推奨してるのか? 教会のお偉いさんが全員死んだら街はパニックになるぞ?」


 どうやらスイネは俺の悪行を認めているようだ。俺としてみればバラされる危機がなくなって好都合だが、スイネにメリットが見つからない。


 街が混乱して困るのは貴族様だろうに。


 対し、スイネは笑みを浮かべながら言った。


「この街でレストさん方ご家族はとても良い人たちだと評判でした。それは屋敷に籠っていた私の耳にまで届くほどです。そんな大切な方々を殺した教会を街が許すことはありません」


 スイネは「だから」と言って続ける。


「一人で成そうとはしないでください。レストさんが生きていることを知ればきっと街の皆さんはレストさんに協力してくれます。私もです。だから一人で無謀なことはしないで欲しいんです」


 有難い話だ。まるで本の中の物語のように心温まる話だ。余りに都合のよすぎて断りたくなるような話だ。


 でも俺はスイネの話を疑えなかった。それもそうだろう、家族のことを褒められて卑下にできるほど俺は家族を過小評価していないのだから。


 だがしかし、


「やっぱり俺の復讐は俺だけのものだ。大好きな街の人達には背負わせられない」


 人を殺す以上、誰かを頼れない。いや、頼りたくない。


「ですが、レストさんは武人でもないただの子供です。力が足りないん――」


 ――ヴヲォォォオオオ!!!!!


 スイネの言葉を大きな咆哮が覆った。


「なんですか!?」


 慌てて周囲を警戒するが何もいない。


「音の反響からして街の外からだな」


 研ぎ澄まされた五感をもって声の出所を掴んだ。


「どうしてそれが……?」


「ああ、さっき俺には力が足りないから復讐はできないって言おうとしてたよな? でも俺に力があることを証明できれば、スイネは諦めてくれるか?」


 街中の騒音が路地裏にまで入ってくる。何やらドラゴンが襲ってきたらしく、避難しているようだ。


「諦めたくはないですが、そもそもそんなことができるのですか?」


「まあ見ててよ。俺が俺の力でこの街を救って見せるからさ」


 丁度いいタイミングで来た好機に俺は内心ガッツポーズをした。


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