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4 救助


 女神の力を手に入れてからずっと世界がやけに狭く感じるようになっている。それは恐らく五感が鋭くなったからと思われるが本当にそうかは実際のところ不明だ。


 とはいえ、不明ではあるが五感が鋭くなっていることは間違いない。


「この声……」


 俺は鋭くなった聴覚で日常では聞かない声を聞き取った。


 蚊のように細い悲鳴だ。


 普通の人間では近くに居ても聞き取れないようなか細い救難信号。俺は復讐について考えていた脳を切り替え、悲鳴のした方に走り出した。


「お前ら、何してるんだ?」


 姿を捕らえて瞬間に俺は尋ねる。


 路地裏でうずくまった少女を3人のいかつい男たちが囲んでいた。明らかに正しいことではない。


「あ゛! なんだてめぇ」


「聞いているのは俺の方だ」


 ローブで顔を隠しているため俺は堂々としている。まあ、女神の力があるからこその態度でもあるが。


「見りゃわかんだろ? 俺達は悪人って奴だよ」


「へー、お前ら悪人なのか。それを自覚してなお変える気はないのか?」


「てめぇに言われるまでもねーよ。俺達は俺達の矜持ってもんがあるんだ。だからさ、見てしまったお前には死んでもらわねーといけないわけだ」


 言って男が俺にナイフの切っ先を見せつける。他の二人の男は信頼しきっているのか嫌がる少女を麻袋の中に詰めようと行動していた。


 誘拐か? 確かにあの少女は少し上等な服を着てるけど。良いとこのお嬢様なら一人で出歩かないだろうし……。まさかね。


「真実は解決した後に判明するってね。上等だ。お前ら全員ぶっ飛ばしてやるよ」


 俺はナイフを持って襲い来る男に向かって体術の構えをする。


 もちろん、戦闘職でもない俺には体術の心得なんかない。これはただの心構えだ。


 女神の力を見せてやるよ!


 ――聖球


 心の中で唱えると目の前に球体が現れた。それは神々しい輝きを放ちながら宙に留まる。


「動くな!!」


 俺は初めて聖球が発動できたことに驚くことなく警告する。


「これが何かお前らは知ってるか? 聖術だよ。神の加護を分け与えられた力だ。……後は分かるよな?」


 暗に男たちに告げる。俺は神職者であると。


 ゆえに戦いを挑むのは神への叛逆。敷いてはお前らの人生の終わりだと。


 俺にナイフを向けていた男が歯を食いしばる。


「良いチャンスだと思ったのに邪魔が入りやがった。お前ら、逃げるぞ」


 男の指示で男達は急いで逃げていった。


 俺は男達が去ったのを聴覚で確認して少女に声をかけた。


「大丈夫?」


 少女はそれに対し、小さくうなずいた。……正確には頷いたように見えた。


「ああ、先に麻袋をどうにかするべきだったね。それじゃあ、喋れないだろうし」


 俺はなるべく少女に傷をつけないように丁寧に少女を麻袋から助け出した。


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