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20 最後の始まり


 場所は聖地とまで言われた王都。俺がいるのは王都で最も巨大で荘厳な大聖堂だ。


 何故か、決まっている。復讐だ。


 俺は手始めに大聖堂に絶大な一撃をお見舞いした。


 ――ダァアアアァアン!!!!


 盛大な音を立てて大聖堂に穴が開く。


 通行人が何事かと目をむくが俺は翼を出して気にすることなく中に入っていった。


「やあやあ元気にしてるかくそ野郎ども!! 今日がお前らの命日だ、苦しんで死んでくれよ!!」


 開幕と同時に聖槍を取り出してステンドガラスに投げ込んだ。カラフルに彩られたガラスが砕け床に散乱する。


「貴方は誰ですか?」


「俺か? ああ、俺しかいないよな。俺は、神の代行者だよ。お前たちが捨てた女神のなぁ!!」


 まぬけな聖職者に聖槍を投げつける。どうせお前もゴミ司教の宗教に入ってるんだろ?


 なら同罪だ。死んでくれ。


 しかし、俺の聖槍はすんでのところで動きを止めた。


「会いたかったぜ」


「気が合いますな。私もです」


 男が神聖なオーラを纏って聖槍を掴んでいた。


「やっぱりお前は神の加護を持ってるんだな。女神を裏切って何故力を欲した」


「女神様は保守的すぎました。私はもっと先に進みたいのに弾圧ばかりで信者の輪を広げようとしない。ですが男神様は他宗教を侵食して大きくなろうという野望がある。素晴らしいではないですか」


 ハッ、ゴミ女神はこんなゴミにも捨てられたのかよ。笑えるな。


「そのためにお前は女神の信者をその神の力で洗脳していたのか。やることが姑息だな。その男神の程度が知れるよ」


「そんなことを言っていていいのですか? 今貴方の力は激減しているのではないですか?」


 男が俺に挑発じみた表情をした。今すぐ殴ってしまいたいぐらいうざいな。


 ――聖槍


 俺はノータイムでイライラを男に飛ばした。


「おやおや図星ですか? 攻撃が雑になっていますよ」


「ハッ、俺の力が衰えているって? 何を根拠にそんなことを言ってるんだよ!!」


 続けて聖槍を放つ。手で投げるだけでは足りないので大量に取り出して射出した。


 だが、全てが空中で止められる。


「貴方は男神様の影を感じた聖職者のことごとくを弾劾していたそうですね。気づかないのですか? 弾劾をしたことで貴方は自分から悪人が聖職者をしていたことを公表したのです。そんな腐れ切った宗教を誰が進行しましょうか」


 神は信者の数と質で使える力が増減する。よって信者が宗教に対して不信感をもてば必然的に神の力は減少するのだ。


 弾劾によって聖職者は奇麗になったとしても、悪党が聖職者として仕事をしていた事実は民衆に植え付けられ不信感になる。


 よく考えてるな。やはりただの悪党ではないか。


 でもな、まだ足りない。


 まあお前の頭脳じゃここまでが限界か。


「ははははは、馬鹿だな、大馬鹿者だ。だからお前はそこまでのくだらない人間なんだよ」


 俺の大仰な態度に男が眉を顰める。


「強がるのは無駄です。現に信者は不安になっています」


 まだ勘違いしてるのか。


「信者が不安になってるって? それ、どこ情報だよ」


「男神様の信者たちから私が聞いた情報……。まさか」


「俺がマヌケに弾劾を公表するわけないだろ? 俺を過小評価しすぎなんだよ」


 瞬間、大聖堂内に十数人の女神の信者が入ってきた。その誰もが狂気に目を光らせている。


「この人たちは……」


「弾劾した女神の信者だ。捨て駒を使うには丁度いい場所だろ?」


 花火を始めようか。


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