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2 神喰らい


 空腹が脳を満たす。


 狂信者共から逃げ続けている間に俺は倒れ伏していた。


「はは、許せねぇ」


 俺がここで死ぬのが許せないのではない。俺の家族を殺したゴミどもが今も生き延びているのが許せないのだ。


 絶対に生き延びてやる。


 そして全員ひき肉にして地面に血をぶちまけさせてやる。


「動け、動けよ」


 俺は力を振り絞るが、力を使い果たした俺の身体が動くことはなかった。


  ◆  


 暗い空間で目を覚ます。


「ここは……」


 地獄か? にしては何もなさすぎるな。


「どこだ?」


 俺は立ち上がって辺りを見渡した。しかし何もない。


 見える物もないし、そもそも地面すらなかった。


 虚空に浮いているようだ。底の見えない暗闇はまるで地獄の底にあるという永久の牢獄に思えてしまう。


 俺が手あたり次第に身体を動かしていると正面に人が合わられた。


「こんにちは。初めましてでいいよね」


「初めまして……。あなたは?」


 こんな場所にもの知り顔で登場した青年に尋ねる。


「君は神を信じているかな?」


「はぁ? 急になんだよ。……信じてるよ」


 俺は国教を憎んでいるが家族の宗教は憎んでいない。


「だろうね。知ってたよ。だから君に、レストに頼みがあるんだ」


 青年が真摯な顔で言った。


「頼みって?」


「先ずはこれを見てほしい」


 言って青年が大きな黒いケージを虚空から取り出した。ケージの中には美しい女性が閉じ込められている。女性は俺にも青年にも顔を見られないように体操座りの形で蹲っていた。


「こいつは?」


「レストが恨んで止まない宗教の女神だよ。ちょっとお痛が過ぎたんで神が総出で捕まえたんだ」


 青年は僅かに笑う。


「それは本当か?」


 ケージの中の神をじっと見つめる。俺は記憶の隅にあった女神の姿絵を思い出し、比べてみた。


 確かに似ている。顔は見えないが隠せない髪とスタイルが一致しているようだ。というか、ここまで美を体現した存在が他に居るはずがない。


「彼女は紛れもない女神だ。うん、レストの眼を見て確信したよ。どうかな?」


「俺に何をしろと?」


 この女神を見せた以上、女神にかかわることだろう。なら聞かないわけにはいかない。


「彼女を食べて力を奪い、彼女の宗教を潰してほしい」


 ……ん? 今こいつは何を言った?


 女神を食べる? 俺が?


「人が神を食べれるわけがないだろ……」


 俺の問いに青年は自慢げに笑う。


「これが私の力なんだ。どうかな? 神喰らいになってみないか? そして彼女の積み上げたものを叩き潰してみないか?」


 もし本当に女神を食べて力を奪えるなら、願ってもないことだ。


 でもなぜ?


「俺としては半ば決めてるけど、聞かせてくれ。それを俺がしたとしてお前たちにメリットはあるのか?」


「ある!! 大いにあるとも!! 私達神にとって異端者は皆殺しという掟は大っ嫌いだったんだ。だから人界で活動できて、尚且つ神を食べれる器を持つレストが現れるのを待っていた。どうかな? 受けてくれる?」


 そうか……。この女神は同じ神にも嫌われてんのか。


 なら自業自得だ。


「もちろん。俺がこいつの積み上げたものを粉々にしてやるよ」


 そして俺は女神を喰らい、神の力を得た。


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