14 司教の思惑
教会内に入ってすぐ俺は苦笑する。
「聖女様、お祈りの時間は終わりましたよ」
「いいえ、私はまだあの殿方への感謝を終えていません」
「あの、ここは神への祈祷の場ですのでいくら聖女様であってもそういうのは……」
良くないときに侵入してしまったらしい。俺は隅を通って奥に向かう。
――ぞぞぞ
「気配がします」
「なんのですか?」
「あの殿方の気配です」
まじかよ。
だがまだ完璧にはばれていないはず。俺は深呼吸して心臓の鼓動すらも小さくなるように警戒した。
「……すみません。勘違いだったようです」
「私もそう思います。教会内に入ってきたら流石の私も気づきます」
「もしかしたら、あの殿方が私のことを思ってくださっていて、それが私の直感に触れたのかもしれません。ああ、それならなんと嬉しいことでしょう。わた…………」
長くなりそうだし先に進むか。
俺は当初の目的の情報収取のため教会深部に入っていった。
やはり見た感じでは何か企んでいる様子は見られないか。
音をたてないように扉を開き中に入る。
「書類がやけに多いな。でも聖術の気配は感じない」
そもそも聖術は神の加護によって行う術であるため俺の監視下にあると言って良い。
だから不正をしようとしても不可能なのだ。
「考えすぎだったかもな。念のため書類は回収しておくか」
本当なら複製したいが女神の力ではそこまで万能ではない。
重要そうな書類を邪魔にならない程度持った。
「収穫はないけどしょうがないし帰るか」
ガチャ、と扉が開く音がした。
「誰だ……。む、誰だ?」
初老の男が部屋に入ってくると透明化している俺に問いかけてきた。
気づかれた? でもどうして……。いや、それ以前になぜ死んでいない。
よくわからんが今はこの場を潜り抜けるのが先か。
俺は逡巡ののち、口元を釣り上げた。姿を現し後光を纏う。
「私は傀儡です。女神さまの御意志のために送られてきました」
「……その輝きを見れば証明となるか。話せ」
警戒してる? まあいい。
「最近女神様はあなた方の行動を不審に感じていらっしゃいます。心当たりはおありで?」
「女神さまに隠し事などありますまい。それ以前に私達信者にはできようのないこと。女神様は全てを見通すのではないのですか?」
これはまずいな。女神の力が誇張されて信者に広まってる。
人の世界では制限が多いことが伝わってないのか。これだと、舐められる。
「女神様はあなた方から直接懺悔することを望んでおられます。それを理解して――」
「私達はこの街の民衆を全員殺し女神さまに献上を約束します。そう伝えてくれ」




