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1 復讐の炎が焚かれて


 許せない。許せない。


 俺は燃え上がる我が家を見て誓った。絶対にあいつらくそ野郎どもを全員粉みじんにしてこの世から消してやると。


  ◆  


 俺の国にも国教がある。その宗教は古くからあって世界でも最大級に信者を持つ由緒ある宗教だ。


 この国にはその発祥となる聖地が存在し、そのせいか国に対する宗教の影響が凄まじいほどにあった。


 様々な場所に教会を建てているため、首都だけでなく地方にも大きな影響を与えている。宗教の枠組みを超えて政治にも介入するため、もはや宗教そのものと呼べるほどにこの国を支配していた。


 俺はそんな宗教に支配された国の小さくも大きくもない街で生まれた。


 家族は五人。父母兄妹、それと俺。家族間の仲は良く俺たち家族は笑顔の絶えない毎日を過ごしていた。


 ごく普通の家族。だが、たった一つだけ他とは違うところがあった。


 それが宗教だ。


 俺達一家は国教を信仰せず、他の小さな部族の宗教を信仰していた。


 ある日俺は両親に尋ねた。


『どうして俺の家だけ違う神様を信仰しているの?』


 それに対し両親は


『本当は悪いことなんだ。だからレストがやめたくなったら、いつでもやめていい。親の宗教観に子供が付き添う必要はないんだから』


 と言った。


 俺の両親は知っていたのだ。異教徒だとバレたときにどんな仕打ちを受けるのかを。


 だがその時の俺は


『国の宗教はうさん臭くて嫌なんだ。だから俺はやめないよ』


 と現実を知らない子供のようなことを言ってしまった。



  ◆  


 今ならわかる。あの時両親は今の宗教をやめるための口実を見つけたがっていたんだ。


 俺がやめると言えば、それを皮切りに国教を信仰する気でいたのだ。


「でももう遅いんだよ」


 今更気づいても遅い。遅すぎる。


「もう皆死んでしまったよ。どうしようもない」


 命は蘇らない。


 過去の俺の子供の発言は取り返せない。




 なら、、、この気持ちを、この憎悪を、この怨嗟をどこにぶつければいい。




 ――過去の俺にぶつけるか?


 不可能だ。過去はもうここにはない。


 ――国教を信仰しなかった家族にぶつけるか?


 考え方の違いってだけで何故、殺されなきゃならない。悪いことをした訳ではないだろ? ……ああ、そうか。



 そういうことか。


「この国では国教を信仰しないことは万死に値するのか」


 だとしたら納得できる。家族はこの国の宗教(ルール)に抵触してしまったのだ。


 俺の家族が殺されたのは当然だった。寧ろ今まで生きていたのがおかしかったんだ。


「なんだそれ。狂ってやがるな」


 狂ってる。だったらそれ、


「俺が壊してやるよ」


 一人逃げ延びた俺は、復讐を固く誓ったのだ。


新作です

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