表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

前世・悪役令嬢モノ

つまらない人生

作者: 佐田くじら

疲れてる時に書いたので、暗いです。救いが無いので注意。

一回目は実につまらない一生だった。



凡庸な家に生まれ、特に文句をつけるところの無い親に育てられ。


子供の頃は子供らしくサッカー選手を目指す、実に平凡な子供で。


大人になるにつれて夢を忘れ、公務員になって。


職場で会った同い年の妻と結婚し、二人の子供を育て、八十七のときに癌で死んだ。



何て普通なのか。


でも、あの頃の俺は、何故かあの人生に満足してた。



死んだあと、天上に住む”奴”に会った。


奴は、俺の人生はつまらなすぎると言った。


もっと楽しませろと言った。


俺が、見て楽しめる人生を見たいのならそういう奴を見てれば良いと言うと。


それはどういう奴なのか問われたから。


俺は、悩んだ後に顔の良い奴だと言った。



気付いたら、生まれ変わっていた。


鏡には、人間離れした綺麗な顔が映る。


これが二回目の人生だった。



顔の良い俺は、当然モテる。


遊ぶのには困らない。


だが、それだけだった。


凡人に染まりきってる俺は、保守的に生きてたし。


日本人として育った俺は、謙虚に生きてたから。


嫉妬も憤怒もされず、山も谷も無かった。



死んだ後、やっぱり面白く無いと言われた。


俺もそうは思ってたけど、言われるままは癪だった。


だから、三回目は権力者を所望した。



三回目の俺は、どこぞの大国の王子に生まれた。


兄貴も姉貴も、妹も弟もいたが、俺は抜きん出て優秀で顔が良かった。


優秀なのは兄弟たちの何十倍も生きてきたのだから、当然だった。



反省を生かしてそれらしく振る舞っていた俺は憎まれ、それ以上に称えられた。


議会で斬新な意見を出し、戦争では手柄をいくつも立てた。



数年後、俺は自然に王になっていた。


名君と持て囃される俺は、仕事に生きた。


義務で妃をとり、子を成して、神経の全てを政治に注いだ。


五十手前で過労死するまで。



神に、やっぱりつまらないと言われる。


もう、常套句だ。


俺は三回生きてやっと分かった。


俺という人間は、所詮はその辺に落ちているような石っころみたいな。


ただのありきたりな人間なんだと。



奴に、おまえを楽しませるのは無理だと伝えた。


すると奴は、ニヤリと狡そうに笑った。



ぱちんと覚めると、四回目の器に入ってた。


正直、うんざりだった。


適当に生きようかと考えて、はたと気付く。


……奴を楽しませないと、また地獄が続くのか。



それから、俺は分かりやすく良い子として生きた。


いつもニコニコ笑い。誰に対しても平等に。


沢山の人間に好かれたし、俺を嫌う人間には自ら近づいて懐柔した。



そしてある日、親を殺した。


理由も無く。優しい、気の良いあの親を。


自分のために。



すぐに捕まった俺は、動機を問われた。


だから俺は、つまらないから、と言った。



異常者とされた俺は、それでも二人殺した罪で死刑となった。



処刑された俺が奴に会うと、奴はいつかのように笑って言った。


つまらないね、と。

ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ