マリア誕生秘話
片桐君が、「おいっ、咲子っ!なんちゅーバイトしてんだよっ!」と、勢いよくドアを開ける。
ハアハアと息を切らし、髪はボサボサだ。
恐らく、かなり急いで走ってきたのだろう。
「片桐君・・。」と、私が言った途端。
「咲子。おめぇ、いつからバイトで10万円とか渡すような所で働くようになったんだよ!
第一、おめぇ処女じゃねーかよっ!
ばか!もっと大事にしろよ!
まさか、まさか!処女売ったんか!?おい?
その金額は、ヘルスの値段じゃねーし!
吉原あたりの高級ソープ一晩分じゃねーかよっ!」
片桐君が、顔を真っ赤にして声を荒げている。
私の事なんて、正直何とも思ってない筈なのに。
何で、私の為に彼はこんなに怒っているんだろう?
「あの・・片桐君・・。おっ、落ち着いて・・。」
と、私は言った。
そんな二人の光景を
「へぇー、面白くなってきたねぇー?!
なになに?
もしかして、この男は実はツンデレでしたみたいな展開?
本当は、バージン咲子の事が好きだけど、バージンだから簡単に手を出してはいけないし・・
でも、いざ他の男に抱かれたら気になるし・・みたいな?
おいおい!おめえらっ!
昭和の少女漫画かよっ!
めんどくせ!
つまんねーよっ!
はやく、チューしろよ!チュー!
思い切り、笑ってやるからさっ!
あははは!」
と、月野マリアが爆笑して面白がっていた。
本当に、何処までも失礼な奴だと思った。
「片桐さん。来ていただいて有難うございます。
貴方が来て頂ける事を、心よりお待ちしていました。
実は、貴方に頼みたいお仕事があります。
此処にいる月野マリアは、官能専門の天才ストーリー作家です。
彼女の仕事を最大限に生かすためには、彼女自身が官能を体感しながら書くことです。
ストーリーを組み立てるには、やはり自身が体験して体で感じる。これが一番だと思います。
しかし、実は彼女。
度重なる性交渉に伴い、梅毒にかかってしまいました。
もしかしたら、余命幾ばくも無いかもしれません。
彼女自身が性交渉をすることは、大変危険になります。その為、彼女はAVの道を退く事になりました。
表向きは、ストーリー作家転身と伝えてありますが。
正直、彼女の性病が原因で仕事が出来なくなったという理由もあります。
AVを引退すると、ソープなどの風俗に転身する女優は沢山います。
しかし、彼女にはその選択肢もありませんでした。
残り少ない余命の中、
彼女自身。一体、自分に何が出来るのか模索し続けたのです。
彼女の中のエロの世界を、もっと別の形で世に送り出す事が出来ないのか・・。
そして、考えついた結果「脳内で産み出されるエロスをストーリーとして組み立てる。そして、新しい官能の世界を開拓することに今後は費やしたい。私が生きている限り。」と、言い出したのです・・。
ストーリー作家。月野マリアの誕生です・・。」
佐藤雪が、淡々と答える。
それを、月野マリアが「佐藤さーん、着色しすぎーっ!あははは!私そんなこと、まじ言ってねぇーし!」と、指差して突っ込んでる。
何かもう。
誰が本当のこと言って、嘘言ってるのかさえもわからなくなってきた。
そんな私の不安を他所に、佐藤雪は顔色一つ変えることなく話し続けた。
「そんな訳で、月野マリアの素晴らしき作品を生み出す為に。
今から、片桐さんと咲子さんには。
月野マリアの目の前で、性交渉して頂きます。」




