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処女、官能小説家になる。  作者: 星ナルコ
咲子 25〜30歳編
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嘘まみれの結婚式

私は、特別他の参列者と仲良かった訳でもないので女の子達と話す事も無かった。

勿論、仲が悪かった訳では無い。ただ、特別話したい人もいなかった。


いざ話した所で、マリコの周囲の女達は性格が悪い女が多いから話したいとも思わないのだ。

普段は愚痴や悪口ばかりの癖に、表面的には人を褒め称え合う女たち。本当は、心ではそんな事全く思っても無いくせに。みんな、結局は自分が一番なんじゃない?

そんな光景を見る度に、私は胸糞悪かった。だから、群れから少し離れてぼんやり俯瞰してることが多かった。


結婚式の間は、ずっと塚本君と一緒に行動することが多かった。

披露宴のテーブルも、何故か塚本君と隣の席だった。

片桐君が、私と塚本君をくっつけようと仕組んだのだろうか。なんて、余計な事を考えてしまう私は捻くれてるのかな・・。


マリコのお色直しは、ピンクでフリフリの可愛らしいドレスだった。華奢で色白の彼女によく似合っていた。


「マリコかわいいーっ!」

「ほんと、綺麗っ!」


と、女たちはこぞってパシャパシャとカメラのシャッターを押しつづけた。

この女たち。いつもマリコの前ではお膳立てする癖に、いなくなった途端にマリコの悪口ばかりだった。


「あの女さぁ。本当、計算高いよねぇー。どうやって片桐君に取り入ったのかしら?

顔だってよく見りゃブスじゃん。片桐君みたいな超絶イケメンには、勿体ないよね。」


「ほんと!片桐君なら、もっと可愛い子ゲット出来たよね!」


「わかるー!でも、ヤリチンすぎて可愛い子には飽きたのかもよー!可愛い子と遊びすぎてブス専になったんじゃない?」


「しかも、親友の咲子にはずっと教えてなかったんでしょう?酷いよね!


咲子がずっと片桐君にラブレター書いてるの知ってたから言えなかったとか言ってたけど。そんなもの、ただの言い訳!


そんなもん、いつかバレるに決まってるんだからさぁ。


本当に、親友の事を思うなら最初から言うべきじゃない?」


マリコのお祝いを買いに行く為に集まった女子会の会話は、それはそれは酷いものだった。このメンバーが、全員挙式に参列すると思うと吐き気がした程だ。


女は、計算高い女や、自分たちの憧れだった男を手に入れた女にはいつだって厳しいのだ。

ただでさえマリコは計算高い所があった為、皆のボス的存在の割には不人気な女だった。


それでも彼女がずっとボス的存在でいれたのは、「本気で怒らせたら怖い」という雰囲気を何処となく漂わせていたからだろうか。


マリコのスッとした一重瞼は、よく言えばクールビューティーと取れるが、時折キッと睨みつけたような表情に見える時もある。

時折少し、人を嘲笑うようにクスッと笑う時もあった。


普段何を考えてるかわからない雰囲気が怖くて、誰もマリコに逆らえなかったのだ。


片桐君も、マリコも。一体何の為に何百万もお金を出して結婚式を行っているのだろうか。此処にいる人間が、必ずしも全員貴方達を祝福してる訳ではないというのに。


もしかしたら、本気で祝っているのは貴方達の家族、親族と。あと、私の隣の塚本君位かもしれない。


向こうのテーブルでは、酔っ払った男達が「いいぞ!いいぞ!片桐ー!やれやれー!」と、悪酔いしながら野次を飛ばしていた。

片桐君は少し苦笑いを浮かべ、マリコは動じずにニコッと微笑んだ。その微笑みが返って不気味だった。


「それでは、新婦マリコさんから。両親への手紙があるそうです!では、マリコさん。どうぞ!」


司会者のアナウンスにより、結婚式恒例の、「家族への手紙コーナー」が始まった。


「おとうさん・・おかあさん・・いつも、迷惑ばかりかけてごめんなさい・・。


私は、お父さんとお母さんの子供に産まれて本当に本当に良かったって思ってます・・。


本当に、本当にありがとう・・。」


マリコが、本当は腹違いの娘という事は伏せてあった。マリコの義母は、全くマリコの目を見ようともしなかった。

目を潤ませていたのは、マリコの父だけだった。


彼女はいつも、腹違いの妹ばかり可愛がる継母の悪口をボロカスに言っていた。


「あんな女、地獄に落ちて死ねばいいのに。あいつがパパをママから奪略なんてしたから、私のママは何処かへ蒸発していったの。

ぜんぶ、ぜんぶ、あいつのせい。あの女も、パパも。全て許せないわ。」


この結婚式は、全て嘘で塗り固められているように感じたのは私だけだろうか?


周囲からは、微かに啜り泣く音が漏れていたが、何故か全てを知ってた私は泣くにも泣けなかったのだ。



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