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処女、官能小説家になる。  作者: 星ナルコ
咲子 25〜30歳編
43/61

塚本君

「俺。こういう悪いところあるんだよね。知ってたと思うけど。ごめんな。」そう言って、片桐君は私のアパートから去っていった。

少し決まりの悪そうな笑顔で、「バイバイ」と足早に去っていった。


マリコと片桐君の結婚式は、それから一ヶ月後の事だった。


結婚式中、片桐君は殆ど私の目を見ようともしない。ここに私が存在している事に気づいてない位の無視ぶりだった。

まるで、あの夜の事が嘘のようだ。


あの時は呆れていたかもしれないけど、いざタキシード姿の彼を見ると切なくなる。

あんな最低男だとわかっているのに、それでも彼に抱きしめられた温もりはまだほんのり残っているのだ。


私は、何故ここまで馬鹿な女なのだろうか。こんなぞんざいな扱いされてもなお、何故あんな男を見て切ない思いが込み上げるのだろうか・・。


「マリコちゃん、綺麗だね。ほんと、白いドレスがよく似合ってる。」隣で、塚本君は嬉しそうに微笑んでいた。


私は、軽く相槌を打つ。それ以上は、何も語りたくなかった。親友の結婚式でこんな複雑な思いを抱えて参列する女の、なんと最低な事か。


新郎の一ヶ月前のキスの温もりを、挙式のキスを見て思い出すなんて。なんと最低な女なのだろう・・。


「咲子ちゃん。はい。」塚本君が、そっと何も言わずにハンカチを渡してくれた。

気がつけば、私の頬を涙がポロリと零れていた。


「あ・・ごめんなさい・・。」


「ははは。そりゃあ。親友の結婚式だからね。感動もひとしおだよね。」


塚本君は、クシャっと笑った。少しタレ目で笑うと目尻にシワが寄って優しそうな雰囲気の人。


片桐君のようにヤンチャなイケメンタイプではないし、ヤンキーでもない。


塚本君は、どちらかというと特別目立つようなタイプの人ではなかった。

どちらかというと、静かに淡々とクラスに馴染んでいくタイプ。好かれすぎず、嫌われすぎない。毒にも薬にもならないタイプだった。

ただ、片桐君とは全く正反対のタイプだった筈なのに何故か仲が良かった。

片桐君は、いつも困ったことがあると必ず塚本君に相談していたと聞いたことがある。


「俺も、片桐とは長い付き合いだからね。あいつは、本当にどうしようもない奴でさ。

彼女出来ても、あっちこっちホイホイ行くもんだから・・。


マリコちゃんと付き合う事になったと聞いた時も、「やっぱり本当に好きかどうかわからない」と言い出してウジウジ悩むわ。浮気はするわで・・。


正直、大丈夫かな?と、思っていたんだけどね。本当に、こうして二人の晴れ姿が見れて僕も感慨深いものがあるよ。」


と言って、塚本君はニコニコと笑った。





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