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処女、官能小説家になる。  作者: 星ナルコ
咲子 25〜30歳編
32/61

結婚式

(咲子 25歳)


今日は、片桐君とマリコの結婚式だ。


マリコの親友だった私は、挙式、披露宴とお呼ばれすることになった。


本当は、二次会も誘われてたけど。「用事があるから」と言って断った。


勿論、用事なんてデタラメだ。


正直、貴方達の結婚式に朝から晩まで付き合わされるなんて御免だった。


結婚式の招待状をもらった時、正直複雑な心境だった。


欠席に○しようか・・。


でも、マリコとは小学校の頃からずっと幼馴染で仲良しだし。行かない訳にもいかないし・・。


最近、奮発して購入した一眼レフは。

決して貴方達の為に買った訳じゃない。


自分への頑張ったご褒美に買おうと思ったし。

彼氏が出来たら、この写真で沢山撮ろうって心に決めて購入したカメラだった。


そのタイミングが、たまたま片桐君とマリコの結婚式に被っただけだった。


チャペルに、白いタキシード姿の片桐君が登場する。


一同、どよめきが起きる。

相変わらず、八頭身のスタイルと端正な顔。


片桐君は、流石学生時代にファンクラブを抱えていたイケメンだけあって、タキシードがよく似合っていた。


五年前のあの時。


もし、私が月野マリアの言う通り、片桐君を追いかけていたなら?


未来は変わっていただろうか・・?


バージンロードを歩くのは、マリコではなく私だったのだろうか・・。


気がつけば、涙が溢れて止まらなくなった。

必死にガチャガチャと一眼レフを組み立てる。

しかし、慣れないせいか上手く組み立てられない。


この光景を見て、クスクス笑っていた隣の男が「貸して。僕が組み立てますよ。」と、言ってくれた。


「あ、ありがとうございます・・。」


こんな事なら、カメラの使い方位勉強して挙式に臨むんだった・・。


説明書読むのが苦手だったし、その場にいけば何とかなるだろうと思っていた私が甘かった。


ふと、隣の男をよく見ると。

何処かで見覚えのある顔だった。


「あれ・・塚本君?同じ中学の・・。」


と、私が言うと男はニコッと笑った。


「咲子ちゃん、久しぶりだね。

僕の事覚えていてくれてたんだ。」


忘れもしない、塚本君。


だって、マリコが片桐君に


「咲子は、塚本君の事が好きなんだって」


と彼女の嘘の為に利用された張本人だったから・・。


あの時、一瞬でも何の罪もない塚本君を憎んでしまった私がいた。


「すみません・・。ありがとうございます・・。」


と私が言うと、


「いや、いいよ。それにしても咲子ちゃんは優しいね。親友の喜びの為に、こんなに泣いてくれるなんて。」


と塚本君は言った。


塚本君。違う。違うの。

これは・・。


と思っていると、


やがて、賛美歌の合唱が始まり大きな扉から大きなベールに包まれた花嫁が登場する。


マリコは、結婚が決まってから一年コースのウエディングエステに通い、体型もかなりスリムになっていた。


全身脱毛にも通い、この日の為にとても頑張っていた。


女子会で、マリコはいつもその話を嬉しそうにしてきた。


「なんかもうさぁー。結婚式って憂鬱だよねぇー。色々決めないと行けないこと沢山あるしぃー。早く終わってくんないかなぁー。」


と、ニコニコして話すマリコを見るたびイライラした。


それでも、指輪交換と誓いのキスを交わしたマリコは聖女のように美しかった。


人は、少しのタイミングで幸せを勝ち取り。

少しのタイミングのズレで何も掴めなくなる。


私は、片桐君と離れてからもずっと彼氏すら出来なかった。


月野マリアと別れてからも、ゴーストライターの仕事を続けていたが・・。


案の状、仕事の評価が一気にガタ落ちしたのだ。


月野の力がなければ、結局面白いストーリーが作れなかったのだ。


このままではいけない。


面白いストーリーを作る為には、経験値が必要だった。


私は、その後OLとして就職する事になった。物書きの仕事が減ったという理由だった。


社会人になると、出会いなど殆ど無くなってゆく。


本当は、もっと沢山恋愛経験値を増やしたかったのに・・。


何度も、友人に誘われれば飲み会へ行きパーティーにも積極的に参加した。


だけど、想う人には好かれず。

想わない人からばかり追いかけられた。


処女の私は、「最初は、やはり愛する人と」という拘りがあって捨てる事が出来なかったのだ。


やがて、この葛藤をそのまま素直にストーリーをして組み立てて小説を作る事にした。


私の書いた「処女、官能小説家になる」は100万部のベストセラーとなった。


「月野マリア、復活作!」として、メディアはこぞって話題にした。


しかし、私にとって。

この作品は、本当の意味でのデビュー作だったのだ。


気がつけば、仕事で夢中になったまま25歳になってしまった。


その間に、ヨリを戻した片桐君とマリコの結婚が決まってしまった。


今日は、片桐君の結婚式。


私の目に溜まった涙を誤魔化す為に、私は必死でカメラのシャッターを押し続けるが、レンズ後しの二人は涙で霞んでボヤけたままだった。












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