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処女、官能小説家になる。  作者: 星ナルコ
咲子 16〜20歳編
29/61

八つ当たり

「咲子、それでいいの?」


幽霊でもあり、ずっと私達を見守ってくれた月野マリアが心配そうに言った。


「マリア、気にしないで。

これは、私たちの事よ・・。」


私は、かったるそうにマリアに言った。

正直、今は放っといて欲しかった。


「咲子。せめて、貴方の気持ちをキチンとぶつけるべきよ・・。


私は、ずっと後ろで貴方達の事を見てきました。


実は、貴方達がそれぞれの形でお互いに想い合っていることも知っていました。


それが、恋なのか。愛なのかは複雑な所だったのですが・・。


もしかしたら、本人達自体もよくわかってないのかもしれません。


何故、お互いに相手の事が気になるのかということを・・。


しかし、片桐さんに他に女がいた事も知ってたんです。


幽霊である私には、透視能力があります。

人の心が、全て読めてしまうのです。


人間とは、複雑なものです。


いくら相手の事が好きだからと、その気持ちを素直に伝えるという事はとても難しいのでしょうか?


私は、生きてた頃に一度だけ恋をしました。


しかし、私のようなトラウマを抱えた人間が私の事など好きになってくれる訳など無いと思って・・何もできませんでした。


こんな汚れた体を、誰が愛してくれるのかと・・。


彼は、私のマネージャーでした。


私の事を本当に好きになってくれて、何度かAVの仕事を辞めさせようとしました。


でも、既に年単位で契約してた私は後戻りする事など出来なかったのです。


どんどん、私の撮影は激しくなってゆき・・


それでも、私を仕事の立場上支えなければいけなかった彼は、精神的にもおかしくなっていきました。


やがて、マネージャーを辞めて去ってゆきました・・。


あの時、もし。


私が素直に彼への想いを伝えて、彼の為に仕事を辞めていたら・・。


と、何度も後悔しました。


想いは伝えれる時に、伝えた方がいいですよ。勿体無いですよ・・。


咲子さん!」


何言ってるのよ?


相手の気持ちが去っている時に、追いかけるなんてことしたら。


どんどん、相手の気持ちなんて去っていくものよ。


最初から、そんな風に思ってたなら。

もっと早くに教えてくれても良かったんじゃない?


私は、段々月野マリアに腹が立ってきた。


「うるさいなぁ!別にいいじゃない!

私の勝手じゃない!

だったら、最初からそうやって言ってよ!

そうすれば、こうならなくて済んだんじゃない!」


本当は、誰のせいでも何でもないんだ。


ただ、私は上手くいかない現状に八つ当たりしたかっただけだ。

月野マリアの優しさに、甘えているだけだ。


私。本当、最低。


こんな時に、つまんないプライド抱えてさ。


好きな男に、素直に「好きです」すら言えなくなっただけじゃない・・?


四年前は、あんなにラブレターも書いていたのにさ。


いざ、毎日彼が隣にいるとそれが当たり前と感じてしまうようになったのだ。


彼に、気持ちを伝えることすらおざなりになってしまった・・。


もし、隣にいた頃にも。

ちゃんと想いを伝えていたなら・・。




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