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処女、官能小説家になる。  作者: 星ナルコ
咲子 16〜20歳編
14/61

突然の抱擁

「すみません・・貴方達も目撃者と言うことで事情聴取させて貰えないでしょうか?」


と、警官の一人が言った途端。


片桐君が、私を突然抱きしめてきたのだ。


え、何で?どうして?このタイミングで?


私が、何が何だかよくわかないままキョロキョロしていると耳元でボソッと「いいからいいから・・」と囁く。


そして、片桐君は警察官に


「すみません・・。

実は僕達、見てわかると思いますが・・。


カップルなんです・・。


たまたま二人で道を歩いてたら、佐藤雪さんに呼び止められたんです。


佐藤さんに「いい仕事があるから」って言われたんです。バイト代も、10万円あげるって言われて・・。


で、いざ呼ばれて来たら「ここで、小説のネタを作るために性行為して下さい」って言われたんです。


でも、僕達。

嫌だから断ったんです。


そしたら、あの佐藤さんって人が発狂して怒って来たんです。


そして、困ってた所に佐藤登さんと、警察官の方達が沢山来たんです・・。


僕達、本当はこれからデートの一番良い所だったのに・・。」


長い睫毛。アーモンド形の綺麗で澄んだ瞳。スッと通った鼻筋。キリッとした口元。


どれを取っても、黄金比率のような端正な顔。


そんな片桐君のイケメンフェイスが、私の至近距離2cmの所にあるのだ。


いつも、片桐君の事は遠くから眺めてるだけだった。


いざ近くに来たと思えば、他の女との武勇伝聞かされるだけ。


「こないだホテル行った女、マジ顔と巨乳ってだけで最悪だったわー。


風呂に入るにしても、服脱ぐ所から全部俺がやらないといけなくてさー。


俺は、オマエの召使いかっつーのぉー。


しかも、タバコ吸いすぎてマンコも臭くて勘弁してくれって思ったわー。


早く終わらせてぇーって思ったから、

途中から居留守使って行為の手前でボイコットしちまった。


ま、と言っても。

オマエの貧乳処女よりは、多分マシだけどな。」


「こないださぁー。


俺の事が好きだって告白して来た夏美って女がいたんだけどさぁ。


垢抜けた感じの可愛い子だったから、とりあえず一晩だけ寝たんだよねぇー。


そしたらさぁ。

その女が、マジ最悪で!


なんと一晩寝ただけなのにストーカー化して、俺の家の前で毎日待ってるんだけどぉー!


「てめぇ!何やってんだよ!マジ迷惑だから、本当辞めてくんない?」


って言うと「ひどい・・。あの時は、好きだよ・・肌スベスベやなぁ・・夏美可愛いよ・・って言ってくれたのに・・。」とか言ってくんの。


ばーか!

そんなもん、俺がお前とヤル為のお世辞みたいなもんだろーが。


豚足白豚みたいな足の褒め言葉、こっちは必死に探したんだっつーの!


ベットでの男の台詞なんて、マジにしてんじゃねーわって思ったわ!


しかも、親父の出社時といつも被るもんだから、「オマエっ!何やってんだっ!女の子を泣かせてぇぇ!」って、毎朝怒られる訳・・。ホント、迷惑・・。


でも、夏美はさぁ。

一応、見た目は垢抜けててオシャレな感じだったんだよねぇ。


まっ。お前みたいに、冴えない女よりはずっとマシだわな。」


そんな話を、片桐君から散々聞かされる。


親友のマリコからは、


「なんでそんな話、咲子にしてくるんだろうね。片桐、ホント最低。


咲子のこと、馬鹿にしてるとしか思えない!


いくらイケメンだからって。

そんな男を好きになるなんて勿体無いよ!


咲子。


もっと、自分を大事にしてくれる人を好きになりなよ。


そうしないと、幸せになれないよ!咲子という自分が可哀想だよ・・。

もっと、自分を大事にしなくっちゃ・・。」


と、いつも止められた。


それでもいい。

ただ、近くで貴方の顔が見れたなら。

話が出来たなら。って、思ってしまう私。

正直、片桐君を見てるだけで幸せなのだ。

ああ。今日も片桐君が、幸せそうに笑ってる。それを見てるだけで、私は幸せだ。


他にも、いくらでも男はいるのに。


なのに。


どんなに沢山の男がいても、片桐君にしか目がいかないのだ。


この片思いが、苦しいのはわかってる・・。

わかってるけど・・。


だけど、そんな片桐君が。


今は、私だけを真っ直ぐ見つめてくれているのだ。

例え、警察官からの事情聴取から逃れる為の演技とはいえ・・。


こんな事は夢だろうか。


頬を抓ったらやっぱり痛くないのだろうか。

私の心臓の高まりが、大きく鳴って止まらない。


こんな風に突然なるなんて、まさか想像してなかったから。ああ。どうしよう。


どうやってリアクション取ったらいいの?


出川哲朗みたいに「ヤバいよヤバいよ」って言ったら駄目?


ずっと、このまま時が止まってくれたらいい。そのまま永遠に、この状態のまま年を取って死んでもいい。


片桐君・・。

貴方の性格が、ヤリチンで最低最悪クズ男ってわかってるけど・・。


それでも、どうしようもなく。


片桐君が好きだ。好きだ。好きだ。




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