ゲンジ05 ミステイクプロセス
05
「さて どうしたものか」
「さっき聞いたぜそれ」
「わかってるよ・・・はぁ」
その後 緊急時逃げられるように洋服に着替えたけど
雪崩で通れないんじゃ意味がない
そして 現在ラウンジに男4人黙り込む始末
「なあ ゲンジロウって名前だったな」
とカレナリさんに話かけられた
「え はい なんですか?」
「お前さん やけにツルミさんをかばってるように見えるが
彼女が犯人じゃないってことくらいは予想できるのか?」
やはり そうなるよな
カレナリさんの厳しい口調に対し僕は
「どう考えても明白です 大男に対して喉笛を切り裂くことは
とても女では苦難だと思いませんか?しかも物音立てずに」
と自分の考えを述べた
ツルちゃんは 人を殺すようなことはしない
・・・絶対だ!!
「油断させてからっていう可能性は?」
「ありえませんな まったく知らない他人が部屋に入ってくるっていうのに
そこで油断するほどカズマさんはばかには見えません
・・・僕でさえ警戒しますよ」
「媚を売るような行為は?ツルミさんはまだ若いからな」
・・・
・・・・・・ふざけるなよ
「いい加減にしてください!!
あなたはあなたでツルちゃんを疑うのはわかりますけど
そこまで侮辱するような言い方すると僕が・・・許さない!!」
カレナリさんが無心に言った言葉に僕はついに怒った
ツルちゃんは僕の大切な人だから ここまで言われると腹が立つのも当然だ
「・・・すまない 言い過ぎたようだ
俺としたことが 判断に先入観を混じってしまったようだ」
「ほら ゲンジ 少し落ち着けって
ツルちゃんが大事なのはわかるけど 感情を高ぶらせてどうすんだ」
リョウが僕を宥めるように背中を叩いた
カレナリさんは申し訳なさそうに謝ったから
これ以上声を大きくして怒る必要はないだろう
「いえ 僕こそ怒鳴ってしまって すいません」
僕たちの口論にオーナーはただ聞きながら
コップに紅茶を入れてくれた
「紅茶でも飲んで落ち着いてくださいね
それなりに自信を持てる茶葉でございますので ご賞味を」
見た目だけではなく上品な振る舞い 寛大な心
さすがツルちゃんを一目惚れさせたことだけある男だ
僕ではかなわないな
「あの さっきから私の顔になにかあるのでしょうか?」
「あいえ なんでもないです すいません」
オーナーは微笑みで応じてくれた
僕が女だったら惚れるだろうな きっと
それからしばらく経ったところで
「ハルカさんは確かに6時頃食堂にいたはずだよな オーナー」
カレナリさんがハルカさんの話を持ち出した
「えーそうですけど」
「なにか不審な点なかったか?」
「いや特にありませんでしたよ
もし彼女がカズマさんを殺したとすれば
きっと血だらけの姿でくるでしょう
それか もっと遅くくるはずなのでは?」
「・・・ オーナーの言うとおりですね」
「ワインをずっと飲んでいたのか?
途中出入りとかしなかったか?」
「1時間ずっと1人寂しそうにワイン飲んでいましたよ
私 準備で忙しくなければ一緒に飲みたいくらいです」
1時間も飲んでいたのか 酔わないのか
いや 酔ったからこそ別人のようになったのか・・・
それにしても酔うわりに顔赤くなかったし
口調は冷静だったような・・・
違和感が胸の中でもやもやとしている
「仕方ない 現場見にいこう なにか手がかりが出るはずだ」
「お そうきたか 俺もいきたいな」
とカレナリさんの提案にノリノリであるリョウ
「え?ちょっと待ってくださいよ 現場は警察に任せましょうよ
ほら 動かせてはだめでしょ いろいろと」
「見るだけは大丈夫だ それでわかることが増えるはず」
「そういうことだ よし いくぜ ゲンジ」
と誘ってくるリョウ
「いやです 勝手にやってください!」
もうあんな光景は2度と御免だ 腰抜かしたし・・・
「それじゃあ ゲンジロウさん 私の手伝いをしてくれませんか?」
とオーナーがそこで話をかけてくれた
「はい なんの手伝いですか?」
「実はさっき戻ってきたとき風が少し弱まったみたいなので
物置きに行き修理道具取ってきましたから
アンテナの修理を手伝ってくれませんか?」
なるほど やはり優先すべきことは外部との連絡だな
「それでしたら喜んで手伝いますよ」
死体を見るよりはるかましだ
「俺たちは2階見にいくとするか」
「了解 カレナリさん」
リョウは怖いところか ワクワクしているように見える
まったくわからないやつだ
「私たちも行くとしましょう」
「はい」
その後 僕たちは玄関から出てオーナーは玄関に置いてある
工具箱を取り 少し旅館から離れた森の近くへと向かった
「それにしても 風弱くなりましたね 雪は結構降ってますけど」
「風があるかないかだけで随分と違ってくるものですよ」
そうでしょうね 体感温度も違ってくると聞く
「あの アンテナなんか僕らだけで修理できるんですか?
僕なんかやったことないですよ」
「大丈夫ですよ もし電線がはずれてるならつければいいですし
もし柱ごと折れてしましましたら後始末がめんどくさいかもしれませんが」
「そうですか」
あまりよくわからない僕である
それから少し歩いたところで電柱を見つけた
・・・うわ 柱にひびが入り いまでも倒れそうな勢いである
「これはこれは参りましたね
ふつうなら倒してしまいたいものですけどね」
「直せそうですか?」
「無理かもしれませんね しかしまあ」
「しかし?」
オーナーは目を細め じっと柱を見つめて
「人為的にやられたにしか見えませんね」
「え!?」
「信号は昨日から調子悪いけどなんとか繋げられるのは
恐らく雪が電線に積もったからでしょうけど
しかし今日は違いますね 電線は明らかにはずされています
そして修理できないように柱にひびを入れているのでしょう」
オーナーの口から一つ一つと驚愕な言葉が吐き出されていく
だれかが 意図的に 信号をきったのか
僕は脳を集中させ いままでわかった情報を繋げる
「部屋に戻ったら あの人電波が届かないとか言ってた気がするわ」
とハルカさんは言ったはず
つまりカズマさんは6時前のところで
信号が届かないことにイラついてることになる
それじゃいつから信号はつながらなくなったのだ
・・・っく 確かに ツルちゃんの車からラジオのような音が
あてにならないな 他の情報を思い出そう
「俺はチェックインしたあと荷物を部屋に置き 外の景色を見に出た」
カレナリさんがアリバイを言ったときの言葉を思い出す
・・・ほんとに外に景色を見に出ただけだろうか
ここには来てないのか・・・
「オーナー 少し聞きたいことがあります」
道具を取り出し 修理の準備に取り掛かるオーナーに僕は
「今日最後にテレビやラジオを確認したのはいつですか?」
「・・・なるほど そういうことですか わかりました 答えましょう
そうですね カレナリさんがチェックインしたあと
部屋に戻り準備しようとしたとき部屋にある電波時計を確認しましたけど
電波時計はまだ作動していましたね」
それだ それが聞きたかった
つまりその直後カレナリさんが外に行ったあと
カズマさんは株が見れなくなりぼやいていたことになる
この間カレナリさんを除く旅館のすべての人間は外には出ていない
いつカレナリさんが帰ってきたのかだれもわからない
あの図体だ 肥満気味の中年男性一人くらい余裕だろう
くそ まずい いまあの旅館じゃカレナリさ・・・いやカレナリと
リョウと女性二人のみだ リョウはあの性格だ
隙だらけで簡単にやられてしまうだろう・・・
僕はいても立ってもいられず
「オーナー僕は先に帰ります ここはお任せしていいんですか?」
「いいですよ ここのことは私に任せて
貴方はやるべきことをやり遂げてくださいね」
僕たち二人はお互いに頷き 僕はここをオーナーに任せ
旅館のほうに急いで帰ることにした
・・・
・・・・・・
無事でいてくれ リョウ ツルちゃん!!