ゲンジ02 闇へ
02
「若いな なんだ?新婚旅行か?いいね」
と馴れ馴れしく話しかけてきていきなり恥ずかしいことを言ってきた
「え?いえいえそんなんじゃないですよ
ばったり会った友人のようなものですよ」
「はっはっはー そうかそうか
ここの温泉なかなかしみていいものだぞ?」
と覇気よく返事してきた
その後 リョウと一緒に自己紹介をした
その間ツルちゃんは決して口を開かなかった
中年男性も気にしているようだが 僕はとりあえず気分が悪いと言い訳した
オオジカズマと中年男性が名乗った 妻のハルカと一緒に旅行中だそうだ
話して約3分 カウンターの奥のドアから若い男性が現れた
「ウホッ いい男」とリョウが思わずこぼしてしまうほどのイケメンでした
・・・
いや いくらなんでも言わねーよ そのセリフ
「んじゃ ワシはそろそろ部屋に戻って株見るわ 楽しんどけよ」
そしてそのまま別れて階段に上がった
出てきたオーナーは僕たちに申し訳なさそうに
「長く待たせてしまいまして 真に申し訳ありません」と頭を下げた
「いえいえ 僕らはそんなに待ってませんよ」と僕
「忙しいだろうから気にしないでくださいな」とリョウ
「メアド聞いてもよろしいでしょうか」とツルちゃん
ってえーーーーなんだって!!?
僕でさえツルちゃんのメアド知らないっていうのに!!
くそ イケメンめ やはり人類の敵だ
「俺もそう思うぞ」とリョウが囁いてきた
・・・今日はじめてリョウとは親友だなと感じる瞬間であった
受付を終え オーナーが僕らに説明をはじめた
「温泉は左の廊下のすぐそこです 基本午後4時から夜10時まで空いてます」
「混浴ありますか?」
「あるわけないだろ!!」なに期待してんだリョウ
クスッとツルちゃんが笑ったような気がした
「まあ残念ですが混浴はありません
温泉の向い側にラウンジがあります 大きなテレビや本棚がありますので
気が向いたら休憩時にでも使ってください」
「ちなみにアダルドビデっぎゃーー!!」
「そろそろ冗談はいい加減にしてくださねリョウさん」
つっこもうとした僕よし先にツルちゃんがリョウを咎めた
「はい すいません だからもうヒールをどかしてください
絶対足の爪割れたよ・・・」
自業自得だ と言いたい
一通りオーナーが説明し終わったところで
僕とリョウは鍵を受け取り部屋に荷物を置くことにした
ツルちゃんは荷物を置いたあとカウンターに戻り
一人で大変そうだからオーナーの手伝いをしたいだそうだ
っく おのれイケメンめ
「7時食堂で食事だって言ったな」
「結構余裕あるね どうする?」
「ラウンジにでも行って風呂入るか?」
「そうだね 僕風景とか見てみたいし」
そして僕とリョウはラウンジに入ったが
そこにいる一人の女性に気を引きとめられてしまった
「わお・・・」
と僕の口から思わずアメリカンな声が漏れてしまった
「オーソービューティフォー」
いや ノらんでいい!! ってか発音が無駄にいいところがイラッとくる
とまあ僕らがこのようなリアクションを取ってしまうように
ラウンジにいる一人の女性が 夕日の中に本を読む姿は
あまりにも美しく もしこれを絵としたら僕には一生描けないだろう
透き通る白い肌 長い黒髪 しなやかな腰
そして胸のふくらみもちょうどよく 顔立ちも整っていて
大人の上品さを醸し出してツルちゃんの幼い可愛さと違って
女性としてすべてが完璧すぎる
「上から86 57 69 だな」
「いやいきなり目測りするなよ この変態」
我ながら下品な言葉を使ってしまった
まったく呆れた変態だ 僕と違ってな うん
「ん? あら こんにちは」
と僕らに気づいたのか 微笑んで挨拶してきた
「こん・・にちは・・」
緊張して声が小さくなってしまった・・そこでリョウがしゃがみ込んで
「ご機嫌ようお美しい姫よ 俺と結婚前提で付き合いませんか?」
埋めてー 生埋めしてやりてー
「あら おもしろい冗談かしら 私人妻よ」
と言いながら結婚指輪をはめている指を見せてくれた
なに!? まあ確かにそういう年かもしれないけど
「ならばせめて一発で「いい加減にしろ!!!」
蹴った 横から顔面をダイレクトに蹴ってやった
ふー これで地球は確実に平和へと一歩進んだな
「クスクス おもしろいお友達ですわね」
「いえ 赤の他人でございます」
誰だ あの男は 僕知ーらない
しかし 蹴ったことによってなんだか緊張が和らげた気がする
「僕はゲンジって言います
でまあ そこに白泡吐いてる男はリョウっていうんです」
仕方なくリョウの紹介もした
「初めまして オオジハルカですわ」
ん?オオジ?さっき聞いたばかりの名のようだな
「夫と一緒に旅行に来ましたわ」
なるほど やはりか
「その夫 カズマさんですよね」
「えぇ そうですわ もう会ったのかしら」
「まあ さっき廊下で会いましたよ 陽気な方ですね」
「陽気かしらね・・・」
ハルカさんは少し俯いてどこかが悲しそうな表情をしている
ほう もしかしたら夫婦の仲はあまりよろしくないかもな
「大丈夫ですか?」
「えぇ 大丈夫ですわ・・・」
僕はこれ以上首を突っ込むのはよくないと判断し
話を切り上げようとした 赤の他人の僕だからね
「とにかくせっかくの旅ですから楽しみましょう」
僕はリョウの腕を掴み
「それでは僕たちはこれで失礼します
ほら リョウ立って いくよ」と促した
「痛かったぜまったく・・」
「はい お互いにいい思い出になるように」
リョウと一緒にハルカさんに別れを告げ 僕たちはラウンジから出た
これから僕たちにはしなければならないことがあるんだ
と僕は思い 目的地に行こうとするその時
カウンターの前に一人の男が立っていた
いかにも不気味で負のオーラを発している
喪服を連想させるほど黒いスーツを着て サングラスをかけている
刑事にもヤクザにもいそうな恰好をしている
ここまで見事に無表情を保たれるとは
デッサンの相手にはちょうどいいと考えていたが すぐやめた
直観が僕に訴えている この男は危険だと
あぁ・・・ そうだ とことん この男は
・・・・・気持ちが悪い
うずく市区になってましたね すいません