リョウ07 終わらない謎
07
「はあ・・・はあ・・・」
走ることおよそ5分旅館が見えてきた
一息つきたいところだがそんな暇はない
俺は玄関へ一直線と向かったが
「っ!?」
玄関前に倒れているカレナリさんを見ると
さすがに足を止めてしまった
・・・やられたのか? 誰に!?
残った人物を考えるとすぐに答えはわかる
あぁ オーナーだ
「あの野郎・・・」
とにかくいまはゲンジの安否を知りたい
俺はカレナリさんを越え旅館に入った
急いでラウンジに足を運んだが
「・・・いない」
となると二階か
・・・ どうせツルミさんの部屋だろう
根拠はないが 俺にはなんとなくわかる
急いで二階に上がり ツルミさんの部屋に入ろうとしたそのとき
俺の目にはありえない光景が映った
・・・・・・
ゲンジが拳銃を自分のこめかみに当てている
一体なぜこんなことになったのか
っていうかどこからの銃なのか俺にはまったくわからない
だが この瞬間 俺は なにをすべきなのかくらいはわかる
あぁ 俺にすべきことはこれしかねぇ これしかねぇんだ・・・
「っざけんな!!馬鹿野郎ぉお!!!」
俺はいまでも発砲しそうな拳銃をはたき落としそして
「痛っ え? りょ リョウ?」
驚いてこちらを振り向いたゲンジの襟を思いっきり掴んだ
「てめぇ 何の真似だこれは!! なに死のうとしてんだこらぁあ!!」
俺はできる限り声を上げ怒鳴りつけた
どんな理由があろうと どんな状態にいろうと
死んじゃいけねぇんだ 死ぬ道理なんてどこにもねぇんだ!!
大切な人間を失う思いなんか お袋でもう十分だ・・・
「だって・・・だって・・・ぅうあああん」
襟を掴んでいるにもかかわらずゲンジは抱きついてきた
「リョウ・・・生きててよかった 寂しかったよ・・・」
何度も何度も顔を俺の胸にこすりつけて「ごめんね」と謝った
「ったく・・・」
こんなんじゃもう怒る気しねぇ
かわりに俺はゲンジの頭をなでることにした
「シク ありがとう・・・」
赤い顔を上げ上目使いで微笑んできた
・・・う こいつ かわいいじゃねぇか
いつも腹黒のくせに 一度泣くとやっぱ子供だ
・・・はは そうか 俺の本当のしたかったことは
犯人捕まえることではなく ただ ただ・・・
こいつを守りたかったんだな
1分ほど経て 気が済んだのか俺から離れた
「あのね リョウ 拳銃のことだけど」
「いやいい あとで聞く いまはとにかくここから離れるぞ」
「え そうなの? どこにもいけないじゃないか」
「雪崩なんか嘘だったんだ いますぐ下山して助けを呼ぶんだ!」
「!! そうなんだ」
ゲンジは驚いたようだけどどこかが悲しい顔をしている
オーナーとなにかあったのか?
「そういうわけだ さっさといくぞ」
「う うん!」
これ以上ここにいたら危険だ
俺はゲンジの手をひっぱり旅館から出た
「・・・?」
カレナリさんが消えてる・・・?
死んでいなかったのか?
いや いまはそんなことどうでもいい
離れたい 一刻もここから
俺たちは吹雪の真夜中の雪地を踏みしめ
体力の限界を感じながら全速力で山を下っていた
「うわ!!」
後ろからゲンジの声がしたから
「どうした!?」と振り向いた
「はは ごめん ちょっと疲れてこけたかも」
・・・それこけたって言わねぇよ
「くそ そこにいると凍死するぞ ほら乗れ!!」
俺はゲンジの前にしゃがみ 背中を見せた
「え?そんな リョウだって疲れてるでしょ」
「ゴダゴダうるせー さっさと乗れ!」
「・・・わかった」
ぐっと重いものが背中にのしかかってきた
「っう お前なんキロだよ」
「56しかないけど?」
「・・・俺より20も軽いんかよ」
文句言ってる場合じゃない
俺はどっしりと重くなった体をひきずって山を下って行った
・・・
「リョウ 汗くさい」
「うるせ!!しれっときついこと言うな」
どうやら通常運転に戻った まあ暇みつけたらまだボケてやるとするか
3分ほど経ったところ バス停を見えてきた
「あそこだとさすがに電波届くだろ」
「そうだね」
さすがに眩暈してきた よくやったと自分に賞をあげたい
バス停にあるベンチに座り 俺はすぐケータイを取り出した
「お 一本立ってる!!」
「はやく電話して リョウ」
「お前・・・ついに何十分前俺になでられてうれしがってたのは
どこのどいつだろうな うわ あぶね!」
なんか錆びた釘が飛んできやがった ベンチから抜いたのか
「鼻の孔の中にアイスピックを差し込んで
グリグリして脳前葉を切り落としてあげようか?・・・」
「ロボトミーやめろ!!」
相変わらず言ってることがこえええぇ
「って こういう場合って 110番でいいよね」
「常識に考えてそうだろ くそ」
「くそっていうな!! まあ 110番でいいか」
気のせいなのか さっきからずっと顔が赤いしそっぽ向いてる
とりあえず110番にかけることにした
「・・・もしもし はい あの その えーと
とりあえず 人死にました 一人だけじゃありません
あ はい 名前と住所ですか・・・」
落ち着いてくださいと言われてしまった
名前と住所を教え さらに詳しい状況を教えようとしたとき
「ねぇ リョウ あれ見て」
とゲンジが袖をひっぱってきた
「なんだ ゲンジ いま忙しんだ ん?」
ゲンジは片手俺をひっぱりながらもう片手が山の上に指している
俺は指している方向に頭を向けた
「・・・ うそだろ・・・」
真夜中なのに山の上空は真っ赤に輝いている
・・・間違いない 旅館が燃えている
一体 俺たちが離れたあとに なにがあったんだ!?
リョウEND
Intricate Snow Darkに続く