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リョウ06' 廻る真実

                06'

ツルミさんが死に ハルカさんは行方不明

ここまで予想外のことはさすがにカレナリさんでさえ

驚きを隠せなかった

ツルミさんは俯せ状態で床に倒れている

おびただしい血が溜まり

そして真横に厳つい軍用ナイフが落ちている

・・・凶器だろう どう考えても

「っち 吹雪で外がどうなっているか見えねえな」

「犯人はハルカさんですか?」

「わからん だが可能性は大だ くそっ

俺 一旦外行ってくる お前さんはここで待機してくれ」

「あっ はい お気をつけて」

正直などころ止めたいが このおっさんなら大丈夫だろ

・・・蹴りでドア壊せるとか 軍人上がりにしか見えん


その後 俺はラウンジに戻り ソファの上にだらしなく座った

「はぁー なんなんだ なぜこんなことになるんだよ」

焦燥感にかられ 殺人事件に対する恐怖は完全に消え

ただ イライラしてしょうがない・・・

なぜだ なぜイライラしてるんだ くそ

思えばカズマさんの死体を見た時はこうじゃなかったはず

イライラでも恐怖でもなく もっとこう


「そうか・・・俺 興奮してたんだな」

なるほど ようやくわかった

俺はカズマさんが死んだのを見て

犯人を推理して捕まえたらかっこいいなと思って

漫画よりもゲームよりもはるかにスリルなこの事件に

・・・・・・楽しもうとしたからか・・・

「・・・なんてこと思ってんだ・・・俺」

最低だ 俺最低なくそ野郎じゃねえか

他人が死んだのを楽しんでるだなんて

思い通りに行かないからってイライラしてるなんて

小学生並にひでーじゃねえか くそ

・・・・・・


「リョウ!!」

ラウンジの入り口あたりを見ると ゲンジが立っていた

・・・ゲンジ 頼むからお前だけは居なくならないでくれ

お前だけは・・・

「・・・おかえりゲンジ どうだ電話かけられそうか?」

俺はゆっくりと頭を上げ問いかけた

「いや 無理だ いまオーナーはどうにかしている

それでどうだった?あとカレナリさんは?」

「・・・カレナリさんなら外に出て行った 

調べたいものがあるってよ」

「そうか えっと リョウ 元気ないみたいけど大丈夫か?」

・・・俺が 元気ないように見えるのか?

少しばかり考えすぎて 顔に出たのか

しかしこんなことよりも俺には言わなければならないことがある

「なあ ゲンジ」

つらい現実かもしれないが 受け入れるべきだ

「落ち着いて聞いてくれないか」

「・・・うん」

ゲンジは軽く頷いてくれた

ふぅー 損な役回りだ

俺はゆっくりと口を開き こう言った

・・・・・・

・・・・・

「ツルミさんは殺された そしてハルカさんは行方不明になった」

・・・

・・・・・・

「え?」


・・・こいつ こんな表情できるんだな

ゲンジはいままで見せたことのない表情をしている

悲しみそれとも驚きにも似た感情が

心の中に渦巻いて暴れているように顔が歪んでいる

まあ・・・ありえない・・・とでも思っているだろう

しかし 次にゲンジの口から出た言葉に

俺は今日でもっとも恐怖を感じ身震いをした

「嘘だ!!」

・・・あまりにもヒステリーな声に俺は耳を疑った

この声はいつもの親友の声とは千里の差ほどあった

「・・・リョウ ダメじゃないか そんな冗談なんかして

いくら僕でも 脳みそをぶちまけるくらいじゃ許してあげないよ?」

確かにゲンジはたまにこのように恐ろしいことをつっこみとして言うけど

今は違う 本気で脳みそぶちまかれかねない

・・・こえー とにかくいまは落ち着かせないといけないな

「待て ゲンジ!!落ち着くんだ すまなかった

いきなりこんなこと言っても信用するには無理があったな」

と俺はゲンジの両肩をつかんだ

「お前にはきついかもしれないが 2階の現場へ行こう

しっかりと受け止めるんだ!!」

「また・・・そんな冗談を・・・ 

いいよ 見に行くよ だけど 本当に冗談だったら 覚悟してね」

「あぁ わかってる」

やはり信じないか

俺はそのままゲンジを2階へ連れて行った

・・・


案の定 悲鳴を上げ 号泣した

俺はどうすることもできずただそばでゲンジを見守った

余計に言葉をかけるとかえって悲しませる

・・・俺もそう経験したからな

・・・

時間を経て 少し落ち着いたのか

「・・・ハルカさんは・・ どこ行ったの?」

と聞いてきた 涙と鼻水でせっかくの美男子も台無しだ

「ハルカさんは行方不明になったけど

おそらくあの窓から飛び出したんだろう」

俺はそう言いながら ポケットからティッシュを出し 渡した

ゲンジはそれで顔を拭きながら

「これは・・・ 逃げたってこと?」と言った

「多分な カレナリさんはなにかわかったみたいだが

で どうにか立てるか?」

「あ うん 大丈夫 ごめんねひどいこと言っちゃって」

「いいって お前は本当はどういうやつかってことくらい把握してるって」

まあ さっきのヒステリー感はまったく初めてだがな

どうにか立ち直れたのか ゲンジは真面目な顔をして

「カレナリさんはかなり怪しい 

ひょっとしたら犯人かもしれないんだ リョウ」

とばかのことを告げてきた 当然俺は

「は? そんなわけ・・・」のような反応をする

「ちょっと話を聞いてくれ リョウ あくまでも僕の推理だが」

・・・

・・・・・・

そこで ゲンジはぺらぺらと喋りだし

無線だとか 犯行時刻だとか

意味のわからないことで推理したみたい

まあ 仮説としてはなかなかいい

しかし俺はやはり理解できず

「ん・・・ おかしな話だな

まあとりあえず俺はカレナリさんを探しにいこうと思ってる

それから一緒に話そう そっちのほうがいいだろ」

と一番手っ取り早そうな提案をしてみた

「それ 危ないだろ 」

こいつ・・・心配してくれてるのか 

「大丈夫だ」

と言い 俺はゲンジに顔を近づけ

「俺のことだろ安心しろよ 

ぜってー無事に帰ってきてお前と旅の続きをするんだからよ

こんなくだらない一晩なんかさっさと終わらせようぜ」

自分の中で精いっぱいに思いついた励ましをした

「・・・うんそうだね まだ旅の続きをしよう」

とゲンジは頬を赤くさせ 微笑んだ

身長差でもあるのか 潤った目で下から見上げてくる状態だから

・・・う かわいいじゃねえか こいつ

俺はぐっと堪え ドアから出た

「それじゃ行ってくるからな ラウンジにでもおとなしく待っておけ」

「わかった 気を付けてよ」

「おう」

ふぅー あぶねえ あぶねえ 危うくハグするところだったぜ


・・・

玄関を出て 俺はどこから探すかと悩んでいたが

「そういえば 窓から飛び出したとしたら 窓の下あたり探すよな」

と俺はそう思い 旅館裏にある物置きの近くまで行くことにした

「カレナリさんって一体何者なんだろう」

歩きながら俺はそう考えた

まさか・・・刑事?

FBI?CIA?M16?BSAA?

いや他のはわからないが 最後のは絶対にないな

ゲームのやりすぎだ

などと詮索しているうちに目的地についた

「待機してくれって言ったはずだが やはり来たのか」

と言いながら カレナリさんは壁に背を預けて立っている

タバコ吸っている・・・

「なんだ 一本欲しいのか?」

「いや 遠慮します」

20にはなったが肺に悪いと聞くんでね

少しまわりを見渡してみた すると

「え なんですかこれ」

雪地の上に血痕が窓の真下から崖まで続いた

「ハルカさんの血だ もう死体を見つけた」

カレナリさんは表情を曇らせ 静かに言った

「・・・死体はどこにあるんですか?」

「すぐそこの崖の下あたりにある岩の上さ 

まあ 崖から落ちたところぶつかって絶命しただろう」

「なぜ落ちるんですか?」

「出血によって意識朦朧だろ でふらふら歩いてったら落ちた かな」

「まともに歩けなかったと見えますね」

血痕は曲がりながら崖に続いたからな

「どうだ 見てみるのか?」

「・・・」

見たい とても見たい が

さっきラウンジで一人考えたことでもあって

少しばかり自重する気持ちになってしまった

「なあ お前さん」

そこで カレナリさんに話しかけられた

「人の死を目の前にしたときのお前さんは若いころの俺に似ていた

お前さんの親友みたいに怖がるのではなく 興奮気味だろう

・・・そして犯人を見つけようと躍起する

しかし事件が難航すると己の無力に怒り

自分は単なる野次馬ではないかと疑う

嫌になり 結果そこから逃げるようなことをしてしまう」

「う・・・」

図星にもほどがある・・・

「だがな!!」

とそこでカレナリさんは声を張った

「事件に遭い興奮するのはな

パニックになったり落ち込んだりする人よりよっぽどましだ

事件を解決しようとするその心は大切だ

警察のいないこんな状況ではお前さんのような人が

もっとも皆に元気づけ 頼れる存在になれるんだ」

「カレナリさん・・・ありがとう」

ここまで心打たれた力説 人生の中で何回あるのだろう

まったく泣きそうだぜ

・・・

よし と呟き 俺は崖の前まで出て頭を出し崖の下を見渡した

すぐ女性の死体らしきものが見つけた

「・・・くそ」

岩の上に仰向いで目を大きく開きながら死んだのはハルカさんだ

腹には相当な切り傷があり 内臓が見えそうなくらいぱっくり開いてる

頭も岩に思いっきりぶつけただろうと思われる 

相当な血があたりを染めているが もう出血は止まっており

肌色はもう青白くなっている

「ん?」

突然 崖の斜面の上の雪になにかが落ちているのを見えた

茶色な封筒のようなものが・・・

ハルカさんから落ちたのだろう

俺は少しずつ崖の斜面を下り 封筒のところまで行き

それを拾い上げた

「カレナリさん なにか封筒みたいのを見つけましたよ」

「あぁ それを取れたのか・・・っておい そこ雪危ないぞ!!」

とカレナリさんは大きな声告げてきた

しかし もう遅い

足元の雪がずれていく感触がして ついに

「ふぇ ひゃぁあああああああ」

カレナリさんはすぐ崖から身を乗りだし腕を差し伸べてきたが

俺にはそいつが届かず 体は斜面沿いにどんどん転びながら落ちていき

全身に伝わる痛みに絶えず俺の意識が遠のいていく・・・




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