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世界のだれかが紡いだもの  作者: 新巻鮭
1章・記憶の枷
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金属製の手

《レーフェル1よりCPコマンドポスト。敵の様子が変だ》


 通信が入ったのは、変わり種と交戦していたレーフェル小隊からだ。


「こちらCP。どうした?」


《いや、その……仲間割れ、か? エリートと、変わり種が戦闘を始めた》


 通信を受け取った通信士は何だそれは、と思う。

 だが、この通信士以上に、現場にいるレーフェル小隊は困惑していた。


《どちらを攻撃すればいい? 指示を》


「どうした? 何かあったのかい?」


 通信士の異常に気付いた副隊長が通信士に問う。


 通信士は先ほどの会話を説明した。


「さて、こういうのは参謀殿に聞くのが早い。どうされるのかな?」


 副隊長は、責任を丸投げするように、背後の上司に話を振る。


「退避だ退避。無駄に消耗するな」


 その上司の指示は迅速だった。

 その指示に従う通信士の仕事もまた、迅速だった。


「CPよりレーフェル1、後退しろ、それに関わるな」


《了解、後退する!》


 通信が一旦途切れた。


「どう見る? あの状況」


「連中の考えなんぞ分かるものか。ただ、願ってもないチャンスだ、としか言いようはない。

 連中が仲間割れ――――うまくいけばこの作戦、ずっと楽になるぞ」


   ▼


 拳同士がぶつかり合い、拮抗。

 数秒でお互い拳を引く。


「力は五分みたいね。レイト、『支給品』の使い方は分かる?」


「何それ?」


 続いて2撃目。今度は叩き潰そうと、拳が振り下ろされる。

 そう何度もさっきのように受けてはいられない。そんな義理もない。 

 僕らはバックステップで躱す。


 ただでさえ着地の衝撃で陥没していた地面が、さらに陥没する。


「やっぱり覚えてないか……じゃ、教えるね。『拳に金属製のグローブがある状態』をイメージしてみて」


 僕らが着地する頃、3撃目が放たれていた。

 1撃目と同様の、右ストレートだ。


「分かった!」


 金属製のグローブ――――。


 僕は、さっきナクアが使ったあの拳を想像した。

 あれなら鮮明に覚えている。


呼び出しアクセスを確認。Gr‐Tゲラート通常起動》


 何かが右腕で組み上がる感覚、そして、使えた、という実感。

 僕の手に鋼色のグローブが装着される。


 拳と拳の衝突。だが、今回は拮抗しない。


 ―――僕の拳は巨人の拳を破壊する。


 そして、その拳を破壊しただけでは飽き足らず、その腕を破壊し、その肩までをも粉砕した。


 血と肉、そして砕けた骨が散乱する。

 そして、力の余波が巨人そのものを吹き飛ばした。


 巨人は地面を転がっている間も、静止してからも、何が起こったのかを理解できていない様子だったが、しばらくしてから、今更のように、すさまじい痛みに悶え、のたうちまわり始めた。


 巨人の大きさは2階建ての家くらいだ。

 そんな巨体が大暴れし始めたものだから、そこらじゅうの建物――もう使い物にならないであろう建物が大半だけれど――が破壊される。


 舞い上がる瓦礫、吹っ飛ぶ鉄骨、非常に迷惑だ。


「レイト、もう一発。止めを」


 僕はナクアの指示通り、装着されたままの金属の拳を構え、そして――――放つ。


 巨人の首に、僕の必殺の右拳が極まる。


 まず頭が原形も残さぬほどぐちゃぐちゃになり、吹き飛んだ。


 次に、胴体の肉が、骨が、崩壊を始めた。

 残っていた左腕、その肩から先が弾かれるように吹き飛び、胴体に入った亀裂から臓物が溢れ出す。

 溢れ出した臓物はGr‐Tの衝撃により、ミキサーにかけられたように、赤い液体へと成り果てる。


 すでに片腕を失っていた巨人は、全てが終わるまでに、その機能を停止していた…………。

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