巨人と巨人
「この砲撃、止まんないの?」
最初の弾着からこっち、鉛色の雨は止む気配が無い。
ナクアの誘導は見事なもので、いまだに1発も命中していないけれど、いい加減嫌になってくる。
「一気に跳べば、多少は時間稼げるよ?」
「じゃあそれで、お願い!」
「うん、わかった」
彼女が言うが早いか、僕は浮遊感に包まれた。
強烈な力がかかっていたのであろうことは理解できるが、痛みも何もなかった。
「ねえ、レイト。ちょっといい?」
「うん、何?」
気が付けば、眼下に爆発と土煙が見えた。
砲撃を見下ろせるほどの高度にまで到達したらしい。
「レイトは帰る家、無いんだよね?」
「う、うん……」
彼女が次に何を言い出すのか、おおよその見当はついていた。
そして、それに対する答えも、僕はすでに用意していた。
「じゃあ、私と、一緒に戦って。私と一緒に、フォマルティアと戦って」
「……うん!」
これが僕の答えだ。
どの道、フォマルティアからも、人類からも、追われるんだ。
それなら、この見ず知らずの女の子を信じて、一緒に戦うのも悪くない。
彼女は僕の顔を見て、顔をほころばせる。
「ありがとう――――レイトは私の初めてのパートナーだよ」
このまま地獄の底に突っ込んでも、崩れそうにないほど、力強い笑みを浮かべ、ナクアは僕の手を引く。
そして、僕の顔に自分の顔を近づける。
――――唇に、柔らかい感触が伝わる。
「これから、どこまでも……私と一緒だからね」
それから程なく、高度が落ち始めた。
だんだんと地面が近づき、近づくたびに加速してゆく。
物理法則とは残酷だ。
地面からの投射を行った場合、接地時に持っている運動エネルギーは、投射時のものと変わらない。
空気とかの摩擦力を完全無視した場合だが、それを考慮しても、充分にすごい勢いであろうことは、跳躍時に分かっている。
けれど、不思議と恐怖は無かった。
地面と足が接触する。
アスファルトを破壊し、下の水道管をも破壊し、土砂の大盤振る舞いをしながら、僕らは着地した。
「…………ありゃ?」
土煙が晴れる。
僕の目の前にいたのは、いかにもな感じの巨人。かなり凶暴そう。
僕は振り返る。
僕の背後にいたのは、いかにもな感じの人型ロボット。かなりかっこいい。
「まずいところに、着地しちゃった感じ?」
一番先に動いたのは、僕らでもなく、背後のロボットでもなく、目の前の巨人。
ものすごい勢いで接近して、拳をぶつけてくる。
「うわっ!」
反射的に僕も拳を突きだす。
――――拳と拳がぶつかり合う!
常識で考えれば、僕の方が一方的に潰されておしまい。
だけれども、現実はそうならなかった。
僕の拳は、巨人の拳とぶつかり合い、潰されるどころか、拮抗していた……。
明日に取っときたかったけど、今日投稿。
そろそろ設定が固まってきました。